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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生83巻3号

2019年03月発行

文献概要

特集 公衆衛生の実践倫理

産業保健における実践倫理

著者: 藤野昭宏1

所属機関: 1産業医科大学医学部医学概論教室

ページ範囲:P.196 - P.201

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はじめに
 産業保健は,職場の衛生管理と働く人の心身の健康確保を目的として,産業医,産業看護職(看護師・保健師),衛生管理者および安全衛生スタッフなどの企業内の産業保健チームによって業務が遂行されている.ILO(International Labour Organization)とWHO(World Health Organization)の合同委員会によれば,①全ての職業における労働者の身体的,精神的および社会的健康を最高度に維持,増進させること,②労働条件に起因する健康からの逸脱を予防すること,③雇用中の労働者を健康に不利な条件から起因する危険から保護すること,④労働者の生理学的,心理学的能力に適合する職業環境に労働者を配置し維持すること,が産業保健の目標とされている(1950年に採択).作業を人間に,また,人間を仕事に適合させることがその基本理念である.1999年の第87回ILO総会において「ディーセント・ワーク」(働きがいのある人間らしい仕事)の概念が初めて用いられ,ILOの活動の主目標と位置付けられた.
 本稿では,産業保健における実践倫理について,労働安全衛生法などの法的枠組みを基礎としながら,①安全配慮義務と守秘義務,②両立支援・職場復帰における情報共有,③障害者に対する職場における合理的配慮,の3つの観点から述べる.

参考文献

1)藤野昭宏:(第1部)産業医制度 産業医と倫理 産業医に求められる倫理と使命.産業医と労働安全衛生法四十年.産業医大誌35特集:27-34, 2013
2)厚生労働省:雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針について.https://www.mhlw.go.jp/topics/2004/07/tp0701-1.html
3)堀江正知:産業保健における労働者のプライバシーと個人情報の取扱い.産業医大誌26:481-505, 2004
4)藤野昭宏,他:身体疾患を有する患者の就労支援における主治医と産業医の情報共有に関する倫理的検討 合理的配慮と安全配慮義務に関する法的・倫理的検討.人間と医療8:43-51, 2018
5)厚生労働省:雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針(合理的配慮指針).https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000078980.html
6)高齢・障害・求職者雇用支援機構:はじめからわかる障害者雇用〜事業者のためのQ & A集〜.http://www.jeed.or.jp/disability/data/handbook/qa.html
7)厚生労働省:合理的配慮指針事例集【第三版】. https://www.mhlw.go.jp/tenji/dl/file13-05.pdf

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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