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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生86巻1号

2022年01月発行

文献概要

投稿・原著

韓国における人工授精および生殖補助医療の公費負担状況—保険適用の背景と影響に関する訪問調査

著者: 前田恵理1 石原理2 左勝則2 李廷秀3 小林廉毅4

所属機関: 1秋田大学大学院医学系研究科衛生学・公衆衛生学講座 2埼玉医科大学産科婦人科 3東京医療保健大学医療保健学研究科 4東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学

ページ範囲:P.84 - P.90

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目的
 わが国では晩婚化・晩産化に伴い、不妊治療へのニーズは高まっている。日本産科婦人科学会によれば、年間約57,000人が生殖補助医療*1によって誕生1)したと報告されている。
 わが国では従来から、不妊の原因検索のための検査と、その原因に対して有効性・安全性などが確立した手術療法および薬物療法については公的医療保険の対象とされてきたが、明らかな不妊原因を認めない、いわゆる原因不明不妊に対しても行われる人工授精*2や生殖補助医療は保険適用の対象とされてこなかった2)。実際には、これらの治療法は原因不明不妊を含む不妊症全般に対して、世界的にもすでに有効性・安全性が確立し3)4)広く実施されているが、特に生殖補助医療は治療費用が高額で、1周期当たり(卵巣刺激、採卵およびその後の胚移植含む)50万円程度にのぼることが報告されている5)6)

参考文献

1)日本産科婦人科学会:令和元年度倫理委員会 登録・調査小委員会報告.日産婦誌 72: 1229-1249, 2020
2)中央社会保険医療協議会総会(第478回):不妊治療の実態調査の結果について(総-16参考).令和3年4月14日 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000768685.pdf(2021年10月15日閲覧)
3)The official website of Nobel Prize: Press Release 2010-10-04 The Nobel Assembly at Karolinska Institutet has today decided to award The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2010 to Robert G. Edwards for the development of in vitro fertilization. 2010 https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2010/press-release/(2021年10月15日閲覧)
4)Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine: Evidence-based treatments for couples with unexplained infertility: a guideline. Fertil Steril 113: 305-322, 2020
5)小林廉毅,他:全国115実施主体における「不妊に悩む方への特定治療支援事業」実施状況の調査.「不妊に悩む方への特定治療支援事業」のあり方に関する医療政策的研究(平成30年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)分担研究報告書).2019 https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2018/182011/201807010A_upload/201807010A0004.pdf(2021年11月9日閲覧)
6)野村総合研究所:令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 不妊治療の実態に関する調査研究 最終報告書.2021 https://www.mhlw.go.jp/content/000766912.pdf(2021年11月9日閲覧)
7)Keane M, et al: Assisted reproductive technologies: International approaches to public funding mechanisms and criteria. An evidence review. Health Research Board, Ireland, 2017 https://assets.gov.ie/13367/791187172ae6499997a6b5146438b6a9.pdf(2021年11月9日閲覧)
8)石原理,他:諸外国における生殖補助医療公費負担制度の検討:韓国の不妊治療支援.「不妊に悩む方への特定治療支援事業」のあり方に関する医療政策的研究(令和元年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)分担研究報告書).2020 https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/192011/201907008A_upload/201907008A0006.pdf(2021年11月9日閲覧)
9)野村総合研究所:諸外国における不妊治療に対する経済的支援等に関する調査研究 報告書.2021 https://www.mhlw.go.jp/content/000775178.pdf(2021年11月9日閲覧)
10)大韓民国保健福祉部,健康保険審査評価院:2019년 1차난임시술의료기관평가결과(2018년진료분)(2019年一次難妊施術医療機関評価結果(2018年診療分)).2020年7月 http://www.hira.or.kr/re/diag/asmWrptPopup.do?evlCd=36&pgmid=HIRAA030004000000(2021年10月15日閲覧)
11)서민지(ソミンジ):난임급여화,모두에게도움안되는정책?(難妊保険適用は誰の役にも立たない政策か?)Medical Observer. 2015年2月23日 http://www.monews.co.kr/news/articleView.html?idxno=80833(2021年10月15日閲覧)
12)Chambers GM, et al: The impact of consumer affordability on access to assisted reproductive technologies and embryo transfer practices: an international analysis. Fertil Steril 101: 191-198. e4, 2014
13)金明中,他:韓国における少子化の現状とその対策.海外社会保障研究 160: 111-129, 2007
14)Adamson GD, et al: International Committee for Monitoring Assisted Reproductive Technology: world report on assisted reproductive technology, 2011. Fertil Steril 110: 1067-1080, 2018
15)Bai F, et al: Assisted reproductive technology service availability, efficacy and safety in mainland China: 2016. Hum Reprod 35: 446-452, 2020
16)건강보험심사평가원(健康保険審査評価院):병원평가정보(病院の評価情報), http://www.hira.or.kr/re/diag/getDiagEvlList.do(2021年10月15日閲覧)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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