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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生85巻3号

2021年03月発行

文献概要

連載 クライシス・緊急事態リスクコミュニケーション・1【新連載】

リスクコミュニケーション:平時と緊急時との相違点

著者: 蝦名玲子

所属機関:

ページ範囲:P.186 - P.189

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はじめに
 中国湖北省武漢市で突如発生し,2020年3月には,パンデミックへと発展した新型コロナウイルス感染症(COVID-19).この感染症のウイルスの性質も管理方法も分からない緊急事態に対応するために,わが国でも政府の諮問的な役割を担う専門家会議が構成され,その科学的知見についての迅速な情報発信が行われていた.専門家による透明性の高い情報提供がなされていた一方で,体制がないなかでのコミュニケーションは課題を生じさせることになり,発足から約半年後に廃止され,新たな会議体が設置されることになった.そこで重視された一つが,リスクコミュニケーションである.
 多くの国々で,ヘルスコミュニケーションやリスクコミュニケーションの専門家が行政機関に配置されており,公衆衛生上の緊急事態が発生したときには,対策本部会議で決まった内容をただ伝えるのではなく,戦略的に一貫性のある情報を伝え,混乱をさせないように工夫している.
 ところが,わが国にはそうした体制がないため,緊急事態への対応者が,その対応の合間に,住民や関係者への説明をはじめとするコミュニケーションを担うことになる.緊急時は,人々の恐怖や不安,不満や不信感が高まりやすいため,コミュニケーション戦略もなく,収集した情報や対策本部会議で決定した内容を伝えているだけだと,情報提供しているのに,誤解や批判の矢面に立たされることになりかねない.
 そこで,本連載では,緊急事態対応を担う公衆衛生関係者が適切なコミュニケーションがとれるようになるために知っておきたいポイントを解説していく.
 さて,平時に実施される「リスクコミュニケーション」と,緊急時に実施される「クライシス・緊急事態リスクコミュニケーション」とでは,同じ「リスクコミュニケーション」という言葉が使われていても全く異なる.そこで今月号では,両者の違いをまず説明しよう.

参考文献

1)WHO:Novel Coronavirus-China. Disease outbreak news. 2020年1月12日.https://www.who.int/csr/don/12-january-2020-novel-coronavirus-china/en/
2)Coronavirus COVID-19 Global Cases by Johns Hopkins CSSE. https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6
3)厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年3月5日版).https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09993.html
4)蝦名玲子:クライシス・緊急事態リスクコミュニケーション(CERC)—危機下において人々の命と健康を守るための原則と戦略.大修館書店,2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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