icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生83巻1号

2019年01月発行

文献概要

特集 人獣共通感染症—獣医衛生領域から見た対策

動物のサルモネラ症の感染状況と国内外の対策

著者: 江口正浩1

所属機関: 1国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 細菌・寄生虫研究領域 細胞内寄生菌ユニット

ページ範囲:P.35 - P.39

文献購入ページに移動
はじめに
 サルモネラ属菌は,ヒトおよび家畜・家きんに感染する人獣共通感染症の原因菌の一つである.サルモネラ属菌にはSalmonella enterica(S. enterica)とSalmonella bongoriが属しており,S. entericaentericaarizonaediarizonaehoutenaeindicasalamaeの亜種に細分類されている.また,サルモネラ属菌は,Kauffmann-Whiteの抗原表を用いた血清型に分類されており,現在,2,600ほどの血清型が挙げられている.血清型別は菌体表面多糖であるO抗原によって群に分けられ,さらに,鞭毛抗原であるH抗原によって細分化される.サルモネラ属菌のH抗原は,2つの異なった性質を持った構造(相)の間で変異が起こる相変異がある.したがって,2つの構造を持つ複相性と一つの構造(相)を持つ単相性がある.近年,H抗原の第2相を欠くサルモネラ血清型O4:i:-による感染事例の報告が増加している1)
 サルモネラ属菌がヒトに感染・発症するとチフス性疾患や胃腸炎(腹痛,嘔吐,下痢を呈する食中毒)を引き起こし,小児や高齢者に感染すると重篤になることがある.一方,家畜・家きんにサルモネラ属菌が感染すると,発熱,食欲不振,元気消失を主徴とし,急性敗血症や慢性的な下痢症を引き起こす.
 本稿では,家畜・家きんのサルモネラ症について,その感染状況,国内外の対策の実施状況を述べる.

参考文献

1)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 細菌・寄生虫研究領域 腸管病原菌ユニット:サルモネラ(4:i:-)の同定法マニュアル.http://jvpa.jp/jvpa/wp-content/uploads/2018/03/20180330_jimu02.pdf
2)山本友子,他:サルモネラの細胞侵入と食細胞内寄生の分子機構.日細菌誌60:375-387, 2005
3)山本友子,他:病原体の細胞内動態 サルモネラによる宿主食細胞のハイジャック.実験医28:1535-1541, 2009
4)松井英則,他:サルモネラのプラスミド性ビルレンス遺伝子.日細菌誌48:399-406, 1993
5)e-Gov:家畜伝染病予防法.http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=326AC1000000166&openerCode=1
6)農林水産省消費・安全局動物衛生課:監視伝染病の発生状況.http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/kansi_densen/kansi_densen.html
7)Sasaki Y, et al:Risk factors for Salmonella prevalence in laying-hen farms in Japan. Epidemiol Infect 140:982-990, 2012
8)薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会:薬剤耐性ワンヘルス動向調査 年次報告書2017.https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000180888.pdf#search=%27薬剤耐性ワンヘルス動向調査+年次報告書+2017%27
9)農林水産省消費・安全局(監修):病性鑑定マニュアル 第4版.http://www.naro.affrc.go.jp/org/niah/disease_byosei-kantei2016/index.html
10)Henrik C, et al:Salmonella Control Programs in Denmark. Emerg Infect Dis 1:774-780, 2003
11)Sundström K, et al:Economic effects of introducing alternative Salmonella control strategies in Sweden. PLoS ONE 9:e96446, 2014
12)European Food Safety Authority, European Centre for Disease Prevention and Control:The European Union Summary Report on Trends and Sources of Zoonoses, Zoonotic Agents and Food-borne Outbreaks in 2010. EFSA Journal 10:2597, 2012 https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/2597
13)FDA:Food Safety Modernization Act(FSMA). https://www.fda.gov/Food/GuidanceRegulation/FSMA/ucm304045.htm
14)農林水産省:家畜の生産段階における飼養衛生管理の向上について(農場HACCP等).http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_haccp/
15)国立感染症研究所:サルモネラ感染症とは.https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/409-salmonella.html
16)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門:「特異的遺伝子の多重検出によるサルモネラ主要血清型迅速同定法」.http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2008/niah08-03.html
17)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門:新規のサルモネラワクチンに利用可能な防御抗原の同定.http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2015/niah15_s15.html
18)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門:サルモネラに対する感染防御にはたらくモノクローナル抗体を作製.http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/niah/2016/niah16_s06.html

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら