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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生83巻5号

2019年05月発行

文献概要

連載 リレー連載・列島ランナー・122

国民健康保険加入者への家庭訪問から見えたもの

著者: 和泉京子1

所属機関: 1武庫川女子大学看護学部

ページ範囲:P.397 - P.400

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国保加入者の健康と,保健医療福祉サービス利用の実態
 2008年に,公的医療保険の加入者全員に特定健康診査(以下,健診)の実施が義務付けられました.市町村が保険者となる国民健康保険(以下,国保)は,保険者の中でも加入者一人当たりの平均所得が低く,また,保険料負担率が高いこと1)と,特定健診受診率が低いこと2)が報告されています.
 健康に好ましくない生活習慣は所得に関係しているという報告があり3),また,所得・資産が低くなるほどより受診を控える傾向にあり,経済力により医療へのアクセスに「格差」が生じている実態も報告されています4).上述したような,所得が低い国保加入者の健康やサービスの受給の実態はどうなっているのでしょうか.筆者は,実態を踏まえた保健活動を模索する必要があるのではないかと考え,2011年当時に所属していた大学の所在地である大阪府羽曳野市と共同して,国保加入者で特定健診の対象となる2万人への調査に取り組みました5).健康実態について郵送で悉皆調査を行い,特定健診受診状況,医療費,介護給付費と突合しました.その結果,所得の低い方・経済的ゆとりのない方に①健診未受診が多いこと,②健診結果に問題のある方や,健康に好ましくない生活習慣・体調不良・自覚症状があるものの医療機関を受療する予定がない方の割合が多いことが分かりました.また,調査未回答者に所得の低い方,健診未受診,医療機関未受療の方の割合が多いことが明らかになりました5).また,調査の自由記載欄には
「これから先,病気になったときの医療費などを考えると心配が尽きません」
「市にサービスについて尋ねたいが,先立つもの(お金)がないので行かない.相談しにくい」
「健診を受けた後,市担当者から電話で再受診を要請されるが,受診には費用も掛かるし…」
などという経済面での意見が多く寄せられました.

参考文献

1)厚生労働省:我が国の医療保険について.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html
2)厚生労働省:2016年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況.https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000173038_00001.html
3)生活習慣・転倒歴.近藤克則:検証「健康格差社会」 介護予防に向けた社会疫学的大規模調査.pp21-27,医学書院,2007
4)日本医療政策機構:日本の医療に関する2008年世論調査.https://hgpi.org/wp-content/uploads/2009-12-14_34_275989.pdf
5)和泉京子:健康格差をふまえた国民健康保険加入者の壮年期から高齢期の継続的な支援方略の開発.科学研究費助成事業 研究成果報告書.2013 https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22592560/
6)和泉京子:低所得未受療国保健診未受診者の家庭訪問での実態把握とKDBシステムによる訪問評価.科学研究費助成事業 研究成果報告書.2018 https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K11908/
7)日本学術会議:提言 わが国の健康の社会格差の現状理解とその改善に向けて.http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-t133-7.pdf
8)田上豊資:「生活習慣病」から「生活環境病」へのパラダイム・シフト.保健師ジャーナル68:677-685, 2012
9)健康格差の何が問題か.近藤尚己:健康格差対策の進め方 効果をもたらす5つの視点.pp2-12,医学書院,2016
10)平野かよ子:公衆衛生を基盤とする保健師活動.保健の科学48:164-168, 2006
11)丸山博:死児をして叫ばしめよ.pp206-224,農山漁村文化協会.1989
12)厚生省健康政策局計画課(監修):ふみしめて50年 保健師活動の歴史.pp4-8,日本公衆衛生協会,1993
13)新潟県保健師活動研究会:保健師が行う家庭訪問.pp3-16,やどかり出版,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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