icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生83巻12号

2019年12月発行

文献概要

連載 リレー連載・列島ランナー・129

日本における双生児研究発展の試み—アカデミアと現場をつなぐ

著者: 本多智佳1

所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンター

ページ範囲:P.923 - P.926

文献購入ページに移動
はじめに
 大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンター(以下,当センター)は「双生児研究」(ツインリサーチ)を専門に行う機関として,2009年4月に設置され,2019年で10周年を迎えた.双生児研究はあまり聞いたことがない分野だと感じる方も多いかもしれない.
 筆者と双生児研究の関係は大学生時代にさかのぼる.当時,大阪大学医学部保健学科に在籍していたが,指導教授であった早川和生先生(大阪大学名誉教授)が双生児研究に携わっておられた.このため,双生児研究は非常に身近な研究分野であったものの,筆者自身は別の研究テーマを選んでおり,深く携わることなく卒業した.その後,保健所保健師として母子保健事業に従事し,また,大学院で公衆衛生学を学んで,再び早川先生(当時,当センター長)の下で双生児研究に従事することとなった.
 ところで,双生児研究には「ふたごの」「ふたごによる」「ふたごのための」研究がある(図1).「ふたごの」研究とは,ふたごの妊娠をはじめとした,ふたごはなぜ生まれるのか,また単胎の場合と異なるふたご特有の現象など,ふたごに関する研究をいう.「ふたごのための」研究は,その名のとおり,ふたごの方々に特有な問題を解決することを目指した研究を指し,ふたごをどう育てるかといった多胎育児支援に関連した研究が最もイメージしやすいだろう.「ふたごによる」研究とは,ふたごを対象者として,さまざまな表現型や現象における遺伝と環境の影響に関する研究を指すが,ふたごだけでなくヒト全般における影響についての知見が得られるところとなる.これらは独立しているものではなく,重複する分野もある.
 双生児研究の歴史,日本で行われている取り組みや海外の大規模な双生児研究については既刊1)〜3)を参照いただきたい.
 おそらく,多くの読者は「双生児研究」と聞くと,「ふたごの」または「ふたごのための」を想像される方が多いであろう.これらの双生児研究はいずれも重要であり,当センターでも総合的に取り組むことを目指しているが,本稿では当センターの中核をなす「ふたごによる」研究を中心に紹介し,公衆衛生と研究をつなぐ架け橋について考える.

参考文献

1)安藤寿康:「心は遺伝する」とどうして言えるのか ふたご研究のロジックとその先へ.創元社,2017
2)東京大学教育学部附属中等教育学校(編):ふたごと教育 双生児研究から見える個性.東京大学出版会,2013
3)ティム・スペクター(著),野中香方子(訳):双子の遺伝子 「エピジェネティクス」が2人の運命を分ける.ダイヤモンド社,2014
4)Hur Y, et al:Twin registries worldwide:an important resource for scientific research. Twin Res Hum Genet 16:1-12, 2013
5)双生児法の基礎—量的遺伝学の人間行動への適用.安藤寿康:遺伝と環境の心理学 人間行動遺伝学入門.pp24-52,培風館,2014
6)本多智佳,他:双生児が紐解く遺伝と環境の関わり.岡田随象(編):遺伝統計学と疾患ゲノムデータ解析病態解明から個別化医療,ゲノム創薬まで.pp49-55,メディカルドゥ,2018
7)Watanabe M, et al:Within-pair differences of DNA methylation levels between monozygotic twins are different between male and female pairs. BMC Med Genomics 9:55, 2016
8)Watanabe M, et al:Genotype-based epigenetic differences in monozygotic twins discordant for positive anti-thyroglobulin autoantibodies. Thyroid 28:110-123, 2018
9)Manolio TA, et al:Finding the missing heritability of complex diseases. Nature 461:747-753, 2009
10)大木秀一:双生児家系縦断データに基づくライフコース遺伝疫学研究の展望.日衛誌66:31-38, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら