icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生84巻12号

2020年12月発行

文献概要

連載 今さら知らないといえない 科学技術イノベーション—iPS,AIを説明できますか・7

ロボット介護機器とそれを取り巻く課題

著者: 中田はる佳1

所属機関: 1国立がん研究センター社会と健康研究センター生命倫理・医事法研究部

ページ範囲:P.823 - P.826

文献購入ページに移動
ロボット技術と介護
 近年,さまざまな場面で「ロボット」と呼ばれるものを目にするようになった.例えば,床掃除用の「ロボット掃除機」や,犬の形状をした「ペットロボット」など,家庭内にも導入されている.医療・介護などの分野でも「ロボット」の導入や普及が進められており,本稿では特に介護ロボットに関連する課題を概観する.
 まず「ロボット」とはどのようなものを指すのか確認しておこう.厚生労働省によれば,「ロボット」の定義は「3つの要素技術を有する,知能化したシステム」とされる1).3つの要素技術とは,情報を感知するセンサー系,判断する知能・制御系,動作する駆動系を指す.このロボット技術が応用され,利用者の自立支援や介護者の負担軽減に役立つ介護機器が「介護ロボット(ロボット介護機器)」である.例えば,介助者が移乗を行う際のパワーアシスト(動作における力の補助)や,高齢者などが外出した際に,荷物を安全に運べる歩行アシストカート,認知症の方の見守りのためのセンサーなどが挙げられる.また,ロボット開発当初の目的が介護利用ではなかったとしても,介護に活用した場合はロボット介護機器に含むと考えられている2).これらの例からも分かるように,介護ロボットは介護をする側(介護者)に対する支援と,介護を受ける側(被介護者)に対する支援との両方を対象としている.被介護者の自立を促すことに加えて,被介護者にとってより効果的な介護になること,また,介護者の負担を軽減することが目的とされる.

参考文献

1)厚生労働省:介護ロボットの開発・普及の促進.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000209634.html
2)AMEDロボット介護機器開発・導入促進事業 基準策定評価コンソーシアム:ロボット介護機器開発ガイドブック.2018年3月 http://robotcare.jp/jp/outcomes/index.php
3)e-Gov:医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律.https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=335AC0000000145#20
4)首相官邸:ロボット革命実現会議 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/robot/
5)日本経済再生本部:ロボット新戦略.2015年2月10日 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/robot/pdf/senryaku.pdf
6)首相官邸:未来投資戦略2017.2017年6月29日 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/miraitousi2017_t.pdf
7)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所:介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム.2020年7月 https://www.kaigo-pf.com/
8)内閣府:介護ロボットに関する特別世論調査.2013年9月 https://survey.gov-online.go.jp/tokubetu/h25/h25-kaigo.pdf
9)公益財団法人介護労働安定センター:事業所における介護労働実態調査.2020年8月 http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2020r02_chousa_jigyousho_chousahyou.pdf
10)恋水諄源,他:介護ロボットのELSIを巡る日本の現状とその背景に関する考察.医療生命倫理社会14:45-51, 2017
11)文部科学省,厚生労働省:人を対象とする医学系研究に関する倫理指針.2014年12月22日(2017年2月28日一部改正) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijinkanboukouseikagakuka/0000153339.pdf (※本指針は現在見直し作業中であり「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」と名称変更される見込みである)
12)厚生労働省:2040年を展望した社会保障・働き方改革本部のとりまとめについて.2019年5月29日 https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000513520.pdf

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら