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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生83巻4号

2019年04月発行

文献概要

特集 企業経営と公衆衛生の接点

格差社会における協同組合の新たな役割と課題

著者: 杉本貴志12

所属機関: 1関西大学商学部 2関西大学なにわ大阪研究センター

ページ範囲:P.279 - P.283

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協同組合の出自と発達
 格差社会といえば,現代につながる協同組合運動が生まれた19世紀前半に産業革命期にあった英国は,まさに典型的な格差社会だったということができる.当時,産業都市の労働者と農村地帯の地主とでは平均寿命が3倍程度違った(労働者は17歳前後,地主は50歳前後)というから,そこには人間の命にさえ桁違いの格差があったのである1).当時の英国は,まさに相互に理解し得ない「二つの国民」から成り立つ国であった.
 協同組合運動は,上記のような英国社会において,「相互扶助」と「協同」によって新たな経済社会をつくろうとして始まった運動である.労働市場において労働力を売り,食品市場において命の糧を購入していた人々は,市場のメカニズムは富者に圧倒的に有利なものであり,自分たちは常に失業の恐怖にさらされ,悪徳商法の犠牲になっているとして,全く異なる経済システムの建設を夢見た.金銭的な利益を求めて商売するのではなく,生活と生業を防衛するために,庶民が自分たち自身の力で自分たち自身の事業を始めたのである.これが協同組合であって,普通の人々が共同で「出資」し,共同で「経営」し,共同で「利用」する,いわゆる「三位一体」の経済組織として,協同組合はやがて世界中に広まっていった.

参考文献

1)角山栄:生活の世界歴史10 産業革命と民衆.河出書房新社,1975
2)George Jacob Holyoake:Self-help by the People, the History of the Rochdale Pioneers. Swan Sonnenschein & Co. London, 1893
3)宮部好広:生協法を考える.コープ出版,2004
4)日本生活協同組合連合会:協同組合の定義・価値・原則〜「協同組合のアイデンティティに関するICA声明」(日本生協連訳).https://jccu.coop/about/vision/ica.html
5)Beatrice Potter:Co-operative Movement in Great Britain. Geo. Allen & Unwin, London, 1891
6)野村秀和(編):生協21世紀への挑戦 日本型モデルの実験.大月書店,1992
7)2015年度全国生協組合員意識調査報告書 詳細版.日本生活協同組合連合会,2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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