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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生82巻5号

2018年05月発行

文献概要

特集 発達障害者支援の到達点—新しい支援の枠組みを考える

発達障害の公衆衛生課題とは何か?—戦後のわが国の障害福祉の源流

著者: 西牧謙吾12

所属機関: 1国立障害者リハビリテーションセンター病院 2国立障害者リハビリテーションセンター病院 発達障害情報・支援センター

ページ範囲:P.350 - P.356

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はじめに
 わが国の障害者は法律上,長らく措置制度に守られ保護される存在であった.障害者が「社会的自立」と「社会参加」を目的にして公的責任の下で支援を受けられるようになるには,1993(平成5)年の障害者基本法改正を待たなければならなかった.「国際障害者年」〔1981(昭和56)年)〕以降,わが国でノーマライゼーション(normalization)の理念が広がり,「施設から在宅へ」の流れが醸成されてきたことを受け,1990(平成2)年に福祉関係8法が改正され,在宅福祉サービスが法定化された.
 1997(平成9)年の介護保険法は,新たな高齢者介護サービスの体系化と新たな社会保険の創設という意味を持っていた.障害福祉においては,社会福祉基礎構造改革を経て,措置制度から利用契約制度への移行が図られた.そして,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法,精神障害者福祉法,児童福祉法に基づいて提供されてきた福祉サービス,公費負担医療などを,2005(平成17)年に障害者自立支援法(現 障害者総合支援法)によって一元的に提供する仕組みが創設された.
 発達障害者支援法は,その前年の2004(平成16)年に成立したが,発達障害は,障害としての認識が遅れた.また,その施策も,身体障害,知的障害,精神障害への対策とは違い,法律によって規定された入所施設を持たなかった.
 発達障害者への福祉サービスでは,就労系,自立支援医療,障害年金などのニーズが高い.乳幼児期は児童発達支援が,学齢期では特別支援教育が主に対応する.症状の出現時期は,家庭,学校,職場における適応状況に依存し,診断時期は本人や保護者の困り感によってさまざまである.障害者総合支援法だけで対応できない難しさを内包している.児童自立支援施設や児童心理治療施設(両者は,非行に関する社会的養護の施設)も発達障害との関連において重要な入所施設である1)
 本稿では,発達障害者支援法の成立前の,戦後の障害福祉の源流を探りながら,地域にある発達障害者支援に関連のある社会資源について述べる.また,発達障害支援の裾野の広さと,その公衆衛生課題を明らかにする.

参考文献

1)厚生労働統計協会:厚生の指標 増刊 国民の福祉と介護の動向 2017/2018年版.厚生労働統計協会,2017
2)三浦展:下流社会 新たな階層集団の出現.光文社,2005
3)寺脇研:文部科学省 「三流官庁」の知られざる素顔.中央公論新社,2013
4)内閣府:平成29年版 子供・若者白書(全体版).http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h29honpen/index.html
5)厚生労働統計協会:厚生の指標 増刊 国民衛生の動向 2017/2018年.厚生労働統計協会,2016
6)厚生労働省:地域保健法第四条第一項の規定に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針(平成六年十二月一日厚生省告示第三百七十四号).http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000079549.pdf
7)石井敏弘(責任編集):地方分権時代の健康政策実践書—みんなで楽しくできるヘルスプロモーション.ライフサイエンスセンター.2001
8)藤内修二:私信.
9)宇山勝儀:講座 障害者福祉法制の史的展開・2 対象者別障害者福祉法の制定.http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/rehab/r094/r0940006.html
10)遠藤浩:国立コロニー開設に至る道のり.国立のぞみの園10周年記念紀要.2014
11)岡田喜篤,他:重症心身障害児(者) 医療福祉の誕生.医歯薬出版,2016
12)日本精神神経学会(監修),高橋三郎,他(訳):DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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