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特集 インバウンドと在留外国人—その増加と諸課題
外国人結核の発生動向と今後の課題
著者: 太田正樹1
所属機関: 1公益財団法人結核予防会結核研究所対策支援部
ページ範囲:P.134 - P.138
文献購入ページに移動最新の結核統計(2017年分)によれば,わが国の結核患者数は16,789人で,結核罹患率は人口10万人当たり13.3となり,結核低まん延国(結核罹患率が人口10万人当たり10以下)の目前となっている1).外国出生者の結核患者数も増加の一途をたどっている.2000年には全結核患者に占める外国籍の者の割合は2.4%であったが,2017年には全結核患者に占める外国出生者が1,530人と,その割合が9.1%まで増加した(図1)2).特に,20〜24歳,25〜29歳の若年層では,それぞれ外国出生者の占める割合が69%,57%と半数を超えるまでに増加しており,今後も増加し続けることが予想される.これらの外国出生者の内訳を見ると,フィリピン(321人,21.0%),中国(258人,16.9%),ベトナム(257人,16.8%),ネパール(164人,10.7%),インドネシア(121人,7.9%),ミャンマー(80人,5.2%)の6カ国が全外国出生結核患者の約8割を占めている(図2)2).これら6カ国の患者報告率(notification rate)を表13)に示す.これらの国々の患者報告率は中国(55.7)を除き,いずれも人口10万人当たり100を超えており,わが国では1970年以前の高い状態といえる.
外国出生結核患者の入国後の発病時期を表22)に示す.発病は入国後1年以内が45%と圧倒的に多いが,2〜4年が約2割いた.10年以上経過して発病した者も約2割いた.このことから,結核高まん延国出身者に対しては,入国前あるいは入国時の検診のみならず,入国後も定期的に結核検診を実施する必要性が示唆されている.今後,諸外国の例(後述する)に倣って,入国前ないし入国時に感染診断を行い,感染者に潜在性結核感染症(latent tuberculosis infection:LTBI)治療を行う必要性も出てくるかもしれない.
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