icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生83巻10号

2019年10月発行

文献概要

特集 摂食障害の理解と対応

摂食障害患者の医学・心理社会的要因の研究と診療体制

著者: 安藤哲也12

所属機関: 1国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部ストレス研究室 2国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部摂食障害全国基幹センター

ページ範囲:P.724 - P.730

文献購入ページに移動
はじめに
 摂食障害(eating disorder:ED)には多くの心理,社会,身体(生物学的)要因が関係している.その由来からみれば遺伝要因と環境要因に,EDの発症・経過への役割からみれば素因やリスク要因,誘発要因,維持・悪化要因,回復要因などそれぞれに分けることができる.発症前から存在する問題なのか,発症後(二次的に)生じた問題なのか,EDに特異的・特徴的な要因なのか,それとも精神疾患や病気一般に広く関わる非特異的な要因なのか,といった整理も可能である.近年は,外部からの影響の有無にかかわらずEDが自己永続的に維持される仕組みが注目されている.
 EDは頻度が比較的高い重篤な疾患であり,しばしば長期化して健康や人生へ大きく影響を及ぼす.生命に関わることもまれではない.治療も難しい病気である.それにもかかわらず,わが国でのED対策は遅れている.
 本稿は,前半でEDの医学・心理社会的要因の研究のうち,最近のEDに特徴的な要因を中心にいくつかを取り上げて紹介する.後半では,筆者が関わった2014〜2016(平成26〜28)年度の厚生労働科学研究費補助金「摂食障害の診療体制整備に関する研究」班の調査1)や,2014(平成26)年度から現在も続く「摂食障害治療支援センター設置運営事業」の成果2)を紹介しながら,EDの診療体制の現状と課題について述べる.

参考文献

1)安藤哲也(研究代表者):厚生労働科学研究費補助金 障害者政策総合研究事業(精神障害分野) 摂食障害の診療体制整備に関する研究(H26-精神-一般-001)平成26年度〜平成28年度 総合研究報告書.https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201616020B
2)摂食障害全国基幹センター:摂食障害治療支援センター設置運営事業報告書.https://www.ncnp.go.jp/nimh/shinshin/edcenter/material_01.html
3)Fairburn CG, et al:Eating disorders. Lancet 361:407-416, 2003
4)安藤哲也:摂食障害におけるリカバリー.精神保健研64:41-49, 2018
5)Patton GC, et al:Onset of adolescent eating disorders:population based cohort study over 3 years. BMJ 318:765-768, 1999
6)Stice E, et al:An 8-year longitudinal study of the natural history of threshold, subthreshold, and partial eating disorders from a community sample of adolescents. J Abnorm Psychol 118:587-597, 2009
7)Yilmaz Z, et al:Genetics and Epigenetics of Eating Disorders. Adv Genomics Genet 5:131-150, 2015
8)安藤哲也:摂食障害の遺伝子研究.脳21 18:158-163, 2015.
9)Duncan L, et al:Genome-wide association study reveals first locus for anorexia nervosa and metabolic correlations. Am J Psychiatry 174:850-858, 2017
10)Cederlöf M, et al:Etiological overlap between obsessive-compulsive disorder and anorexia nervosa:a longitudinal cohort, multigenerational family and twin study. World Psychiatry 14:333-338, 2015
11)Kaye WH, et al:New insights into symptoms and neurocircuit function of anorexia nervosa. Nat Rev Neurosci 10:573-584, 2009
12)Keys A, et al:The biology of human starvation. Minneapolis:University of Minnesota Press, 1950.
13)Frank GK, et al:Alterations in brain structures related to taste reward circuitry in ill and recovered anorexia nervosa and in bulimia nervosa. Am J Psychiatry 170:1152-1160, 2013
14)Frank GKW, et al:Recent advances in understanding anorexia nervosa. F1000Res 8:2019
15)佐藤康弘,他:脳の科学からみた摂食障害.精神臨サービス15:293-299, 2015
16)Fairburn CG(原著),切池信夫(監訳):摂食障害の認知行動療法.医学書院,2010.
17)安藤哲也,他:心身医学の最新の視点.精神臨サービス15:307-312, 2015
18)安藤哲也:摂食障害研究の最近の動向.心身医 54:146-153, 2014
19)安藤哲也:厚生労働省摂食障害治療支援センター設置運営事業の背景,現状と課題.精神保健研63:43-51, 2017
20)安藤哲也:摂食障害と地域連携 その現状と課題.精神科治療33:1455-1461, 2018
21)精神保健対策費補助金「摂食障害治療支援センター設置運営事業」:摂食障害情報ポータルサイト.http://www.edportal.jp/index.html 専門職の方はhttp://www.edportal.jp/pro/をご覧いただきたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら