公衆衛生85巻2号

2021年02月発行

連載 今さら知らないといえない 科学技術イノベーション—iPS，AIを説明できますか・9

AIの時代

著者： 大岡忠生¹

所属機関： ¹山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座

ページ範囲：P.115 - P.120

はじめに
　近年，人工知能(Artificial Intelligence:AI)が高い注目を浴び，さまざまな領域へ活躍の場を広げている．医療の世界でも，2016年にIBM社の開発したAI「ワトソン」が，膨大な論文データをもとに白血病のタイプを判定し，患者の診断に貢献したことは記憶に新しい．しかし，そのようなニュースをよく耳にする一方，AIがどのようなもので，医療現場や医学研究で今どのように活用されているのかを説明できる人は少ないだろう．本稿では，AIに関連した用語や背景の説明とともに，医療現場や研究領域におけるAI活用の現状，そして実際の活用例を示し，最後にAIがどのような可能性や課題を持つのかについて概説する．

参考文献

1)McCarthy J, et al:A Proposal for the Dartmouth Summer Research Project on Artificial Intelligence, August 31, 1955. AI Magagine 27:12-14, 2006

2)松尾豊：人工知能は人間を超えるか—ディープラーニングの先にあるもの．p61, KADOKAWA, 2015

3)Hinton GE, et al:Reducing the dimensionality of data with neural networks. Science 313:504-507, 2006

4)厚生労働省：保健医療2035提言書．2015年6月　https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000088647.pdf

5)厚生労働省：保健医療分野におけるAI活用推進懇談会 報告書．2017年6月　https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000169230.pdf

6)厚生労働省：第6回 データヘルス改革推進本部 資料．2019年9月　https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000545973.pdf

7)内閣府：戦略的イノベーション創造プログラム AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム 研究開発計画．2020年5月　https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/keikaku2/10_aihospital.pdf

8)広島大学：AIを用いてリスク予測やターゲティングを行う保健指導システムの構築．https://aipom.hiroshima-u.ac.jp/

9)NECソリューションイノベータ株式会社：NEC健康結果予測シミュレーション．https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sl/healthcheckup_sim/index.html

10)人工知能研究開発ネットワーク(AI Japan R ＆ D Network)：新型コロナウイルス感染症対策に係るAIを活用した取組．https://www.ai-japan.go.jp/COVID19

11)Weeramanthri TS, et al:Editorial:Precision Public Health. Front Public Health 6:121, 2018

12)大岡忠生，他：人工知能技術を活用した2型糖尿病のリスク予測手法の検証と疾患予測因子の探索．日本公衆衛生学会総会抄録集 第78回，p210, 2019

13)Kawakami E, et al:Application of artificial intelligence for preoperative diagnostic and prognostic prediction in epithelial ovarian cancer based on blood biomarkers. Clin Cancer Res 25:3006-3015, 2019

14)内田満夫，他：産業保健におけるDeep Learningの活用：物流企業の職場巡視画像を用いたパイロット研究．産業衛生学雑誌 60:191-195, 2018