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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生82巻3号

2018年03月発行

文献概要

特集 地域保健法20年

地域保健法と地方衛生研究所

著者: 調恒明12

所属機関: 1地方衛生研究所全国協議会 2山口県環境保健センター

ページ範囲:P.238 - P.243

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はじめに
 地方衛生研究所(以下,地衛研)は第二次世界大戦後,GHQ(General Headquarters)の占領下において,わが国における公衆衛生の向上を目的として自治体に設置されたことに始まる.保健所については1937年に最初の保健所法が制定されていたが,日本国憲法下において新たな保健所法が1947年に制定されたものの,地衛研については法制化されていなかった.1948年4月に最初の「地方衛生研究所設置要綱」が国によって発出され,その後,約10年で全ての都道府県に設置された.現在,地衛研は全国の都道府県,政令市に設置されており,一部の特別区,中核市の検査施設も地方衛生研究所全国協議会(以下,地全協)に加盟しているため,地全協の登録機関は83となっている.
 直近では,厚生省(当時)は1997年3月14日に厚生省発健政第26号「地方衛生研究所の機能強化について」1)(事務次官通知)によって設置要綱を規定しており,地衛研は「地域保健対策を効果的に推進し,公衆衛生の向上及び増進を図るため,都道府県又は指定都市における科学的かつ技術的中核として,関係行政部局,保健所等と緊密な連携の下に,調査研究,試験検査,研修指導及び公衆衛生情報等の収集・解析・提供を行う」としている.その主な業務は,①調査研究,②試験検査,③研修指導,④公衆衛生情報などの収集・解析・提供である.地衛研の骨格をなす業務は多くの自治体において共通である一方,法律による位置付けがないことから,予算,人員,研究の位置付け,組織体系はさまざまである.地衛研の法的基盤,役割などの詳細については,すでに地域保健法成立20年を記念して本誌において企画された2016年の特集に述べた2)
 近年,公衆衛生行政においては科学的根拠が強く求められており,地衛研が提出する科学的データの重要性はますます高まっている.地衛研は地域保健法などの法律で位置付けられることなく今日まで続いているが,「感染症法に基づく検査を都道府県知事が行う」とした2016年4月の感染症法の一部改正は事実上,地衛研の感染症検査業務を法制化したものであり,地衛研の機能強化が図られている.
 本稿では,近年,急速に進歩しつつある病原体の遺伝子解析を取り入れた地衛研の新たな役割などについて述べ,また,今後のあり方などについて考察する.

参考文献

1)厚生事務次官:地方衛生研究所の機能強化について.https://www.chieiken.gr.jp/somu/eikenyoukou.html
2)調恒明:地域保健法成立後の地域の公衆衛生体制の推移と課題 地域保健法体制下の地方衛生研究所の現状,課題と将来像.公衆衛生80:37-42, 2016
3)WHO:Joint External Evaluation Tool:International Health Regulations(2005) http://apps.who.int/iris/handle/10665/204368
4)厚生労働省:麻しんに関する特定感染症予防指針 平成19年12月28日(平成24年2月3日一部改正・平成28年4月1日適用).http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000186689.pdf
5)国内麻しん排除認定委員会:わが国における麻しん排除の進捗に関する報告の概要(2014年度提出).IASR 36:65-67,2015 https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2306-related-articles/related-articles-422/5639-dj4227.html
6)厚生労働省:風しんに関する特定感染症予防指針 平成26年3月28日(平成29年12月21日一部改正・平成30年1月1日適用).http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000186690.pdf
7)厚生労働省:「結核に関する特定感染症予防指針」改正の主なポイント 平成28年11月25適用.http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/gaiyou_2.pdf
8)Matsushima Y, et al:Genetic analyses of GⅡ. 17 norovirus strains in diarrheal disease outbreaks from December 2014 to March 2015 in Japan reveal a novel polymerase sequence and amino acid substitutions in the capsid region. Euro Surveill 20:21173, 2015
9)Verhoef L, et al:An integrated approach to identifying international foodborne norovirus outbreaks. Emerging Infect Dis 17:412-418, 2011
10)朝日新聞:食中毒0157の感染源に迫るMLVA法とは?.2017年11月12日.http://digital.asahi.com/articles/ASKCD2S1YKCDUBQU001.html
11)国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議:薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016-2020.http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000120769.pdf
12)厚生労働省健康局結核感染症課長:健感発0328第4号 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症等に係る試験検査の実施について.https://www.pref.saitama.lg.jp/a0701/kansen/kourousyou/documents/sankoukunituuti.pdf
13)厚生労働省医薬・生活衛生局(生活衛生・食品安全部門):資料 食品衛生法を取り巻く現状と課題について.http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000179038.pdf

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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