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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生82巻6号

2018年06月発行

文献概要

特集 聴覚障害の早期発見と支援体制

新生児聴覚検査の現状と課題

著者: 守本倫子1

所属機関: 1国立研究開発法人国立成育医療研究センター感覚器・形態外科部耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.442 - P.447

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はじめに
 小児の難聴は,早期に発見し,その結果を早期に補聴器装用や療育につなげることが重要である.以前は1歳6カ月健診や3歳児検診,親の気づきや小児科医の指摘などが難聴発見のきっかけとなっており,遅くなることも少なくなかった.その結果,言葉の遅れが発達の遅れと捉えられていたり,十分に言語や語彙力が付かないまま就学の時期を迎えてしまい,小学校で友人とのコミュニケーショントラブルに悩まされたり,学業が付いていくことが困難であったりと,さまざまな問題が生じていた.
 しかし,生後半年以内に難聴が発見された場合,それ以降に発見された場合と比較して言語発達が明らかに良好であることが報告された1).その結果,米国のJoint Committee on Infant Hearingは2000年のposition statementにおいて「生後1カ月までに新生児聴覚スクリーニング(newborn hearing screening:NHS)を,3カ月までに精密聴力検査を行い,6カ月までに療育を開始する」という「1-3-6ルール」を提唱し2),このルールが広く知られるようになった.全ての子どもたちが等しくNHSを受けられることが望ましいことは明らかであるが,現時点ではさまざまな課題がある.

参考文献

1)Yoshinaga-Itano C, et al:Language of early-and later-identified children with hearing loss. Pediatrics 102:1161-1171, 1998
2)Joint Committee on Infant Hearing, et al:Year 2000 position statement:principles and guidelines for early hearing detection and intervention programs. Joint Committee on Infant Hearing, American Academy of Audiology, American Academy of Pediatrics, American Speech-Language-Hearing Association, and Directors of Speech and Hearing Programs in State Health and Welfare Agencies. Pediatrics 106:798-817, 2000
3)産婦人科医会 母子保健部会:新生児聴覚スクリーニングに関するアンケート調査報告.http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/09/2017hearing.pdf
4)CQ802生後早期から退院までにおける正期産新生児に対する管理の注意点は?.日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会(編):産婦人科診療ガイドライン産科編2017.pp417-422,日本産科婦人科学会,2017
5)日本耳鼻咽喉科学会福祉医療・乳幼児委員会:平成27年度「新生児聴覚スクリーニング後の精密聴力検査機関実態調査および1歳児,2歳児の精密聴力検査機関実態調査」に関する報告.日耳鼻会報119:1074-1085, 2016
6)日本耳鼻咽喉科学会:お子様の難聴に関する情報 新生児聴覚スクリーニング後の精密聴力検査機関リスト.http://www.jibika.or.jp/citizens/nanchou.html
7)Kasai N, et al:Effects of early identification and intervention on language development in Japanese children with prelingual severe to profound hearing impairment. Ann Otol Rhinol Laryngol Suppl 202:16-20, 2012
8)田中恭子,他:市中病院における新生児聴覚スクリーニングと精密検査の検討.日耳鼻会報119:187-195, 2016
9)鶴岡弘美,他:新生児聴覚スクリーニングから診断された難聴児への介入時期の検討.Audiol Jpn 58:630-637, 2015
10)厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長:平成28年3月29日 雇児母発0329第2号 新生児聴覚検査の実施について.http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11908000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Boshihokenka/tyoukaku2.pdf
11)熊川孝三,他:新生児聴覚スクリーニングの疑陽性率を減らすための試行制度の検討.Audiol Jpn 56:163-170, 2013
12)麻生伸:新生児聴覚スクリーニングの現状と役割は? 小児診療77:851-855, 2014
13)日本耳鼻咽喉科学会 福祉医療・乳幼児委員会:新生児聴覚スクリーニングマニュアル—産科・小児科・耳鼻咽喉科医師,助産師・看護師の皆様へ—.pp22-23,松香堂,2016 http://www.jibika.or.jp/members/publish/hearing_screening.html

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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