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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生82巻7号

2018年07月発行

文献概要

特集 脳性麻痺と産科医療補償制度

産科医療補償制度の補償対象児に対する看護・介護の状況

著者: 湯浅ひとみ1

所属機関: 1公益財団法人日本医療機能評価機構 産科医療補償制度運営部

ページ範囲:P.556 - P.561

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はじめに
 2009年に発足した産科医療補償制度(以下,本制度)は,分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児と,その家族の経済的負担を速やかに補償するとともに,脳性麻痺発症の原因分析を行い,同じような事例の再発防止に資する情報を提供している.これらによって紛争防止,早期解決および産科医療の質の向上を図ることを目的としており,公益財団法人日本医療機能評価機構(以下,当機構)は本制度の運営組織として,分娩機関の制度加入手続,保険加入手続,掛金の集金,補償対象の認定,補償金支払い手続(保険金請求手続),原因分析および再発防止などの制度運営業務を行っている.
 上記の業務のうち,補償対象の認定,補償金支払い手続(保険金請求手続)については,分娩機関と妊産婦(児)との間で取り交わされた補償約款に基づいて運営組織である当機構が補償対象と認定すると,当機構が加入分娩機関の代わりに損害保険会社に保険金を請求し,保険金が補償金として妊産婦(児)に支払われる仕組みとなっている.
 具体的な手続きは以下のように行われる.
①補償請求者(児またはその保護者)が,児の脳性麻痺の診断および障害等級の程度を証明するための専門知識を有する医師の診断書(補償認定請求用専用診断書)と,その他の書類を分娩機関に提出して補償認定依頼を行う.
②分娩機関は,補償請求者からの補償認定依頼に基づいて,当機構に対して補償認定を請求する.
③当機構が,産科,新生児科,小児神経科,リハビリテーション科の専門医および法律家により構成された審査委員会を開催して補償対象の可否を検討し,その結果に基づいて補償対象の認定を行う.
④補償対象に認定されると,看護・介護を行う基盤整備のための準備一時金600万円と毎年の補償分割金合計2,400万円(年間120万円を20回)の総額3,000万円が支払われる.なお,補償請求者は,毎年,児の脳性麻痺に関する診断書(補償分割金請求用専用診断書)とその他の書類を併せて当機構に提出し,補償分割金請求を行う必要がある.
 上記のような仕組みの下で,当機構は,補償対象と認定された重度脳性麻痺児(以下,補償対象児)の補償認定請求用専用診断書と補償分割金請求用専用診断書に記載されている児の運動障害や看護・介護の状況に関するデータを有している.また,補償分割金請求用専用診断書は児が20歳を迎えるまで毎年提出してもらうことから,児の運動障害や看護・介護の状況を経時的に把握できるようになっている.これらのデータを基に,2017年2月に本制度において補償対象となった児の看護・介護の状況について取りまとめたので1),本稿では,その一部を紹介する.

参考文献

1)公益財団法人日本医療機能評価機構:第36回「産科医療補償制度運営委員会」次第.http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/documents/committee/obstetric_meeting_36.pdf
2)公益財団法人日本医療機能評価機構:産科医療補償制度ニュース 第5号.http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/documents/other/pdf/sanka_news_05.pdf
3)前田浩利:いま,なぜ子どもの在宅医療なのか.チャイルドヘルス18:870-873, 2015
4)田村正徳:小児の在宅医療.地域医学29:265-269, 2015
5)社団法人全国訪問看護事業協会:平成21年度厚生労働省障害者保健福祉推進事業(障害者自立支援調査研究プロジェクト)障害児の地域生活への移行を促進するための調査研究事業報告書.https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/h21-2.pdf
6)文部科学省:共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告).http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1321669.htm
7)髙橋順一,他:障害児教育におけるインクルーシブ教育への変遷と課題.福島大学人間発達文化学類論集19:13-26, 2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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