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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生83巻10号

2019年10月発行

雑誌目次

特集 摂食障害の理解と対応

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著者: 「公衆衛生」編集委員会

ページ範囲:P.717 - P.717

 21世紀はメンタルヘルスの時代といわれています.社会環境や価値観の変化が著しく,若年者にとって何が正常で何が異常な考え方や行為なのか判断が難しくなってきていることがありそうです.米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアルである「DSM-5」は,家庭・施設内の虐待やネグレクト,孤立,ホームレス,貧困,社会的疎外など社会の中で生きることに困難を感じている人々が多い社会となっていることに対応して改訂がなされています.その中で,摂食障害は「食行動障害および摂食障害群」として分類されています.摂食障害の問題を有する者は世界で約7,000万人いると推測され,2016年から6月2日を「世界摂食障害の日」として啓発活動が行われています.
 摂食障害で苦しんでいるアスリートも少なくないことが分かっており,2020年東京オリンピック・パラリンピックを前に彼・彼女らへの啓発が強化されています.また,若者が健やかに成長・自立・活躍できる社会とすることにも大きな影響を及ぼす問題です.この障害は当事者だけでも家族や社会(学校,職場)だけでも解決できない難しさがある問題でもあります.そのため,社会的な理解と包括的な支援が必要とされ相談支援組織の整備が急がれています.

「摂食障害」の誕生から現在までの変遷—時代と社会の変化が及ぼしてきた臨床像

著者: 山内常生 ,   切池信夫

ページ範囲:P.718 - P.723

はじめに
 摂食障害,あるいは拒食症や過食症といった病名は今では広く認知されており,身近な病気になった感がある.マスメディアで取り上げられる機会が増えたことも一因で,有名人が摂食障害の既往を告白したり,痩せた姿から拒食症になったのではないかとの噂が飛び交ったりすることも珍しくない.摂食障害が“病気”として登場して以降,その患者数は増えてきた.特に,この半世紀の患者急増は,“特別な人たちの病気”からの一般化を表しているのであろう.疾患としての本質に変わりはないが,疾患の解釈,または患者像はその時代を背景として変化してきた.
 本稿では,摂食障害の現在に至るまでの疾患概念と診断基準の変遷,また,患者を取り巻く社会的変化の影響と臨床像の変化などについて述べる.

摂食障害患者の医学・心理社会的要因の研究と診療体制

著者: 安藤哲也

ページ範囲:P.724 - P.730

はじめに
 摂食障害(eating disorder:ED)には多くの心理,社会,身体(生物学的)要因が関係している.その由来からみれば遺伝要因と環境要因に,EDの発症・経過への役割からみれば素因やリスク要因,誘発要因,維持・悪化要因,回復要因などそれぞれに分けることができる.発症前から存在する問題なのか,発症後(二次的に)生じた問題なのか,EDに特異的・特徴的な要因なのか,それとも精神疾患や病気一般に広く関わる非特異的な要因なのか,といった整理も可能である.近年は,外部からの影響の有無にかかわらずEDが自己永続的に維持される仕組みが注目されている.
 EDは頻度が比較的高い重篤な疾患であり,しばしば長期化して健康や人生へ大きく影響を及ぼす.生命に関わることもまれではない.治療も難しい病気である.それにもかかわらず,わが国でのED対策は遅れている.
 本稿は,前半でEDの医学・心理社会的要因の研究のうち,最近のEDに特徴的な要因を中心にいくつかを取り上げて紹介する.後半では,筆者が関わった2014〜2016(平成26〜28)年度の厚生労働科学研究費補助金「摂食障害の診療体制整備に関する研究」班の調査1)や,2014(平成26)年度から現在も続く「摂食障害治療支援センター設置運営事業」の成果2)を紹介しながら,EDの診療体制の現状と課題について述べる.

摂食障害の臨床現場における診断・治療の現状と課題

著者: 髙倉修 ,   小牧元

ページ範囲:P.731 - P.737

はじめに
 摂食障害(eating disorder:ED)治療の臨床現場では,著しく痩せている患者を神経性やせ症(anorexia nervosa:AN)と診断するのは難しくない.しかし,痩せを達成している患者は,自分の問題(病気)を認め,治療を求めて自ら医療機関を訪れることに抵抗を示すケースがほとんどである.他方,過食と自己誘発性嘔吐などを常とする神経性過食症(bulimia nervosa:BN)では,そうした自分の行為を秘密裏に行っていたり,恥ずかしいと感じて一人で悩んでいたりすることも少なくない.医療者はこうしたED患者の心理的特徴を的確に把握・理解して,慢性化する前に早期に医療に導入することが求められる.
 本稿では,初めにEDの診断基準ならびに診断上の留意点を述べる.治療については,西欧で近年,推奨されている治療を中心に紹介する.また,2015年12月に九州大学病院心療内科(以下,当科)に開設された福岡県摂食障害治療支援センター(以下,福岡県治療支援センター)における実際の臨床データを交えつつ,診断・治療の現状と課題について述べる.

摂食障害患者の援助における医療機関と学校や地域との連携

著者: 西園マーハ文

ページ範囲:P.738 - P.743

はじめに
 神経性やせ症(anorexia nervosa:AN)や神経性過食症(bulimia nervosa:BN)などの摂食障害は若年女性を中心に有病率が高い疾患であるが1),受診率は低いことが知られている.オランダにおける摂食障害の1年期間有病率の推計の報告2)では,地域レベル,プライマリケアレベル,精神科治療レベルの3段階の患者数はANとBNとで異なっていた.ANについては,若年女性10万人当たりの各段階の患者数は370人,160人,127人であり,ANの半数しかプライマリケア医を受診していないことが分かる.BNについては,それぞれ1,500人,170人,87人であった.地域ではANよりBNの方が多いが,BNの受診率はANよりさらに低く,プライマリケア受診者数で見るとほぼ同数となっている.
 ANは,低体重のために外見で病状が分かり,また,思春期発症が多いため,保護者などが強く受診を勧めれば半数程度は受診するということであろう.一方,BNは外見上は病状が周囲には分からない.また,成人発症も多く,一人暮らしも多いため,受診勧奨を受けにくいことが受診者数の少なさに影響しているのであろう.日本も受診のハードルは同様であることを考えれば,地域には,まだ,医療機関で観察されるよりはるかに多くの有症者がいると考えるべきである.日本では,病床を持つ医療機関(精神科,心療内科,小児科,婦人科,内分泌代謝内科など)の受診者数については調査3)があるが,プライマリケア医レベルのデータはいまだない.地域での有病率の推測はさらに難しいが,いくつかの学校での調査によれば,欧米とほぼ同率の食行動問題ややせ願望が観察されており4),有病率は,欧米に比較して著しく低いものではないと考えられる.
 英国のプライマリケア医からデータを収集した2005年の報告によれば,1990年代にはBNの受診率が増加し,その後は減少しているという5).ダイアナ妃(当時)が摂食障害をカミングアウトしたことなどが契機となり,それまで未受診だった人の受診が増えた可能性があるという.その後,減少したのは,上述のとおり,1990年代にそれまでの未治療者が多く受診したこともあるが,英国摂食障害協会(Eating Disorders Association:BEAT)6)など,医療機関以外での相談が充実したためではないかとも推測されている.BEATは当事者向けの援助を行っている団体である.このように,医療機関の受診者数は,社会にどのような援助資源があるかにも影響を受ける.
 受診率の低い疾患は多数あるが,摂食障害が特殊なのは,自分では病気と認めない「否認」の心理7)が,その精神病理の重要な要素を成しているということである.ANでは「低栄養の深刻さの否認」が診断基準8)の一項目にも挙がっている.BNについては,過食や嘔吐には強い苦痛を自覚する人が多い.しかし,これらは自分の意思では止められない「症状」であるにもかかわらず,「強い意志を持てば止められるはず」「これは病気でなく自分の弱さのせい」という自己責任論を当事者も持っていることが多い.また,過食嘔吐という症状について話をすることの恥ずかしさも大きい.摂食障害は,世の中の偏見(スティグマ)の強い疾患であることが知られているが,これを当事者が取り込む「セルフスティグマ」問題も大きいといえる9).受診率の低さにはこのような問題も関わっている.
 上述したように,摂食障害の治療について考えると,病院の中だけで良い対応はできない.社会の中での摂食障害のあり方をよく知っておく必要がある.本稿では,摂食障害と社会との関係を考える例として,学校と医療の連携,また,地域の保健所・センターでの相談の実態について検討する.

