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公衆衛生86巻8号

2022年08月発行

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特集 検疫所と地方衛生研究所—さあ、表舞台へ

Editorial—今月号の特集について フリーアクセス

著者: 曽根智史

ページ範囲:P.661 - P.661

 世界中、日本中を巻き込んだ新型コロナウイルス感染症のパンデミックもようやく収束に向かいつつあり、引き続き感染対策に取り組みながらも、平常の国民生活に戻ろうとする動きが活発になっています。この2年半、保健所や医療機関とともに対策の最前線に立って国民の生命と健康を守ってきた機関に、検疫所と地方衛生研究所があります。
 検疫所は、国の機関として検疫法に基づき、海外からの感染症の流入防止に大きな役割を果たしていますが、海外から帰国した際に検疫ブースで係官を見かける以外は、実際にどのような業務を行っているのかについては、あまり知られていませんでした。しかし、2009(平成21)年の新型インフルエンザ(H1N1)の流行の際に注目され、また今回の新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおいては、武漢からの帰国者対応、ダイヤモンドプリンセス号対応、その後の帰国者・入国者対応においてその役割が大きな注目を集め、頻繁に報道もされています。本特集の前半では、検疫法と検疫所の業務、過去の感染症対応、新型コロナウイルス感染症対応の実際などについて、検疫所長をはじめとする執筆者によって、詳細に述べていただきました。

〈検疫所編〉

検疫所とその業務

著者: 奥村二郎

ページ範囲:P.662 - P.667

ポイント
◆ペストやコレラに始まり、近年は、新型インフルエンザ、エボラ出血熱、デング熱、COVID-19などに対する検疫が行われている。
◆検疫所は、明治以来、横浜、神戸、長崎など全国の海港・空港に設置され、健康監視など自治体とも連携している。
◆検疫所では、海港検疫、航空検疫のほか輸入食品の審査・検査、農林水産省の動物検疫や植物防疫も行っている。

過去の感染症対応の経験から学ぶこと

著者: 垣本和宏

ページ範囲:P.668 - P.675

ポイント
◆近年の世界人口の急増や開発、気候変動により、新たな感染症の世界的流行のリスクは高くなっている。
◆日本の検疫方法は時代とともに変化したが、今の時代でも隔離や停留が基本になっている。
◆その時代の最新技術を活用して、交通の制限等を最低限にできる検疫方法が求められる。

新型コロナウイルス感染症の検疫対応とその特徴

著者: 柏樹悦郎

ページ範囲:P.676 - P.682

ポイント
◆新型コロナウイルス感染症の検疫対応では、2009年の新型インフルエンザと比較して、極めて長期の検疫対応となった。
◆入国者全員に対する検査の実施や自宅等での待機要請、公共交通機関の不使用要請など数多くの新しい対応が取られた。
◆宿泊施設を多数借り上げ、陽性者、待機者の対応を行うなど、これまでにない大規模な対応が取られた。

〈地方衛生研究所編〉

地方衛生研究所の概要—歴史的経緯、特徴、課題

著者: 四宮博人

ページ範囲:P.683 - P.690

ポイント
◆地方衛生研究所は自治体に連結して設置された保健衛生業務の科学的かつ技術的中核を担う公的機関である。
◆地方衛生研究所は1948(昭和23)年に厚生省(当時)が通知した「地方衛生研究所に関する設置要綱」により整備された。
◆近年の公衆衛生行政では科学的根拠が強く求められており、地方衛生研究所の果たす役割はますます重要になってきている。

COVID-19対策における地方衛生研究所の業務の実際

著者: 貞升健志 ,   吉村和久

ページ範囲:P.691 - P.698

ポイント
◆COVID-19検査は全国の地方衛生研究所で2020年1月に始まった。
◆2020年3月以降、東京都では民間検査施設等におけるCOVID-19検査数が増加しており、民間検査施設等への協力としては、検査に関する助言や外部精度管理等を実施している。
◆2020年12月以降、アルファ株等の変異株の出現により、変異株のモニタリングや地方衛生研究所のレファレンス機能に基づく業務が多くなった。

地方衛生研究所における研究活動と人材育成

著者: 髙崎智彦

ページ範囲:P.699 - P.705

ポイント
◆地方衛生研究所は、各地域における科学技術的中核機関としての役割も期待されている。
◆人材育成や研究活動の活性化のためには、実地研修、大学や研究所との共同研究など連携が必要である。
◆自治体の昇進の現状を鑑みて、技術職用の評価を含んだ異動基準を策定するなど安定的な人事の仕組みを作る必要がある。

