映画の時間
—自分の足で歩く旅。—歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡
著者:
桜山豊夫
所属機関:
ページ範囲:P.653 - P.653
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ブルース・チャトウィンは、わが国ではあまり知られていませんが、海外ではかなり評価の高い作家です。1940年にイギリスで生まれ、世界的に有名なオークション会社であるサザビーズに18歳で入社、美術鑑定士として頭角を現すものの、待遇に満足できずに退社します。本作でも触れられていますが、彼は子どもの頃から考古学や先史時代に興味を持っており、エディンバラ大学で考古学を学び、サンデータイムズの契約社員になって、ジャーナリストとして活躍します。あふれる好奇心と才能に恵まれた彼は、世界中を見て歩き、1977年に小説『パタゴニア』を発表して作家としてデビューし、高い評価を受けます。その後、80年に『ウイダーの副王』、82年に『黒ヶ丘の上で』、87年に『ソングライン』、88年に『ウッツ男爵』と5作の長編小説を、89年には短編集『どうして僕はこんなところに』を発表し、同年にHIVにより他界します。
彗星のように現れて、人生を駆け抜けたチャトウィンは、「孤高の旅人」あるいは「旅する貴公子」とも呼ばれています。多くの著名人とも親交があったようですが、その中の1人であるヴェルナー・ヘルツォーク監督が制作したドキュメンタリー『歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡』を今月はご紹介します。