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公衆衛生86巻10号

2022年10月発行

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特集 認知症施策up to date

Editorial—今月号の特集について フリーアクセス

著者: 阿彦忠之

ページ範囲:P.815 - P.815

 本誌では、厚生労働省の認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン:2013年度〜)の開始後間もない2014年に「認知症のケア」という特集が組まれました。その後、厚生労働省に関係省庁も加わった戦略として、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン:2015年〜)が開始され、さらに2019年6月には、首相官邸に設置された認知症施策推進関係閣僚会議が、第3ステージの戦略ともいえる「認知症施策推進大綱」(以下、大綱)を取りまとめました。この大綱では、認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症の人や家族の視点を重視しながら「共生」と「予防」を車の両輪として施策を推進するとしています。
 そこで本号の特集では、大綱に基づき強化された認知症施策に焦点を当て、関連する研究や実践プロジェクトの最新情報および重要施策の課題などについて、各分野の専門の先生方から解説していただきました。

地域疫学研究の成果から見た認知症リスク低減の可能性—久山町研究

著者: 二宮利治

ページ範囲:P.816 - P.824

ポイント
◆久山町研究の成績では、高血圧、糖尿病などの生活習慣病や喫煙、食事、運動などのライフスタイルが認知症発症に関係していた。
◆久山町研究の追跡調査の成果を基に、認知症発症予測のリスクスコアを作成した。
◆認知症の発症リスク低減には、さまざまな危険因子に対する包括的な管理が重要であることが示唆される。

学際的な認知症予防プロジェクト—神戸大学の取り組み

著者: 古和久朋

ページ範囲:P.825 - P.833

ポイント
◆認知症予防に関するエビデンスが徐々に蓄積しつつあり、わが国では現在J-MINT研究が進行中である。
◆神戸大学では認知症予防の社会実装を目指してコグニケア活動を展開中である。
◆今後は認知症発症リスクをもつ高齢者のスクリーニングや認知症を発症した高齢者への診断システムの整備が重要である。

認知症疾患修飾薬の開発と普及に向けた課題と展望

著者: 新美芳樹 ,   岩坪威

ページ範囲:P.834 - P.841

ポイント
◆アルツハイマー病の治療薬として病態に直接作用するような疾患修飾薬の開発が待ち望まれており、開発が進められてきた。
◆現在、アルツハイマー病の発症前の早期に当たるプレクリニカル期、プロドローマル期をターゲットとした疾患修飾薬の開発が進んでいる。
◆コスト、対象者の同定、病態を反映するサロゲートマーカーなどが課題として考えられる。

認知症の血液バイオマーカーへの期待と課題

著者: 池内健

ページ範囲:P.842 - P.850

ポイント
◆認知症の新しい診断ツールとして、脳内病理変化を反映する血液バイオマーカーの開発が進んでいる。
◆汎用性が高い血液バイオマーカーは、認知症診療の枠組みを変革する可能性がある。
◆認知症の血液バイオマーカーは、倫理面に配慮しながら適正に使用することが望まれる。

若年性認知症の有病率・生活実態調査の結果を踏まえた今後の施策づくりの方向性

著者: 粟田主一

ページ範囲:P.852 - P.859

ポイント
◆わが国の若年性認知症有病率は18〜64歳人口10万対50.9人、有病者数は3.57万人であり、診断名別ではアルツハイマー型認知症が最も多い。
◆「診断を行える医療機関の整備と周知」「質の高い診断後支援」「職域と保健医療福祉分野との連携による就労継続支援」「経済状況のアセスメントと社会保障制度の利用支援」「人材育成」は喫緊の課題である。
◆当事者参画によるニーズに合ったサービスの開発とインフォーマルサポートの普及が今後の課題となるであろう。

認知症疾患別 生活行為の障害とリハビリテーション—認知症リハビリテーションの進歩と作業療法士への期待

著者: 堀田牧 ,   池田学

ページ範囲:P.860 - P.869

ポイント
◆認知症患者における生活行為の障害は認知症疾患別に特徴があり、基本的な疾患特性を理解した評価が必要である。
◆生活行為の評価は「できる/できない」の二者択一ではなく、自立しない原因を探究することに意義がある。
◆作業療法士による自宅訪問は、生活行為に関する生活環境全体が評価対象となるため、環境調整による生活行為の改善が期待できる。

