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特集 栄養と健康—糖質制限食を中心に
特定保健用食品への期待
著者: 阿部圭一1
所属機関: 1国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所
ページ範囲:P.904 - P.909
文献購入ページに移動2019年7月に発表された厚生労働省のまとめ1)によると,2018年の日本人の平均寿命は女性が87.32歳,男性が81.25歳で,男女ともに過去最高を更新して世界でも有数な長寿国となっている.「人生100年時代」2)が議論される中,わが国の2017年度の医療費は総額42.2兆円,介護費は10.2兆円にも上っており,国民一人一人が健康への意識を高めて健康寿命の延伸に取り組むことが重要となっている.しかし,糖尿病が疑われる成人が2016年の時点で初めて推計1,000万人に上ったことが「国民健康・栄養調査」3)で明らかとなった.糖尿病が重症化した場合には人工透析治療が始まり,日常生活や食事の厳しい制限などQOL(quality of life)の大幅な低下につながる.透析にかかる医療費は年間1兆円を超えており,医療費全体への影響も少なくない.
現代社会には,不規則な生活や睡眠不足,運動不足があり,栄養面ではファストフードやインスタント食品を利用する機会が増えていることなど,健康寿命延伸のために取り組むべき課題は多い.不足しがちなビタミン,ミネラルなどの微量の栄養成分や,疾病予防につながる機能性成分を配合した健康食品を適切に取り入れることも,課題解決の一つの手段となり得る.健康食品には厳密な定義はないが,「健康の保持増進の効果があるとして販売されている食品全般」を指す.この健康食品が糖尿病予防をはじめ健康寿命延伸に貢献するためには,科学的根拠が不十分なものや粗悪製品を排除するとともに,正しい利用方法を利用者に十分に理解してもらうことが必須である.
本稿では,健康食品,その中でも特に効能,保健機能に関する表示のルールが定められている3つの保健機能食品,すなわち①特定保健用食品(トクホ),②機能性表示食品,③栄養機能食品について解説する.また,その歴史や概要,課題と期待に関して整理する.
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