公衆衛生86巻1号

2022年01月発行

連載 川崎市総合リハビリテーション推進センター発　インクルーシブな社会を実現させるために地方自治体ができること・1【新連載】

川崎市地域リハビリテーション発展の歴史とその思想

著者： 竹島正¹ 野木岳¹ 左近志保¹

所属機関： ¹川崎市総合リハビリテーション推進センター

ページ範囲：P.68 - P.75

本連載に当たって
　川崎市は、神奈川県の北東部にあり、多摩川を挟んで東京都と隣接した、細長い地形をしています。1924年に人口約48,000人で誕生し、工場の誘致により工業都市として急速に発展しましたが、第二次世界大戦の空襲によって焦土化します。戦後は、京浜工業地帯の中核として再び発展を遂げますが、同時に深刻な公害と大気汚染が発生し、「公害の街 川崎」と呼ばれます。しかし、市民福祉の充実と新しい都市環境づくりへの努力を積み重ねつつ、1972年には札幌市、福岡市とともに政令指定都市となりました。現在の人口は154万人です。多様性や自由が、川崎の新しい未来への可能性につながるとして、ブランドメッセージ「Colors, Future!　いろいろって、未来。」を掲げ、「最幸のまち」となることを目指しています^1）2）。
　障害児者のリハビリテーションについては、後述するように、障害の種別を超えた地域リハビリテーション体制の構築に取り組んできました。2021年4月には、官民複合施設「川崎市複合福祉センターふくふく」の中に川崎市総合リハビリテーション推進センター（以下、総合リハ推進センター）を開設しました（図1）。「ふくふく」という名称は、福祉・幸福・福寿などの「福」が持つ優しい響きから付けられたものです。

参考文献

1）川崎市：川崎市史通史編4上．川崎市，1997

2）川崎市：川崎市公式ウエブサイト．　https://www.city.kawasaki.jp/index.html（2021年10月25日閲覧）

3）岡部健，他：川崎市地域包括ケアシステムにおける地域リハビリテーションの展開．国立障害者リハビリテーションセンター研究所紀要 38: 2017　http://www.rehab.go.jp/kiyou/japanese/38th/38-02.pdf（2021年10月25日閲覧）

4）反町誠，他：川崎市リハビリテーション医療センターの設立経過と活動の実態に関する研究．山梨県立大学人間福祉学部紀要 6: 77-84, 2011

5）第1著者は，2018年11月30日，2018年12月12日の2回「川崎市の精神保健の歴史から学び，これからを考える会」を開催し，川崎市社会復帰医療センターの設立当時のことを知る川崎市元職員から話を聞いた．そのときに提供された資料に「川崎市衛生局40年史」のコピーや参加者によって作成されたと思われる年表などがあり，それらを参照した．

6）竹島正，他：川崎市社会復帰医療センターの誕生とその後の展開．日本精神衛生会（編）：図説 日本の精神保健運動の歩み 改訂増補版．pp 153-154，日本精神衛生会，2018

7）川崎市精神衛生相談センター：地域対策としてのリハビリテーション—私たちはこう考える—．1970

8）白野明，他：在宅重度障害者に対するリハビリテーションサービス—身体障害者更生相談所からのアプローチ—．総合リハビリテーション 9: 713-719, 1981

9）川崎市リハビリテーションシステム基本構想委員会：川崎市における総合的な地域リハビリテーションシステム構想について．リハビリテーションシステム基本構想草案検討報告書．財団法人川崎市身体障害者協会，1999

10）厚生労働省：地域共生社会の実現に向けて．　https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00506.html（2021年10月25日閲覧）

11）川崎市健康福祉局障害保健福祉部：地域リハビリテーションセンターガイドライン．2016

12）竹島正，他：日常生活の課題を有する事例への対応—地域リハビリテーションの視点から—．精神科 39: 656-662, 2021

13）マヤ・トーマス：CBRからCBIDへ．pp 4-5，日本障害者リハビリテーション協会，2019