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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生83巻6号

2019年06月発行

文献概要

特集 学校における子どもの健康課題

学校における歯科保健対策

著者: 有田憲司1

所属機関: 1大阪歯科大学歯学部小児歯科学講座

ページ範囲:P.460 - P.465

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はじめに
 わが国では,かつて人類が経験したことがない超少子高齢・人口減少社会が進行中であり,現在の小学生の半数は100歳以上生きるという推定さえある1).そのような未来に向けて,「健康日本21(第二次)」2)では第一の目標として「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を掲げている.最近の研究では,口腔の健康は全身の健康に関与していることが多数報告されている3)〜5).2011年には「歯科口腔保健の推進に関係する法律」6)も施行され,口腔の健康づくり対策が重要視されてきた.
 生涯にわたる健康づくりにおいて,保護者などによって管理される「他律的健康づくり」から,自らの意志や行動による「自律的健康づくり」へと移行していく大切な転換期に当たるのが学齢期である.したがって,学校における口腔の健康づくりを含む健康教育が一生の健康づくりを決定するといっても過言ではない.
 近年の社会環境の変化に伴い,子どもの日常生活習慣にも変化がみられる.学校歯科保健には,従来の歯や歯科疾患に対する局所的対応ではなく,子どもの健康そのものを広く考え,生活習慣や家庭環境あるいは保健教育などに対する積極的な支援が要求されるようになってきた.その流れにおいて,2015年に日本学校歯科医会の「学校歯科医の活動指針」7)が改訂された.学校歯科保健の目標は,子どもが自律的に口腔の健康を考え,その意義を理解し,卒業後も自己管理と定期的な専門的管理を自発的に行える児童生徒を育成することであるといえる.また,口腔の健全な発育は,う蝕,歯周疾患,歯列不正・咬合異常など疾病・異常があると障害されるため,学校における歯科健康診断(以下,学校健診)は,これら疾病・異常の早期発見を主な目的としている.
 公衆衛生の分野においても,口腔の健康は「健康日本21(第二次)」2)に加え,「健やか親子21」でも取り上げられている重要な課題の一つである.本稿では公衆衛生関係者の知っておくべき「歯および口腔の健康」について概説する.

参考文献

1)Gratton L, et al:The 100-Year Life. pp15-26, Bloomsbury Publishing Plc, London, 2016
2)厚生労働省:二十一世紀における第二次国民健康づくり.https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_01.pdf
3)Grossi SG, et al:Periodontal disease and diabetes mellitus:a two-way relationship. Ann Periodontol 3:51-61, 1998
4)Saito T, et al:Metabolic disorders related to obesity and periodontal disease. Periodontol 2000 43:254-266, 2007
5)Cullinan MP, et al:Periodontal disease and systemic health:current status. Aust Dent J 54 Suppl 1:S62-9, 2009
6)平成23年8月10日官報 歯科口腔保健の推進に関する法律.https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/shikakoukuuhoken/dl/01.pdf
7)日本学校歯科医会:学校歯科医の活動指針 平成27年度改訂版.pp36-37,日本学校歯科医会,2015
8)日本小児歯科学会:日本人小児における乳歯・永久歯の萌出に関する調査研究.小児歯誌26:1-18, 1988
9)山崎要一,他:日本人小児の永久歯先天欠如に関する疫学調査.小児歯誌48:29-39, 2010
10)厚生労働省:平成28年度歯科疾患実態調査.http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-02.pdf
Splieth CH:Revolutions in Pediatric Dentistry, pp11-20, Quintessence, London, 2011
12)全国保険医団体連合会地域医療対策部:学校歯科治療調査「中間報告」.https://hodanren.doc-net.or.jp/news/tyousa/180607_gakkosika.pdf
13)8020推進財団:第2回 永久歯の抜歯原因調査.https://www.8020zaidan.or.jp/pdf/document-tooth-extraction-investigation-2nd.pdf
14)須佐美隆三,他:不正咬合の発現に関する疫学的研究(1)不正咬合の発現頻度—概要.日矯歯会誌30:221-229, 1971
15)ライオン株式会社:日本・アメリカ・スウェーデン 3カ国のオーラルケア意識調査Vol.1.https://www.lion.co.jp/ja/company/press/2014/pdf/2014023.pdf
16)田中光郎:小児の定期的歯科チェックアップの国際比較.小児歯誌54:16-21, 2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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