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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生83巻5号

2019年05月発行

文献概要

連載 睡眠と健康を考える・7

睡眠が労働に果たす役割

著者: 中田光紀1 頓所つく実2

所属機関: 1国際医療福祉大学大学院医学研究科公衆衛生学専攻 2国際医療福祉大学大学院医学研究科公衆衛生学博士課程

ページ範囲:P.390 - P.396

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はじめに
 日本人は世界的に見ても睡眠時間が短い国民である.経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development:OECD)が発表した2018年のデータによれば,日本人の1日の平均睡眠時間は7時間22分と,参加30カ国中,最も短い.また,NHKが1960年から5年ごとに行っている「国民生活時間調査」では,日本人の睡眠時間は調査開始以来,一貫して短縮しており,時間にすれば平日は平均して毎年約40秒短くなっていることが示されている.睡眠時間を削って活動(労働)時間を長くすれば,生産性は向上し,競争社会の勝者となれるのだろうか.近年の睡眠科学による発見は,これまで信じられてきた「根性論」とは異なる結果を示している.睡眠をおろそかにすれば,睡眠不足や睡眠の質の低下が引き起こされ,日中の眠気の増加や疲労の蓄積が起こり,メンタルヘルス不調や生活習慣病の発症が加速化される.産業の現場では,集中力の低下による生産性の低下,労災,病欠やプレゼンティーズムの増加,企業の医療費の負担が増える.
 本稿では,働く人々の睡眠の実態を主に睡眠時間の観点から概観するとともに,睡眠と表裏一体にある労働との関係について解説する.そして,労働者の短時間睡眠や睡眠不足を解消するヒントを提示する.

参考文献

1)NHK放送文化研究所:2015年国民生活時間調査報告書.https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20160217_1.pdf
2)総務省統計局:平成28年社会生活基本調査.https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/index.html
3)OECD:Society at a glance 2009. https://www.oecd-ilibrary.org/social-issues-migration-health/society-at-a-glance-2009_soc_glance-2008-en
4)Nakata A:Work hours, sleep sufficiency, and prevalence of depression among full-time employees:a community-based cross-sectional study. J Clin Psychiatry 72:605-614, 2011
5)Watanabe K, et al:Working hours and the onset of depressive disorder:a systematic review and meta-analysis. Occup Environ Med 73:877-884, 2016
6)Nakata A:Effects of long work hours and poor sleep characteristics on workplace injury among full-time male employees of small-and medium-scale businesses. J Sleep Res 20:576-584, 2011
7)Islam Z, et al:Association of social jetlag with metabolic syndrome among Japanese working population:the Furukawa Nutrition and Health Study. Sleep Med 51:53-58, 2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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