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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生82巻7号

2018年07月発行

文献概要

特集 脳性麻痺と産科医療補償制度

脳性麻痺児の在宅支援—NICU入院児支援コーディネーターを含む病院スタッフと,地域ケア専門職との連携

著者: 内田美恵子1 今井ゆか2 小泉恵子3 田村正徳4

所属機関: 1埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター 2埼玉医科大学総合医療センター患者支援室 3埼玉医科大学総合医療センター看護部 4埼玉医科大学総合医療センター小児科

ページ範囲:P.548 - P.555

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はじめに—NICU長期入院児問題とは
 2008年に,都内の産科クリニックからの妊婦の緊急入院が都内の7カ所の周産期医療センターに断られて,妊婦が死亡するという事件が発生した(B病院事件).われわれ周産期医療関係者にとってショックであったのは,受け入れを断られた主な理由が「NICU(neonatal intensive care unit.新生児集中治療室)が満床であったから」ということであった.それまでは,NICUは1,000出生当たり2床あればよいと考えられていたが,ハイリスク新生児の増加と救命率の向上によって,1,000出生当たり3床必要であることが明らかになった.全国的なNICU病床の増床には時間がかかるため,「NICU長期入院児問題」が注目されることとなった.
 上記を受けての2009年の大阪府医師会による「NICU長期入院児解決のための緊急提言」1)(以下,本提言)には,①NICU後方病床の確保,②在宅医療の推進と支援,③コーディネーターの配置,が挙げられている.また,本提言ではNICU入院児支援コーディネーター(以下,コーディネーター)は「出産に係る周産期医療提供体制の確保に資するため,病院のNICUや小児病棟等に長期入院する児童について,保健医療分野の専門家が支援を行うことで,退院後の自立生活を送るためのエンパワメントや退院促進のためのコーディネイト等を行う」としている.本提言は,2010(平成22)年に策定された東京都の周産期医療体制整備計画のコーディネーターとして実現され,その具体的な役割は「NICU入院児支援コーディネーターのためのハンドブック」2)に記されている.

参考文献

1)大阪府医師会:NICU長期入院者対策検討報告と緊急提言 Ⅱ.NICU長期入院児解決のための緊急提言.http://www.jnanet.gr.jp/kan/kan01.pdf
2)東京都福祉保健局:NICU入院児支援コーディネーターのためのハンドブック.http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kyuukyuu/syusankiiryo/nicutainshien.html
3)飯田浩一:新生児医療施設・小児医療施設・在宅医療環境を結ぶコーディネーターの機能と役割・問題点に関する研究.田村正徳(研究代表者):厚生労働省科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)「重症新生児に対する療養・療育環境の拡大に関する総合研究」.2011
4)楠田聡,他:NICU長期入院児の動態調査長期入院発生率が減少した原因についての検討.田村正徳(研究代表者):厚生労働省科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)「重症新生児に対する療養・療育環境の拡大に関する総合研究」.2011
5)森脇浩一,他(研究協力者),田村正徳(研究分担者):厚生労働省科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「重症の慢性疾患児の在宅での療養・療育環境の充実に関する研究」(総合)研究報告書 平成23〜25年度 分担研究(9)「全国のNICU・GCU長期入院児の実態調査」.2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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