多職種連携による認知症初期集中支援—その効果と課題

著者: 武田章敬

ページ範囲:P.870 - P.878

ポイント
◆認知症初期集中支援チームは認知症の人や家族を訪問し、評価・支援を行い、必要な医療・介護サービスにつなげる。
◆チームの介入により認知症の行動・心理症状を軽減したり、医療・介護サービスにつながるなどの効果を認める。
◆地域包括支援センターとの役割分担、対象者の選定、チーム・事業の評価等の課題がある。

認知症の行動・心理症状(BPSD)の予防と治療の方針—ウェブサイトで蓄積された知見も活用しながら

著者: 藤戸良子 ,   永倉和季 ,   上村直人 ,   數井裕光

ページ範囲:P.879 - P.885

ポイント
◆認知症の行動・心理症状(BPSD)の予防と治療の基本は非薬物療法である。
◆家族・介護者への疾患教育が、BPSDへの適切な対応の第一歩となる。
◆奏効率の高いBPSD対応法を公開しているウェブサイト「認知症ちえのわnet」も活用可能である。

連載 日本の災害と公衆衛生—過去・現在・未来・0【新連載】

連載「日本の災害と公衆衛生——過去・現在・未来」についての紹介

著者: 安村誠司

ページ範囲:P.886 - P.888

災害とは、「暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。」(災害対策基本法)と定義されています。本連載では自然災害から人為的災害である原子力災害までを視野に、「過去の災害事例に学び」、「現在の災害に対応し」、「未来の災害に備える」ことへとつながる公衆衛生実践に役立つ内容をお届けします。

衛生行政キーワード・144

第8次医療計画で検討される課題

著者: 松本千寿

ページ範囲:P.889 - P.891

はじめに
 医療計画は、地域の医療提供体制の確保を図るために都道府県が作成する計画であり、国はその基本方針を策定する。現在は2018(平成30)年からの第7次医療計画の計画期間中である(2023〔令和5〕年度までの6年間)。計画期間の最終年度である2023(令和5)年度に都道府県が次期医療計画(第8次医療計画)を策定できるよう、現在、国において第8次医療計画に向けた検討会(第8次医療計画等に関する検討会)が実施されている。これまでの医療計画の基本的な枠組みを維持しつつ、近年の法改正や新型コロナウイルス感染症の対応状況を踏まえる必要があり、ここでは医療計画の概要と次期医療計画の策定に向けて検討が必要な課題について述べたい。

患者さんに「寄り添って」話を聴くってどういうこと?・5

がん告知後に患者さんの反応がない—患者心理・解離について

著者: 清水研

ページ範囲:P.892 - P.897

(今回の登場人物)
清水先生
がん患者とその家族のケア(精神腫瘍学)を専門とする精神科医。心理的な問題に関するコンサルタントとして、担当医や看護師など他の医療者が困るケースの相談も積極的に受けるようにしている。

映画の時間

—香港が誇る七人の監督が、香港の“美しい瞬間”を、全編35mmフィルムで撮った響き合う七つの物語。—七人樂隊

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.898 - P.898

 オムニバス映画というと、『黄色いロールスロイス』(1964年・イギリス)のように、黄色いロールスロイスがつぐむ物語を一人の監督が描いていく作品もあれば、『四つの恋の物語』(1947年・東宝)のように、複数の監督が一つのテーマについて映像化する作品もあります。『四つの恋の物語』では、豊田四郎、成瀬巳喜男、山本嘉次郎、衣笠貞之助という巨匠たちの作品を1本の映画で見られるのでかなりお得(?)な感じです(なんと黒澤明が脚本を担当する作品もあります)。
 今月ご紹介する『七人樂隊』は、香港映画界を代表する7人の監督の7作品が楽しめる、大変お得な映画です。

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ページ範囲:P.813 - P.813

次号予告 フリーアクセス

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奥付 フリーアクセス

ページ範囲:P.904 - P.904

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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