摂食障害者と治療・サポート者との関係性

著者: 瀧井正人

ページ範囲:P.744 - P.749

はじめに
 摂食障害は,ここ数十年のうちに出現し,主に若い女性の間に急速に広まった,極めて現代的な病気である.これまでの医学的理解や治療法の常識を超えているとも言え,古代神話の怪物であるスフィンクス(旅人に「朝は4本足,昼は2本足,夜は3本足.これは何か」という謎を出し,解けない者を殺して食べていたという怪物.ギリシア悲劇『オイディプス王』に登場する)のように,われわれに謎と難題を投げかけ続けているように思われる.
 公衆衛生に従事しておられる方々であれば,「摂食障害」1)という病名を耳にされたことがあるだろう.ある程度の知識を持っておられる方も少なくないと思われる.しかし,この病気が本質的にどのような病気であり,どう対処すればよいのかについて,明確な解答を持っておられる方はあまりいないのではないだろうか.摂食障害は多くの医療者にとって,理解のしにくい,最も取り扱いづらい病気の一つになっているように思われる.
 それどころか,摂食障害の専門家といわれる人たちの間でも,一致した病態理解や対処法が存在しているとは言えないのが現状である.専門家同士が「摂食障害」について話していても,それぞれが異なった病態をイメージしており,お互いが相いれない治療法・対応を是としていることが少なくない.そのため,話がかみ合わず不毛な議論に終わりがちであることを,繰り返し経験してきた.
 このような事態の一つの理由として,まず,摂食障害が多面的で多様な疾患であることが挙げられる.摂食障害の症状は,心理面,身体面,行動面,人間関係面などさまざまな側面に及ぶ.また,元来の性格傾向,育った環境,罹病期間,周囲の対応や治療の仕方などによって,同じ病名であってもその病像は大きく変わってくる.
 そして,このような病態の複雑性以外に,医療者側の価値観や心理的傾向の相違も,摂食障害について統一した見解を得ることが困難である大きな要因となっているように思われる.医療者各人は,それぞれ受けてきた教育や元来の内面的傾向によって,多様で多面的な摂食障害の異なった部分に焦点を当てて摂食障害を理解する傾向がある.そして,そのような摂食障害理解に基づいて,個々の患者についての理解や治療もなされがちであるように思われる.
 摂食障害のように複雑で対応困難な病気を理解し対処する場合,このような主観的要素が入ってくるのも,ある程度,仕方ないのかもしれない.しかし,筆者としては,このような百家争鳴のような状況は望ましくなく,より客観的な病態理解と合理的な治療法の発展が必要であると考えている.

摂食障害に関わる当事者支援—回復は日常の現場で起きている!

著者: 武田綾

ページ範囲:P.750 - P.755

はじめに
 わが国の摂食障害(eating disorder:ED)の歴史は,極端な食事制限と激しい運動によって全身の衰弱をもたらす,「思春期やせ症」と称されていた時から始まった.しかし,今や摂食障害は「思春期」だけでも「やせ症」だけでもなくなっている.それは,近年,摂食障害に関する相談が,臨床現場だけではなく,公衆衛生の現場の一つである保健所や保健センターにも寄せられていることからもうかがえる.
 西園ら1)が全国の保健所や保健センターで実施した摂食障害についての調査では,相談事例の約半数が未受診か治療中断,40歳以上が18%,10年以上の罹病期間が22%であった.これは,対象が早期の治療的介入の機会に失敗したまま慢性化し,高齢化したことを示している.地域での精神保健相談で受ける精神疾患の処遇困難例と言っても過言ではない.

