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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生85巻12号

2021年12月発行

文献概要

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著者: 高鳥毛敏雄

所属機関:

ページ範囲:P.872 - P.872

 近代社会は,市民に対する国家の介入と抑圧をできるだけ少なくするように形成されてきました.公衆衛生制度は,その近代社会の中で産み出されたものです.その近代社会の幕開けをアダム・スミスが理論付けたのではないかと思っています.スミスは,政府が市民生活の内部に立ち入り,社会の経済活動に介入しない方が社会の繁栄につながるとしました(「自由放任主義」).この考え方は公衆衛生制度の誕生にも影響しています.スミスは,近代経済学の祖とされていますが,その経済学の世界からナッジ理論の考え方がでてきたのは当然なのかもしれません.
 COVID-19の感染拡大を止めるために,国民の行動抑制を法律で強く規制し,罰金・罰則を科すべきとの議論がありました.しかし,緊急事態宣言が発令されたものの,政府は強い法的措置を講ずることなく,国民や事業者に,「手洗い・マスクをする」「三密を避ける」「室内の換気に努める」などの要請で対処してきました.公衆衛生課題に対しては,社会を構成している人々が一丸となって対応することが大切であるという,公衆衛生の原点を確認させられた思いです.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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