公衆衛生83巻6号

2019年06月発行

特集 学校における子どもの健康課題

児童生徒の喫煙・飲酒防止教育

著者： 尾﨑米厚¹

所属機関： ¹鳥取大学医学部社会学講座環境予防医学分野

ページ範囲：P.448 - P.453

喫煙・飲酒防止教育の根拠
　文部省(当時)による「喫煙防止教育等の推進について」¹⁾という体育局学校健康教育課長通知(1995年)では，「学校における喫煙防止教育等の推進」を求めている．これは，厚生省(当時)から文部省に対してなされた要請を受けたものであり，公衆衛生審議会から意見具申された「たばこ行動計画検討会報告書」において，①未成年者の喫煙を防止するための教育を学校，地域，家庭において積極的に推進すべきこと，②学校などの公共の場においては，利用者に対する教育上の格段の配慮が必要とされることから，禁煙原則に立脚した対策を確立すべきこと，などが指摘されていることによる．
　未成年者の薬物乱用の中で最も重要なものに喫煙と飲酒がある．未成年のうちからの喫煙開始は生涯喫煙年数および喫煙量を多くするため，成人になってからの健康影響も大きい．未成年で喫煙を開始した者は，より重症のニコチン依存に陥りやすく，その後，喫煙中止することも少なく，喫煙をやめようとしても成功率が低いことが報告されている²⁾．未成年者に対する喫煙防止教育の医学的根拠はこれである．

参考文献

1)文部科学省：喫煙防止教育等の推進について．http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19950525001/t19950525001.html

2)簑輪眞澄，尾﨑米厚：若年における喫煙開始がもたらす悪影響．保健医療科54:262-277, 2005

3)衆議院：第154回国会　厚生労働委員会　第13号(平成14年5月17日(金曜日))．http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/009715420020517013.htm

4)文部科学省：学校環境衛生管理マニュアル　「学校環境衛生基準」の理論と実践　［平成30年度改訂版］．http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/07/31/1292465_01.pdf

5)文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課長：学校等における受動喫煙防止対策及び喫煙防止教育の推進について．https://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/kyoiku02/m-magazine/h22/documents/906_5_1.pdf　上記の資料の一部に通知が掲載されている．

6)文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課：学校における受動喫煙防止対策実施状況調査について．https://www.gakkohoken.jp/files/theme/yakubutu/H17judokitsuen.pdf

7)文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課：平成29年度受動喫煙防止対策実施状況調査の結果について．http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/__icsFiles/afieldfile/2018/03/28/1402885_1.pdf

8)飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究班(研究代表者：尾崎米厚)：飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究　平成29年度総括・分担研究報告書．2018　https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201709021A

9)尾崎米厚：第7回飲酒と健康に関する講演会　わが国の中高生及び若者のアルコール使用の実態と課題．アルコール健康医学協会，2017

10)嶋根卓也：学校保健における健康課題　飲酒・喫煙・薬物乱用．小児診療79:1657-1663, 2016．

11)嶋根卓也：思春期の薬物乱用の現状と課題．思春期学28:267-272, 2010

12)Guo L, et al:Association between problematic Internet use, sleep disturbance, and suicidal behavior in Chinese adolescents. J Behav Addict 7:965-975, 2018