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特集 新型たばこ—健康影響と規制のあり方
加熱式たばこの呼吸器への影響
著者: 瀬山邦明1
所属機関: 1順天堂大学大学院医学研究科呼吸器内科学
ページ範囲:P.584 - P.589
文献購入ページに移動たばこを吸わない非喫煙者にとって,紙巻きたばこの先から立ち上る紫煙や喫煙者が吐き出す呼出煙(両者を併せて副流煙と呼ぶ)は刺激性,異臭性があり,とても迷惑なものである.たばこの煙には粒子成分で約4,300種類,ガス成分が約1,000種類,合計5,300種類以上の化学物質が含まれており,そのうち発がん性物質は約70種類である1).しかも,副流煙中には,喫煙者が吸い込むたばこの煙(主流煙)より,発がん性物質やニコチン,一酸化炭素などの有害物質が数倍も多く含まれることが明らかにされている.つまり,たばこは喫煙者本人だけでなく,受動喫煙によって周囲の人々にも健康への悪影響を及ぼすのである.
最近,煙の出ない,あるいは煙の見えにくいたばこ製品として非燃焼・加熱式たばこ(以下,加熱式たばこ)が次々と販売されており,これらは,従来のたばこより害が少ないと宣伝されている.そのため,今まで禁煙だった公共の場でも吸える「紙巻きたばこの代替品」のように考える者もいる.しかし,本当にそうだろうか.加熱式たばこが販売されているのは主に日本だけであるが,海外ではニコチンを含有する溶液(リキッド)を加熱して蒸気(エアロゾル)を発生させて吸う電子たばこ(e-cigarette)が主に普及している.加熱式たばこ,電子たばこともに,その使用と病気や死亡リスクとの関連性についての科学的証拠が得られるまでには,今後,10年以上の長期間を要すると見込まれている.エビデンスのない状況下で,どのように加熱式たばこを認識し対応するのかが今,問題となっている.
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