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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生83巻5号

2019年05月発行

雑誌目次

特集 循環器疾患を予防する

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著者: 神田秀幸

ページ範囲:P.329 - P.329

 心疾患と脳血管疾患を合わせた広義の循環器疾患は,わが国において悪性新生物に次いで死亡者数が多く,依然として公衆衛生上の課題となっています.わが国では,脳血管疾患が死因のトップであった時代がありました.この対策として,健康教育,健康診断,早期発見・早期治療,医療の充実などが図られました.1982年に旧老人保健法が制定され,国民は広く健康教育や健康診断を受けられるようになり,結果として脳血管疾患死亡は大きく減少しました.高血圧症対策や減塩教育など,保健活動による取り組みの影響も大きいと考えられています.
 現在,循環器疾患のリスクは,高血圧症のみならず,糖尿病,脂質異常症,喫煙,肥満などマルチリスクの状態へと変化してきています.特定健診・特定保健指導が開始され,マルチリスクを有しやすい壮年期への公衆衛生活動が重要視されています.また,新しい展開として,家庭血圧管理や,循環器疾患予防を目的としたICT(information and communication technology)の活用など,循環器疾患予防の継続性や技術応用に期待が高まっています.地域健康づくり活動のあり方も,来るべき時代に応じた対応が求められています.

循環器疾患予防のこれまでとこれから—減塩〔塩(縁)切り〕に本腰を

著者: 上島弘嗣

ページ範囲:P.330 - P.336

はじめに
 脳卒中,心筋梗塞,心不全をはじめとした循環器疾患の予防の成否は,その危険因子に対する対策をいかに進めるかによる.かつて,わが国は世界で最も高い脳卒中死亡率を有していたが,国民の血圧値と高血圧の頻度の低下と軌を一にして低下した1).脳卒中が猛威を振るった1965年前後,その原因は疫学調査によって高血圧にあることが立証された.また,高血圧の主因は,国民の食塩摂取量の多いことであると考えられてきた1)
 脳卒中が激減した現在においても,高血圧対策は循環器疾患予防の柱であるのか,循環器疾患予防の歴史を振り返りながら,今後の減塩推進の重要性を考える.

特定健診・特定保健指導から見た循環器疾患予防の現状と課題

著者: 桑原和代 ,   岡村智教

ページ範囲:P.338 - P.343

はじめに
 メタボリックシンドロームは,もともと高LDLコレステロール血症を治療しても虚血性心疾患を発症させるのはどのような要因かという「残余リスク」探索の過程で提唱された疾患概念である1).わが国における診断基準は,内臓脂肪の蓄積を共通の要因として,血糖高値,脂質異常(低HDLコレステロール血症または高トリグリセライド血症),血圧高値を呈する病態と定義されている2).これは,それぞれが重複した場合は,虚血性心疾患や脳血管疾患などの発症リスクが高くなること,そして,内臓脂肪を減少させることで一度にこれら複数の危険因子が改善できるという考え方を基本としている.すなわち,2008年に特定健診・特定保健指導が導入される以前は,保健指導や健康教育は健診の付録のような位置付けであったのが,現在の健診はむしろ,特定保健指導のための階層化を行うためのツールとして位置付けられているのである.

大規模調査の結果にみる循環器疾患予防のこれから

著者: 東山綾

ページ範囲:P.344 - P.349

はじめに
 本稿では,わが国の大規模疫学調査における危険因子と循環器疾患の関連を総括し,危険因子の変遷を踏まえて,今後のわが国の循環器疾患予防を考えるうえで留意すべき点について述べる.

リスク因子の集積・メタボリックシンドロームと循環器疾患

著者: 久松隆史

ページ範囲:P.350 - P.355

はじめに
 循環器疾患の古典的なリスク因子である肥満,高血圧,糖尿病,脂質異常症が合併しやすいことは以前から知られていた.現在では,腹部肥満,特に内臓脂肪型肥満(インスリン抵抗性)を基盤として,血圧上昇,血糖高値,脂質異常が集積した病態が「メタボリックシンドローム」(metabolic syndrome)と定義されている1)〜3).肥満が原因となって,先述のリスク因子が軽度でも集積して存在すると循環器疾患リスクが高くなることが知られており,メタボリックシンドロームは循環器疾患の一次予防において重要な概念となっている.わが国では,欧米諸国と比較して肥満者割合が依然として低い一方で,肥満を伴わないリスク因子保有・集積者における循環器疾患リスクがメタボリックシンドローム有所見者のそれと同等か,それよりも高いことが報告されるなど4)〜7),非肥満者におけるリスク因子保有・集積の重要性が認識されている.
 本稿は,リスク因子の集積に焦点を当て,わが国の疫学研究成果を踏まえて循環器疾患への影響を検討する.さらに,循環器疾患一次予防に関する包括的なリスク評価と,公衆衛生上の対策について概説する.

循環器疾患予防を目的としたICTの活用

著者: 岩堀敏之

ページ範囲:P.356 - P.361

はじめに
 近年,情報通信技術(information and communication technology:ICT)の進化によって身近な情報の集積が容易になり,データの利活用が加速している.例えば,ネット通販などの商取引では日々,大量の購買情報が集積され,データ分析がなされている.これによって,顧客の属性に応じた「この商品を買った人はこんな商品も買っています」といったレコメンド(推奨)サービスなどが提供されるようになった.こうした身近な大量のデータを集積したビッグデータ(big data)の利活用は近年,ヘルスケアの分野にも波及してきている.例えば,家庭用の健康医療機器の情報は従来は機器内にとどまっていたが,個人の同意が得られたデータは匿名化処理がなされ,インターネットを介してビッグデータとして集積されている.これを公衆衛生の観点から循環器疾患の予防に役立てようとする動きが出始めてきている.
 本稿では,ヘルスケア分野におけるデータの利活用拡大が循環器疾患の予防に寄与してきた経緯を述べ,ICTの進化によって新たに分かってきた知見を紹介する.また,ICTのさらなる利活用による今後の展望について論じる.

循環器疾患と医療費—危険因子からの考察

著者: 中村幸志

ページ範囲:P.362 - P.366

はじめに
 高齢化,現代人の生活環境に起因する疾病構造の変化,医療の高度化などによって,わが国の国民医療費は年々増加している.2016年度の国民医療費は42兆1,381億円,人口一人当たりの医療費は332,000円であった1).循環器疾患(心疾患,脳卒中など)は国民医療費(ただし,医科診療医療費30兆1,853億円)の第一位の傷病として,その19.7%を占めていた.循環器疾患は,日本人の死因としてがんに次ぐ位置である重篤さのみならず,国民医療費への影響の大きさも考慮して取り組むべき公衆衛生の課題といえる.
 循環器疾患もがんも「生活習慣病」と称される疾病であり,さまざまな生活習慣がこれらの発生に寄与している.したがって,発生を防ぐ一次予防では生活習慣の修正が重視される.しかし,循環器疾患とがんの一次予防戦略で異なる点は,循環器疾患では血圧,血糖,血清脂質などの身体指標に着目することである.健康診査(以下,健診)でこれらを測定し,適正範囲から外れる値を呈する者(危険因子保有者=ハイリスク者)に対して個別に介入することが循環器疾患予防では一般的である.しかも,そのハイリスク者に対して生活習慣の修正を促すのみならず,長年にわたって薬物療法で管理していくことが珍しくない.このため,国民医療費低減を視野に入れて循環器疾患と医療費について論じる際,危険因子と医療費の観点から論じることが循環器疾患予防戦略と合致する.この基礎資料となるエビデンスは健診と診療報酬明細書(レセプト)のデータを活用することで得られるが,日本にこの類いのエビデンスはあまりない.
 本稿では,健診・レセプトデータ活用の先駆事例である「滋賀国保コホート研究」2)〜6)と「厚生労働科学研究」(特定健診・特定保健指導と医療費に関する研究班)7)の知見を概観し,循環器疾患危険因子と医療費について論じる.

