icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生84巻12号

2020年12月発行

文献概要

連載 リレー連載・列島ランナー・141

ネット依存の回復支援 民間による支援サービス「MIRA-i」の取り組み

著者: 森山沙耶1

所属機関: 1株式会社KENZANネット・ゲーム依存回復支援サービス「MIRA-i」

ページ範囲:P.819 - P.822

文献購入ページに移動
はじめに
 インターネットは1990年代から普及し始め,現在オンラインゲームや動画,SNS等インターネットを介したさまざまなサービスを多くの人が利用している.総務省発表の通信利用動向調査によると,2018年のインターネット利用率は79.8%に上る1).新型コロナウイルス感染症拡大に伴い,テレワークやオンライン学習の導入が進む中,インターネットは人々の生活に深く浸透している.
 一方で,インターネットを過剰に使用し,日常生活に支障が出ているにもかかわらず自分でコントロールできなくなる,いわゆる「インターネット依存(以下,ネット依存)」が社会問題化している.2017年の厚生労働省研究班の調査では,病的なネット依存が疑われる中高生は7人に1人(約93万人)に上ることが推計され2),特に青少年を中心に広がっている.中でもオンラインゲームの使用が多く,国立病院機構久里浜医療センターが2019年に実施した10〜29歳の全国調査の結果では,平日に4時間以上ゲームをしている人の割合は約10%に上り,12%が休日に6時間以上ゲームをしていることが分かった3)
 世界保健機構(WHO)は,2022年1月から施行される「国際疾病分類の第11版(ICD-11)」に,「ゲーム障害(Gaming disorder)」を新たな依存症として加える方針を示した4).疾病認定により,ネット依存の実態把握と治療法の進展への期待がますます高まるものと予測される.
 しかし,ネット依存を専門的に扱う医療機関や相談機関は全国的にまだ少なく,遠方で受診が難しい,予約が取れない,予約が取れても期間が空いてしまう,といったケースを耳にする.ネット依存の問題を抱える本人やその家族が気軽に相談でき,すぐに適切な支援を受けられる体制づくりが急務といえる.一方,依存症を不安視するあまり家族が本人のネット使用を厳しくコントロールしたり,本人を過度に責めたりなど,ネット依存に関する誤解や偏見も生じており,正しい知識を広めていくことも併せて必要である.
 このような背景の下,筆者が所属する株式会社KENZANでは,2019年10月からネット依存に専門特化した回復支援サービス「MIRA-i(ミライ)」の提供を開始した.MIRA-iでは,ネット依存に関する正しい知識を社会に発信しながら,誰もが相談しやすいサービスを目指している.
 筆者は,当サービスの立ち上げから心理師として活動している.本稿では,MIRA-iの取り組みとそこで得た経験を紹介し,今後の展開について述べる.

参考文献

1)総務省:通信利用動向調査.https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html
2)尾﨑米厚,他:飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究.厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)平成29年度 総括・分担研究報告書,2018年5月 https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201709021A
3)依存症対策全国センター/国立病院機構久里浜医療センター:ネット・ゲーム使用と生活習慣についてのアンケート結果.2019年11月 https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document17.pdf
4)World Health Organization:Gaming disodar, 2018 https://www.who.int/news-room/q-a-detail/gaming-disorder/
5)Young KS:Treatment outcomes using CBT-IA with Internet-addicted patients. J Behav Addict 2:209-215, 2013
6)吉田精次,他:依存症使用障害者の家族に対するCRAFTの実績報告.行動療法研究41:205-214, 2015
7)ジェーン・エレン・スミス,他(著),境 泉洋,他(監訳):CRAFT依存症患者への治療動機づけ—家族と治療者のためのプログラムとマニュアル.pp32-35,金剛出版,2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら