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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生82巻4号

2018年04月発行

文献概要

投稿・資料

2004年の新医師臨床研修制度施行以降における,ジニ係数を用いた医師の診療科ごとの地域偏在についての検討

著者: 石川雅俊12

所属機関: 1厚生労働省医政局総務課 2前 国際医療福祉大学大学院

ページ範囲:P.334 - P.338

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はじめに
 2004年4月に臨床研修制度が導入されて以降,地方の医師不足の問題が顕在化したという指摘がある1).特定の分野(特定の地域,診療科など)における医師不足を指摘する声の強まりを受けて,厚生労働省は2005年に「医師の需給に関する検討会」を設置し,医学部定員の増員を行うことで全国的な医師数の増加を図るとともに,医師が自らの勤務地や診療科を自由に選択するという,自主性を尊重したさまざまな地域偏在対策を講じてきた.しかし,厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」の中間とりまとめ(2016年6月)では,前述の偏在対策にもかかわらず,地域における医師不足は解消していないとしている2).他方で,診療科偏在に関する言及はみられない.従来,不足が指摘されてきた小児科や産婦人科の医師数は2008年以降増加傾向にあることから3),診療科偏在は解消しつつあるようにも見える.
 医師の地域偏在,すなわち,医師過密地域と医師不足地域の医師数の格差については過去にもいくつか研究が行われており,医師の地域偏在はほとんど変わっていないか,悪化していることが示されている4)〜6).これらの研究はいずれも10年間での医師分布の推移をみているが,医師の偏在対策が始まった2008年以降のデータを用いて医師の地理的な偏在を分析した研究は少ない.診療科ごとの地域偏在については,Matsumotoら7)が2006年時点の日本と米国の医師配置を比較し,わが国は開業率の低い診療科ほど医師数が少なく,医師の地域偏在は拡大する傾向がみられたとしているが,診療科ごとの地域偏在の推移について検討した論文はない.

参考文献

1)厚生労働省:臨床研修制度の導入が地域医療に与えた影響について.http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000020kbe-att/2r98520000020kec.pdf
2)厚生労働省:医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会 中間とりまとめ.http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000126444.html
3)厚生労働省:平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況.http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/
4)Kobayashi Y, et al:Geographic distribution of physicians in Japan. Lancet 340:1391-1393, 1992
5)Toyabe S:Trend in geographic distribution of physicians in Japan. Int J Equity Health 8:5, 2009
6)Tanihara S, et al:Urbanization and physician maldistribution:a longitudinal study in Japan. BMC Health Serv Res 11:260, 2011
7)Matsumoto M, et al:Geographical Distributions of Physicians in Japan and US:Impact of Healthcare System on Physician Dispersal Pattern. Health Policy 96:255-261, 2010
8)Brown MC:Do physicians locate as spatial competitions models predict? Evidence from Albeta. The Canadian Medical Association Journal 148(8):1301-1307
9)Newhouse JP:Geographic Access to Physician Services. Annu Rev Public Health 11:207-230, 1990
10)Matsumoto M, et al:physician Scarcity is a Predictor of Further Scarcity in US, and a Predictor of Concentration in Japan. Health Policy 95:129-136, 2010
11)厚生労働省:周産期医療体制のあり方に関する検討会.http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=292852
12)江原 朗:市区町村の人口規模と成立する診療科との関係について 診療科ごとに対象人口が異なる.医療と社会23:113-123, 2013
13)日本心臓血管外科学会:施設集約化委員会(心臓・胸部大血管分野)での決定事項 2 http://jscvs.umin.ac.jp/news/20140418kettei.html
14)Matsumoto M, et al:Self-employment, Specialty Choice, and Geographical Distribution of Physicians in Japan, A Comparison with the United States. Health Policy 96:239-244, 2010
15)Vogt V:The contribution of locational factors to regional variations in office-based physicians in Germany. Health Policy 120:198-204, 2016
16)小林廉毅(研究代表者):平成27年度厚生労働科学研究費補助金「諸外国の医師配置等に関する研究」.
17)Busato A, et al:primary care physician supply and other key determinants of health care utilization:the case of Switzerland. BMC Health Serv Res 8:8, 2008
18)Horev T, et al:trends in geographic disparities in allocation of health care resources in the US. Health Policy 68:223-232, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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