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連載 リレー連載・列島ランナー・114
青森県における地域診断の試み
著者: 大西基喜12
所属機関: 1青森県立保健大学大学院健康科学研究科 保健・医療・福祉政策システム領域 公衆衛生研究室 2青森県健康福祉部
ページ範囲:P.721 - P.725
文献購入ページに移動青森県(以下,当県)には健康課題が多くあり,その実態を把握し,原因を探ることは重要なテーマとなっています.地域ごとにきめ細かにそれらを把握していく,いわゆる「地域診断」を充実させることは,保健対策を立て,その評価を考えるうえで肝要です.本稿では,当県の担当課が中心となって行ってきた,健康・疾病に関する地域診断の事業を紹介したいと思います.
健康・疾病に関する地域診断上の数字に表されたデータといえば,死亡率,健診データ,介護保険データ,社会的決定因(social determinants of health:SDH)関連の医療・介護・福祉資源,経済,文化,教育などの種々の社会的指標が代表的ですが,事業を企画した2006(平成18)年ごろは,ごく基礎的な基本健診データ(老人保健事業)も紙で入手し,積んでおくだけという処理をしている市町村もあるという状況でした.これを全県的にデジタルデータで入手し,分析していくということ自体が解決すべき課題でした.
一方,数字で測れないデータも多く,健康・疾病にも関連の深いソーシャルキャピタルや人々の考え方,文化や素養,風土,伝統,県民性など,質的データはなかなか蓄積・分析されがたい対象でした.身近なところでは,保健従事者の体験で把握される地域のさまざまな情報,保健活動で生じる面談・会議録など,種々の質的データはまとめ方が難しいこともあり,多くは保健師の退職,あるいは個別パソコンの廃棄などとともにほぼ消失していっていました(今もそう事情は変わりませんが).これらを何らかのデータベースに構築するということは保健上の大きな課題に思えました.上記のような量的・質的データについての課題が,本稿で紹介する当県の事業につながっていきました.
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