社交不安障害(社交不安症)と摂食障害

著者: 永田利彦

ページ範囲:P.756 - P.761

はじめに
 摂食障害の病因は,いまだ未解明である.生物学的仮説(遺伝的側面,セロトニン仮説-強迫スペクトラム障害仮説,ノルアドレナリン・ドーパミン・サイトカイン・アディポサイトカイン仮説などを含む神経伝達物質仮説,認知機能仮説),症候論的仮説(気分障害,強迫スペクトラム仮説など),心理社会的仮説(痩せ礼賛文化,力動的理解など)など種々の仮説が出されてきた1).しかし,どれも決定打ではなく,治療に直結するものでもない.例えば,症候論的仮説,併存症研究から生まれた気分障害スペクトラム仮説や強迫スペクトラム障害仮説の最も大きな弱点は,大うつ病性障害や強迫性障害の第一選択であるSSRI(selective serotonin reuptake inhibitors.わが国で上市されているのはフルボキサミン,パロキセチン,セルトラリン,エスシタロプラムの4種)の摂食障害に対する効果が限定的であり,FDA(Food and Drug Administration)が承認しているのは,神経性過食症に対するフルオキセチンだけである.事実,欧米の摂食障害ガイドラインでは,薬物療法は精神療法ができない特殊な状況でのみ許されている.精神科以外の医療関係者には理解しにくいであろうが,現在の精神科診断は病因論を排した操作的診断基準であり,治療に直結しない.そこで,より治療的な視点が必要とされるのである.
 摂食障害に相当の割合で社交不安障害の併存が認められ,さらに社交不安障害発症が先行していることが分かっており,社交不安障害からの視点による摂食障害治療の有効性が示されている2).摂食障害全体をカバーする病因論ではなく,治療的視点から摂食障害の一部を理解しようとするものである.

摂食障害の理解の促進と啓発の現状と課題—日本摂食障害協会(JAED)の取り組みから

著者: 小原千郷

ページ範囲:P.762 - P.766

はじめに
 摂食障害は先進国を中心として多発しており,社会的な問題となっている.発症年齢は青年期をピークとして子どもから中年期に及ぶ.また,女性に多いが男性にも発症するなど,いわば誰もがなり得る病態「common disease」である.発症すれば,精神面・心理面・行動面でさまざまな症状が現れ,悪循環しながら生活全般に影響を及ぼし,対人関係や学業や就労などの社会適応にも支障を生じる.摂食障害に対する専門的で総合的な治療が求められるとともに,発症を予防し,また疾患を抱えた患者を社会の中でサポートするための啓発活動が必要である.
 上記の課題を解決するため,2015年に日本摂食障害協会(Japan Association for Eating Disorders:JAED)が発足し,2016年に一般社団法人化した1).本稿ではJAEDの活動を紹介し,一連の活動の中で得られた摂食障害の理解の促進と啓発の課題について考察する.

視点

これからの公衆衛生を担われる皆さまへ

著者: 廣瀬浩美

ページ範囲:P.714 - P.715

公衆衛生医師になった動機
 公衆衛生医師歴32年,定年まであと7年の県型保健所長の私が公衆衛生医師になったのは,学生時代に結婚・出産し,安定した生活・子育てと仕事を両立させるためでした(当時,学生時代の出産は珍しかったと思います).
 公衆衛生医師のそれぞれの入職の動機は異なりますが,「公衆衛生マインド」という言葉があるように,プライマリーヘルスやヘルス・フォー・オールの気持ちを持ち,自分が汗をかくことで,少しでも社会や地域に貢献できたかなというやりがいを感じることや,地域の仲間とともに活動する喜びが仕事を続ける原動力になっていると思います.さまざまな仕事に関わり合いながら,いつの間にか令和の時代を迎えています.

連載 衛生行政キーワード・133

国における近年の摂食障害施策の動向

著者: 戸部美起 ,   溝口晃杜 ,   寺原朋裕 ,   得津馨

ページ範囲:P.768 - P.771

はじめに
 神経性無食欲症や神経性大食症などの摂食障害(以下,摂食障害)に対する国の取り組みにはさまざまなものがある.本稿では「摂食障害治療支援センター」(全国に4カ所)および「摂食障害全国基幹センター」(全国に1カ所)の設置に関わる事業を中心に,近年のトピックスと,それらに対するわが国の取り組みについて述べる.

リレー連載・列島ランナー・127

「大阪府のがん検診をよりよいものに!」を目標に

著者: 池宮城賀恵子

ページ範囲:P.773 - P.776

はじめに
 1982(昭和57)年度に老人保健法に基づく市町村の保健事業として開始されたがん検診は,2008(平成20)年度に健康増進法による健康増進事業として位置付けられ,市町村が主体となって実施されている.市町村は,新しい検診方法の導入や,それに伴う事業報告方法の変更などに対応している.さらに,高い受診率と精度管理が求められており,目標達成に向けて懸命な取り組みが行われている.
 筆者は,大阪府の精度管理の向上を目指して市町村のがん検診のサポートを行う事業に携わっている.本稿では,その取り組みを紹介する.