地方衛生研究所の新しい流れ

著者: 調恒明

ページ範囲:P.706 - P.713

ポイント
◆地方衛生研究所が新型コロナウイルス感染症対策において果たした役割について述べる。
◆地方衛生研究所には人材育成、自治体間格差の是正、環境分野との協働等の課題がある。
◆新型コロナウイルス感染症を契機に地方衛生研究所の法制化が実現することを期待する。

特別企画 積極的疫学調査から見た新型コロナウイルスの感染特性

新型コロナウイルス対策における積極的疫学調査の意義と限界

著者: 田中英夫

ページ範囲:P.714 - P.717

ポイント
◆積極的疫学調査の意義は、a.ウイルス侵入最初期での封じ込め、b.感染拡大期における感染拡大抑止、c.感染対策の評価指標のモニタリング、d.潜伏期間等の予防対策に必須となる情報の同定、と整理される。
◆aとbの対策の効果は、感染力の強さ、潜伏期間、その時点の罹患数と人的資源とのバランス等で規定され、新型コロナウイルスでは効果とコストのバランスシートが次第に悪化した。
◆新型コロナウイルスのように変異株が短期間で置き換わり流行を繰り返すウイルスに対して、dを遂行するためには、正確な調査結果を短時間で出せる体制を整備する必要がある。

積極的疫学調査から分かった潜伏期間などの時刻の差

著者: 緒方剛

ページ範囲:P.718 - P.721

ポイント
◆保健所の積極的疫学調査のデータを整理することにより、潜伏期間、発症間隔、診断の遅れなど時刻の差の観測値が得られる。
◆変異株によって、潜伏期間、発症間隔、感染可能期間などが短縮してきており、自宅待機期間や隔離期間などに反映されている。
◆初期には検査数不足などによる診断の遅れによって、感染者数が増加した可能性がある。

積極的疫学調査から分かった変異株の感染力

著者: 高橋佑紀

ページ範囲:P.722 - P.724

ポイント
◆新型コロナウイルスにおいて異なる変異株の感染力を評価・比較することは公衆衛生学的に重要である。
◆国内の保健所では複数の変異株の家庭内感染率を算出し、感染力の評価が行われた。
◆感染力の評価は、感染成立の3要素(①病原体(感染源)、②感染経路、③宿主(免疫))を考慮して対象と方法を設定する。

連載 衛生行政キーワード・143

オンライン診療の経緯と展望

著者: 瀧翔哉

ページ範囲:P.727 - P.729

はじめに
 近年の情報通信技術の発展およびパソコン・スマートフォンの普及を背景として、外来受診の一形態として、オンライン診療が活用されるようになってきた。また、新型コロナウイルス感染症の流行により、医師と患者がじかに接する必要のない診察方法としてもオンライン診療が注目され、利用された。オンライン診療に関する制度の変遷および今後の展望について概説する。

患者さんに「寄り添って」話を聴くってどういうこと?・4

死の話題とどう向き合うか—— まだ死にたくないんです!

著者: 清水研

ページ範囲:P.730 - P.735

(今回の登場人物)
清水先生
がん患者とその家族のケア(精神腫瘍学)を専門とする精神科医。心理的な問題に関するコンサルタントとして、担当医や看護師など他の医療者が困るケースの相談も積極的に受けるようにしている。

映画の時間

—猫がいる、一つ屋根の下。僕に家族が出来ました ———。—劇場版 ねこ物件

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.736 - P.736

 主人公は30歳、独身の二星優斗(古川雄輝)。クロとチャーの2匹の愛猫と暮らしています。子どもの頃に両親は亡くなっており、唯一の肉親であった祖父・幸三(竜雷太)が残してくれた家を利用して始めた「猫付きシェアハウス・二星ハイツ」のオーナーです。このシェアハウスには弁護士志望の修(細田佳央太)、俳優志望の毅(上村海成)、プロボクサーを目指す丈(本田剛文)、そして台湾からの留学生ファン(松大航也)の4人が同居していました。4人は、それぞれの夢を実現すべく、次のステージへ進むために巣立っていき、広い一軒家には、優斗と猫だけになりました。
 以前から猫付きシェアハウスの世話をしてきた不動産屋の社員・有美(長井短)は、4人が引っ越した後の優斗を気遣って、新たな入居者を募集してシェアハウスを再開してはどうかと提案しますが、優斗はあまり興味を示しません。再開に消極的な優斗でしたが、祖父・幸三の残した手紙に書かれていた、あることを思い出し、急にシェハウスの住人募集に乗り出します……。

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ページ範囲:P.659 - P.659

次号予告 フリーアクセス

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奥付 フリーアクセス

ページ範囲:P.740 - P.740

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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