文献詳細
文献概要
特集 脳性麻痺と産科医療補償制度
社会的制度としての産科医療補償制度の意義と今後の課題
著者: 小林廉毅1
所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学
ページ範囲:P.526 - P.531
文献購入ページに移動産科医療補償制度(以下,本制度)は2009年1月に産科医療のセーフティーネットとして創設された.分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児に対して総額3,000万円の補償を行うとともに,全例について分娩機関から提出された医療記録を基にして専門家が原因分析を行う.分析結果は児の家族と分娩機関にフィードバックされ,また,十分な匿名化を行ったうえで要約版が公表される.さらに,集積された原因分析については,数量的・疫学的分析ならびに産科医療の質の向上の観点から分析が行われ,毎年,再発防止報告書が公表される.
2011年に第1回再発防止報告書が公表されて以来,これまで8回の報告書が公表されている(最新は2018年3月).初期の報告書では分析対象事例が少なく,十分な分析は困難であったが,分析対象事例が増えるにつれて再発防止に有用な知見が得られつつある.報告書は本制度のホームページ1)で閲覧・ダウンロードできる.すなわち,本制度の意義は,速やかな補償による家族の経済的負担軽減と脳性麻痺発症の原因分析・再発防止にある1)2).
参考文献
掲載誌情報