文献詳細
特集 企業経営と公衆衛生の接点
文献概要
はじめに—公民協働ガバナンスとは
ガバナンス(governance)とはガバメント(government)に対する用語である.政府だけではなく,NPO(non-profit organization)や企業などの多様な主体が協力し合いながら公共問題を解決していく協治の形態を指している.
ガバナンスについては1990年代から多くの議論がなされており,大きくは「政府中心モデル」1)と「ネットワーク型モデル」2)に分けることができる.後者は政府の空洞化の議論に端を発しており,水平的ガバナンスを志向する.英国においては,超国家組織としてのEU(European Union)が出現したのに対して,自国内では分権化が進む中で中央政府が空洞化したという見方がある.それ以外の国においても,政府の財政的な問題,専門性の欠如,住民ニーズへの的確な対応において,実質的な空洞化が起きているという問題意識から議論がなされてきた.
ガバナンスモデルについては,水平的な関係性が強調される協働型(collaborative-G.)では,ネットワークモデルに近い形態が想定できる.ただし,その場合,誰がガバナンスのガバニングを担うのかといったメタガバナンスの議論が発生する3).
協働が水平的なネットワークモデルを志向していても,最終的なステアリング(かじ取り)は,民主的に選ばれた中央・地方の政府が中心とならざるを得ないということになる.ただし,それは,政府が一方的に上意下達の関係で他のセクターに指示・命令するということではない.それであれば,わざわざガバナンスという概念を持ち出す必要はなく,旧来のガバメントモデルと変わらないことになる.
本稿では,日本と同様に厳しい財政条件下における公民協働がみられる英国の事例を参照しながら,地域づくりにおける公民協働ガバナンスについて述べる.
ガバナンス(governance)とはガバメント(government)に対する用語である.政府だけではなく,NPO(non-profit organization)や企業などの多様な主体が協力し合いながら公共問題を解決していく協治の形態を指している.
ガバナンスについては1990年代から多くの議論がなされており,大きくは「政府中心モデル」1)と「ネットワーク型モデル」2)に分けることができる.後者は政府の空洞化の議論に端を発しており,水平的ガバナンスを志向する.英国においては,超国家組織としてのEU(European Union)が出現したのに対して,自国内では分権化が進む中で中央政府が空洞化したという見方がある.それ以外の国においても,政府の財政的な問題,専門性の欠如,住民ニーズへの的確な対応において,実質的な空洞化が起きているという問題意識から議論がなされてきた.
ガバナンスモデルについては,水平的な関係性が強調される協働型(collaborative-G.)では,ネットワークモデルに近い形態が想定できる.ただし,その場合,誰がガバナンスのガバニングを担うのかといったメタガバナンスの議論が発生する3).
協働が水平的なネットワークモデルを志向していても,最終的なステアリング(かじ取り)は,民主的に選ばれた中央・地方の政府が中心とならざるを得ないということになる.ただし,それは,政府が一方的に上意下達の関係で他のセクターに指示・命令するということではない.それであれば,わざわざガバナンスという概念を持ち出す必要はなく,旧来のガバメントモデルと変わらないことになる.
本稿では,日本と同様に厳しい財政条件下における公民協働がみられる英国の事例を参照しながら,地域づくりにおける公民協働ガバナンスについて述べる.
参考文献
1)Jon Pierre, et al(eds):Governance, Politics and the State. New York, St. Martin's Press, 2000
2)Rhodes RAW:Understanding Governance—Policy Networks, Governance, Reflexivity and Accountability. Buckingham, Open University Press, 1997
3)Jessop B:Multi-level Governance and Multi-level Metagovernance. in Ian Bache, et al(eds):Multi-Level Governance. Oxford, Oxford University Press, 2004
4)金川幸司:協働型ガバナンスとNPOイギリスのパートナーシップ政策を事例として.pp85-107,晃洋書房,2008
5)宮川公男,他:パブリック・ガバナンス—改革と戦略.pp.127-128,日本経済評論社,2002
6)横浜市:横浜市における市民活動との協働に関する基本方針(横浜コード).http://www.city.yokohama.lg.jp/shimin/tishin/jourei/sisin/code.html
7)小田切康彦,他:NPOとの協働における自治体職員の意識に関する研究.同志社政策科学研究9:91-102, 2007
8)小田切康彦:行政—市民間協働の効用 実証的接近.法律文化社,2014
9)白井絵里子:地域福祉の推進に向けて市民・NPOと自治体との「協働」において自治体に求められるもの—中央省庁の行政文書において「協働」が用いられる変遷を踏まえての考察.21世紀社会デザイン研究学会学会誌2:118-124, 2010
10)総務省:「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」の策定.http://www.soumu.go.jp/iken/100512_1.html
11)碓井光明:行政契約精義.信山社,p262, 2011
12)原田晃樹,他:NPO再構築への道.勁草書房,2010
13)金井利之:自治制度.pp82-83,東京大学出版会,2007
14)岸昭雄,他:「英国におけるSocial Value Actと公共調達.経営と情報29:1-9, 2017
15)金川幸司:公共ガバナンス論 サードセクター・住民自治・コミュニティ.晃陽書房,2018
16)GOV. UK:Guidance Neighbourhood planning. https://www.gov.uk/guidance/neighbourhood-planning--2
17)内閣官房・内閣府:みんなで育てる地域のチカラ 地方創生.https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/
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