予防と臨床のはざまで

第40回日本産業衛生学会健康教育・ヘルスプロモーション研究会

著者: 福田洋

ページ範囲:P.778 - P.778

 以前,この連載でも,その歴史について触れたことのある日本産業衛生学会健康教育・ヘルスプロモーション研究会.名古屋で開催された第92回日本産業衛生学会において,2019年5月24日に第40回となる研究会を開催しました.健康経営に取り組む企業が増える中,今回は,あらためて基礎に立ち返り,「職域における健康教育のゴール」について議論を行うこととしました.さまざまな視点からのショートプレゼンテーションの後,円座で自由に語り合うサロンミーティング形式で議論を行いました.
 まず,最初に私からイントロダクションとして「IUHPE2019ロトルアダイジェストと本日の趣旨」と題し,研究会の歴史に加えて,4月にニュージーランドで行われたIUHPE(ヘルスプロモーション・健康教育国際会議)の話題から,マイケル・マーモット先生の基調講演などを紹介しました.公衆衛生領域では健康格差を縮小させる政策が求められていること,ヘルスリテラシーの重要性が増していること,さらに,インターネットやスマートフォンの普及とともにデジタルヘルスリテラシーが注目されていることなどをお伝えしました.

映画の時間

—あの日から私の心は晴れることがない—太陽がほしい 劇場版

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.779 - P.779

 戦時性暴力を描いた映画はいろいろあります.2007年に公開された,ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を背景に描かれた「サラエボの花」は劇映画ですが,深く記憶に残る作品でした.戦時に限らず,性暴力は許されることではありません.しかし,多くの戦争で性暴力が行われきたことも事実でしょう.今月,ご紹介する「太陽がほしい」は第二次世界大戦下,中国戦線で行われた性暴力を取材したドキュメンタリー映画です.
 1992年に東京で開催された「日本の戦後補償に関する国際公聴会」で証言に立った中国人女性,万愛花さんは,戦時下に性暴力を受けていたことを話していたのですが,感極まって,というか,PTSDの影響か,卒倒してしまいます.当時,日本に留学しており,テレビでその姿を目撃した,本作品の監督でもある班忠義さんは強い衝撃を受け,1995年から,性暴力被害にあった女性たちのもとを訪れて証言を得るとともに,事実関係の調査・検証を行ってきました.

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ページ範囲:P.713 - P.713

書評 フリーアクセス

ページ範囲:P.772 - P.772

書評 フリーアクセス

ページ範囲:P.777 - P.777

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.781 - P.781

あとがき/投稿申し込み書/著作財産権譲渡同意書 フリーアクセス

著者: 高鳥毛敏雄

ページ範囲:P.782 - P.782

 「摂食障害」は「ICD10」や「DSM-5」の中で疾病・障害として記載されています.若者を中心に,誰でもなり得る可能性のある一般的な障害です.生物学的要因より社会的要因が大きい問題と思われます.「痩せ」はかつて貧しさの象徴とされていましたが,今では「肥満」が貧困・不健康の象徴とされるように様変わりしています.食品の加工技術が向上し,流通が多様化する中で,食品がどこでも安く容易に手に入る社会となっています.
 瀧井氏は,医学的な理解と常識を超える周辺的障害が増えていると指摘されています.山内氏は食行為が栄養的欲求行為から乖離し,ストレス発散などの社会の生きにくさに対する行為となっていると指摘されています.武田氏は,現実回避のソーシャルスキルやコーピングスキル不足,歪んだ自己愛,自己中心性などの現代人特性が背景にあると指摘されています.永田氏は,不登校,引きこもりの背後に社交不安障害を伴う摂食障害者があると指摘されています.西園氏は,オランダの調査から日本でも若い女性の約2%が摂食障害に該当していると推測し,社会的偏見とセルフスティグマの問題が絡まって早期支援が難しい現状にあると指摘されています.髙倉氏は,学校において啓発活動を行うことが若年者の受診者増につながることを報告しています.小原氏からは日本摂食障害協会や世界摂食障害アクションディの啓発活動の報告をいただきました.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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