公衆衛生85巻12号

2021年12月発行

特集 健康問題の解決のための経済学—ナッジ等の可能性を探る

新型コロナ病床確保をめぐる不条理—医療機関のダイナミック・ケイパビリティとデジタル化

著者： 菊澤研宗¹

所属機関： ¹慶應義塾大学商学部

ページ範囲：P.836 - P.840

【ポイント】
◆日本の病床数は世界一であるが，新型コロナ患者の病床数を十分確保できないという矛盾が発生した．
◆それは社会的には非効率で非倫理的であったが，病院にとっては合理的な行動であった．
◆この不条理を回避し，ダイナミック・ケイパビリティを強化するには業界のデジタル化が必要である．

参考文献

1)渡辺さちこ，他：医療崩壊の真実．エムディエヌ・コーポレーション，2020

2)川崎将寛：新型コロナウイルス感染症に対応した病床確保の取組．立法と調査 427:32-46, 2020

3)NHK：なぜ進まない　新型コロナの病床確保(時論公論)．2021年6月22日　https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/451233.html

4)厚生労働省：新型コロナウイルス感染症の院内感染によりクラスターが発生した医療機関等への財政的な支援及び医師・看護師等派遣の支援について．令和2年2月14日　https://www.mhlw.go.jp/content/000705182.pdf

5)Teece DJ，菊澤研宗，他(訳):D. J.ティース ダイナミック・ケイパビリティの企業理論(A Dynamic Capabilities-based Entrepreneurial Theory)．中央経済社，2019

6)Teece DJ:The Foundations of Enterprise Performance:Dynamic and Ordinary Capabilities in an(Economic)Theory of Firms. Academy of Management Perspective 28:328-352, 2014

7)菊澤研宗：成功する日本企業には共通の本質がある—ダイナミック・ケイパビリティの経営学．朝日新聞出版，2019

8)Teece DJ:A Dynamic Capabilities-Based Entrepreneurial Theory of the Multinational Enterprise. Journal of International Business Studies 45:8-37, 2014

9)菊澤研宗：組織の不条理—日本軍の失敗に学ぶ．中央公論新社，2017

10)朝日新聞デジタル：集中治療ベッド，至急1万2千床増　ドイツになぜできた．https://www.asahi.com/articles/ASN571TN7N55UHBI02Y.html

11)厚生労働省：資料編：諸外国における医療提供体制について．https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/005_3.pdf