島根県の循環器疾患対策の実際—脳卒中予防対策を中心にした取り組み

著者: 岡達郎 ,   牧野由美子

ページ範囲:P.368 - P.373

島根県における循環器疾患対策の歩み
 島根県(以下,当県)の循環器疾患対策は,保健所と市町村との連携による脳卒中予防対策を抜きには語れない.本稿では,その歩みを簡単に振り返り,また,今後の展望を述べる.

家庭血圧測定の意義と地域での取り組み—岩手県花巻市大迫町における30年の知見から

著者: 大久保孝義

ページ範囲:P.374 - P.379

はじめに
 血圧はかつて医師や看護師などが医療施設,検診会場などで測定するものであった.しかし,個人が家庭で測定する家庭血圧が,外来・健(検)診時に測定される,いわゆる「診察室血圧」よりも優れた臨床的価値を持つことが明らかとなっている.2014年に日本高血圧学会から出された「高血圧治療ガイドライン2014」(以下,JSH2014)1)には,高血圧の診断において診察室血圧と家庭血圧に較差がある場合,家庭血圧を優先することが世界で初めて明記された.その礎を築いたのが岩手県花巻市大迫(おおはさま)町における家庭血圧測定事業に基づく「大迫研究」2)3)の知見である.家庭血圧測定による住民の健康意識向上が,疾病の予防や早期発見にも極めて重要な役割を果たすことが明らかとなってきた.

循環器疾患予防を通した地域健康づくり活動

著者: 早川岳人

ページ範囲:P.380 - P.384

社会が健康を決める?
 「人の命は,生まれた時点で決まってしまう」と言ってしまうと,「えっ,本当?」と思われるかもしれない.世界保健機関(World Health Organization:WHO)が2008年に出版した「健康の社会的決定要因」に関する文書を以下に引用する.
 「今日生まれた乳児が,ある国では80歳以上まで生きる,と期待できるのに,別の国では45歳まで生きられないと予測される.同じ国の中であっても,地域の違いや文化の違い,所得の違い,教育を受けているかどうか,社会的支援やネットワークがあるかどうか,医療制度や福祉制度などの違いによって劇的に健康格差が生じる」1)

視点

和食を世界に認められる健康食にするには

著者: 辻雅善

ページ範囲:P.326 - P.327

公衆衛生学との出会い
 「健康について学びたい」,両親にそう告げて故郷を後にしたのを今でも覚えています.私の故郷は,福岡県の中央部に位置する田川市という人口5万人弱の小さな街です1).かつての筑豊最大の炭鉱都市であり,よく盆踊りで踊られる炭坑節の発症の地です.ちなみに私の誕生日は8月15日.ちょうど近所の公民館で炭坑節が鳴り響き,盆踊りの最中に産声を上げました.そう,まさに田川市の申し子です(どうでもいいよ! という声が聞こえてきます…).
 そんな私には,6つ下の妹と,2つ下の弟がいます.妹は小学校1年生のころ(1996年2月)に左卵巣未分化胚腫で入院・手術し,弟は中学1年生のころ(1997年4月)に松果体脳腫瘍で入院・手術をしました.妹と弟の立て続けの大きな病気は,平々凡々と日々を送っていた辻家の一大事件でした.この大事件が私の人生の転機となりました.「人はなんで病気になるのだろう?」「ずっと健康でいることはできないのか?」そんな思いが頭の中を巡りました.いつしか私は健康に興味を持つようになっていました.

連載 衛生行政キーワード・130

一次予防,二次予防,三次予防を含めた循環器病対策の現状と今後の取り組み

著者: 安井治代

ページ範囲:P.385 - P.389

はじめに
 心疾患は死因の第2位,脳血管疾患は第3位と,循環器病はわが国における死因の上位を占めている.また,心疾患と脳血管疾患を合わせると,その後遺症のため介護が必要となる原因疾患の第1位である.循環器病には,疾患予防や急性期から慢性期まで幅広い対策が重要である.
 本稿では,循環器病の一次予防,二次予防,三次予防を含めた現在までの対策を述べる.また,今後の取り組みについて,①「二十一世紀における第二次国民健康づくり運動〔健康日本21(第二次)〕」1),②循環器病の診療提供体制の検討,③「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」2)を中心に述べる.

睡眠と健康を考える・7

睡眠が労働に果たす役割

著者: 中田光紀 ,   頓所つく実

ページ範囲:P.390 - P.396

はじめに
 日本人は世界的に見ても睡眠時間が短い国民である.経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development:OECD)が発表した2018年のデータによれば,日本人の1日の平均睡眠時間は7時間22分と,参加30カ国中,最も短い.また,NHKが1960年から5年ごとに行っている「国民生活時間調査」では,日本人の睡眠時間は調査開始以来,一貫して短縮しており,時間にすれば平日は平均して毎年約40秒短くなっていることが示されている.睡眠時間を削って活動(労働)時間を長くすれば,生産性は向上し,競争社会の勝者となれるのだろうか.近年の睡眠科学による発見は,これまで信じられてきた「根性論」とは異なる結果を示している.睡眠をおろそかにすれば,睡眠不足や睡眠の質の低下が引き起こされ,日中の眠気の増加や疲労の蓄積が起こり,メンタルヘルス不調や生活習慣病の発症が加速化される.産業の現場では,集中力の低下による生産性の低下,労災,病欠やプレゼンティーズムの増加,企業の医療費の負担が増える.
 本稿では,働く人々の睡眠の実態を主に睡眠時間の観点から概観するとともに,睡眠と表裏一体にある労働との関係について解説する.そして,労働者の短時間睡眠や睡眠不足を解消するヒントを提示する.

リレー連載・列島ランナー・122

国民健康保険加入者への家庭訪問から見えたもの

著者: 和泉京子

ページ範囲:P.397 - P.400

国保加入者の健康と,保健医療福祉サービス利用の実態
 2008年に,公的医療保険の加入者全員に特定健康診査(以下,健診)の実施が義務付けられました.市町村が保険者となる国民健康保険(以下,国保)は,保険者の中でも加入者一人当たりの平均所得が低く,また,保険料負担率が高いこと1)と,特定健診受診率が低いこと2)が報告されています.
 健康に好ましくない生活習慣は所得に関係しているという報告があり3),また,所得・資産が低くなるほどより受診を控える傾向にあり,経済力により医療へのアクセスに「格差」が生じている実態も報告されています4).上述したような,所得が低い国保加入者の健康やサービスの受給の実態はどうなっているのでしょうか.筆者は,実態を踏まえた保健活動を模索する必要があるのではないかと考え,2011年当時に所属していた大学の所在地である大阪府羽曳野市と共同して,国保加入者で特定健診の対象となる2万人への調査に取り組みました5).健康実態について郵送で悉皆調査を行い,特定健診受診状況,医療費,介護給付費と突合しました.その結果,所得の低い方・経済的ゆとりのない方に①健診未受診が多いこと,②健診結果に問題のある方や,健康に好ましくない生活習慣・体調不良・自覚症状があるものの医療機関を受療する予定がない方の割合が多いことが分かりました.また,調査未回答者に所得の低い方,健診未受診,医療機関未受療の方の割合が多いことが明らかになりました5).また,調査の自由記載欄には
「これから先,病気になったときの医療費などを考えると心配が尽きません」
「市にサービスについて尋ねたいが,先立つもの(お金)がないので行かない.相談しにくい」
「健診を受けた後,市担当者から電話で再受診を要請されるが,受診には費用も掛かるし…」
などという経済面での意見が多く寄せられました.

ヘルスコミュニケーションと健康な社会づくりを考える Dr.エビーナの激レア欧州体験より・9

—外国人患者家族としてのスコットランド体験と学び・その6—首尾一貫感覚(SOC)の高い社会での療養生活

著者: 蝦名玲子

ページ範囲:P.402 - P.405

 前回まで,2017年のスコットランド旅行中に私の母が大腿骨を骨折し,人工股関節全置換術の手術を受けたことと,術後に肺血栓塞栓症を発症したことからフライトリスクを考慮し,退院後も首都のエディンバラ(人口約50万人強の街です)のホテルで3週間近く,療養生活を送ることになったことをリポートしてきました.今回は,その療養生活の様子についてです.

予防と臨床のはざまで

「きょうの健康」に出演

著者: 福田洋

ページ範囲:P.406 - P.406

 先日,NHK教育テレビ(Eテレ)の「きょうの健康」(2018年12月19日放送)に出演させていただきました.ここ数年,ヘルスリテラシーに取り組んでいる関係で,NHK,電通,日本医師会が推進する「日本健康マスター検定」に総合監修委員会の委員として関わっており,そのつながりでプロデューサーの方からお話をいただきました.
 今回のテーマは「まったなし! 働き方改革で労働者の健康を守る」.2019年4月の「働き方改革関連法」施行に合わせて,その趣旨や医学的エビデンス,企業としての対応について解説するという内容です.お話をいただいた当初は,産業衛生関係や法律関係にはるかに詳しい適任者がいるはず! とかたくなに出演をお断りしていました.しかし,「きょうの健康」が原則的に患者さんを診療している臨床医に出演を依頼することが多く,また,臨床医でかつ産業保健に詳しい人,ということで私に白羽の矢が立ったということでした.番組のプロデューサーには普段からお世話になっていることもあり,結局お引き受けすることになりました.

映画の時間

—だいじょうぶ.忘れることは,悲しいだけじゃない.—長いお別れ

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.407 - P.407

 遊園地のメリーゴーランドの前で,小さな女の子と係員がもめています.女の子は妹をメリーゴーランドに乗せてあげたいようですが,係員は「小さな子は大人と一緒でないと乗せられない,規則だから」と突き放します.少女は妹を乗せるために,一緒に乗ってくれそうな大人を探します.そこに,遊園地には場違いな風体の老人が現れます.老人はなぜか子ども用の雨傘を持っています…….
 今月ご紹介する「長いお別れ」のファーストシーンは原作に忠実です.観客は,この老人が主人公の一人である認知症気味の東昇平であることを,後で知ることになりますが,彼がなぜ遊園地に来たのか,なぜ雨傘を持っているのか,不思議に思いながら,映画に引き込まれていきます.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.325 - P.325

書評 フリーアクセス

ページ範囲:P.367 - P.367

書評 フリーアクセス

ページ範囲:P.401 - P.401

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.409 - P.409

あとがき/投稿申し込み書/著作財産権譲渡同意書 フリーアクセス

著者: 石原美千代

ページ範囲:P.410 - P.410

 本号の特集企画「循環器疾患を予防する」は,公衆衛生関係者にとって身近で,そして,とても付き合いの長いテーマと言えます.
 上島弘嗣先生に解説していただいたように,「わが国の年齢調整脳卒中死亡率は1965年を頂点に下降に転じ,1990年までに約80%も低下」し,「年齢調整虚血性心疾患死亡率は1970年に頂点に達した後下降」しています.それでもなお,循環器疾患は2000年に始まった「健康日本21」において9分野の1つに取り上げられ,「健康日本21(第二次)」においても主要な生活習慣病として目標値が設定されています.「公衆衛生上の対策の効果は,その危険因子がどの程度疾病を増加させるか,また,その危険因子が集団の中でどの程度まん延しているかによってリスク因子の低下や除去の疾病減少効果を予測できる」,これは当たり前のことですが,私たち公衆衛生関係者は,あらためて喫煙対策と高血圧対策の重要性を認識する必要があると思います.現在が「マルチリスク時代」であっても,たばこと「塩(縁)切り」が極めて重要な課題であることに変わりはないでしょう.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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