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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生85巻5号

2021年05月発行

文献概要

投稿・資料

感染症流行時の市民の「責務」や差別の問題を「コロナ条例」から考える

著者: 井上悠輔1 大隈楽2

所属機関: 1東京大学医科学研究所公共政策研究分野 2京都大学文学部

ページ範囲:P.347 - P.353

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はじめに
 感染症法1)では「国民の責務」に関する規定がある.すなわち,「国民は,感染症に関する正しい知識を持ち,その予防に必要な注意を払うよう努めるとともに,感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならない.」(第4条)である.これを踏まえつつも,地方自治体において,現在の新型コロナウイルス感染症の流行に接して,住民(都道府県民,市町村民)の役割や責務を独自に規定する条例2)の公布が増えている.条例には,国の明示的委任によるものもあれば,その地域の実情に応じた取り組みを志向するものまで,いくつかの分類が可能である2).新型コロナウイルス感染症のように,各地で多様かつ予測困難な事態を引き起こす状況について,現場に近い自治体による自治立法の展開にも注目すべきであろう.
 本稿ではこうした規定の主な内容を整理して紹介し,考察を加えた.

参考文献

1)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律.平成10年法律第114号
2)宇賀克也:「認知的先導性」.地方自治法概説,第8版.p229,有斐閣,2019
3)地方自治研究機構:ホームページ.http://www.rilg.or.jp/htdocs/index.html
4)条例Web作成プロジェクト:条例Webアーカイブデータベース.https://jorei.slis.doshisha.ac.jp/
5)鹿児島大学司法政策教育研究センター:全国条例データベース(eLen). https://elen.ls.kagoshima-u.ac.jp/
6)新型インフルエンザ等対策特別措置法.平成24年法律第31号
7)朝日新聞:名古屋市,条例案を提出へ 新型コロナ感染疑い「自宅待機」,企業の努力義務.2020年3月4日
8)北海道新聞電子版:感染対策条例検討へ 道議会で知事が表明,2020年9月11日 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/459258
9)厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部:新型コロナウイルス感染症が発生した場合における情報の公表について.事務連絡,令和2年7月28日
10)内閣官房:偏見・差別の実態と取り組み等に関する調査結果(三重県知事 鈴木英敬).新型インフルエンザ等対策有識者会議・新型コロナウイルス感染症対策分科会・偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループ(第3回)資料.2020年10月 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/wg_h_3_6.pdf
11)読売新聞:コロナ差別 条例で防ぐ 「恐れるべきはウイルス」 20自治体制定.2020年11月14日
12)無らい県運動研究会:ハンセン病絶対隔離政策と日本社会—無らい県運動の研究.六花出版,2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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