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公衆衛生86巻9号

2022年09月発行

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特集 コロナで変わる健康教育とヘルスプロモーション

Editorial—今月号の特集について フリーアクセス

著者: 福田洋

ページ範囲:P.743 - P.743

 新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)は世界中の人々の生活や働き方、規範や行動を大きく変化させました。発生から2年余りが過ぎ、現在はある程度落ち着きを見せていますが、当初、新聞、テレビ、インターネットは毎日COVID-19の話題でもちきりとなり、SNSでは専門家の意見やマスメディアの報道だけでなく、罹患者の生の声や恐怖を感じる市民の叫びであふれていました。これほど長期にわたり、国民の関心がただ一つの健康トピックに集中したことは現代では初めてのことだったのではないでしょうか。デマの拡散や、情報過多によるコロナ疲れ、長期化する自粛や度重なる緊急事態宣言で、人の行動変容の難しさも指摘されました。もともと感染症予防は、健康教育やヘルスプロモーションの重要なターゲットであり、近年では新型インフルエンザの経験もありましたが、今回のCOVID-19の対応は、その規模、スピード感ともに異次元のレベルであり、国や行政、医療現場は難しいリスクコミュニケーションが求められました。
 地域、職域、学校、国際など健康教育やヘルスプロモーションのそれぞれのフィールドにも大きな変化が起きました。集団や個人に対する対面を中心とした平時の手法や介入は困難となり、外出自粛やフィジカルディスタンスの要請によりICTを活用した非対面の健康教育やヘルスプロモーションが一気に進みました。感染対策の最前線となった保健所、経済活動と感染予防の両立を強いられた企業、急激なオンライン授業への転換を余儀なくされた学校、貧困レベルや健康格差拡大が危惧された国際保健の現場など、エビデンスやガイドラインなどが不足する中、それぞれの現場では走りながら感染対策とヘルスプロモーションの両面の工夫を続けてきたといえます。オンラインでの授業や健康教育、テレワークの推進によるオフィス環境の変化、在宅勤務中の作業環境管理や作業管理、アプリによる遠隔の体調管理や専門家による面談、人々の新しいヘルスコミュニケーションの活性化など、ウィズコロナが定着しつつある今こそ、新しい健康教育やヘルスプロモーションの可能性について考える機会ではないでしょうか。

市民と協働する新型コロナ対策

著者: 和田耕治

ページ範囲:P.744 - P.749

ポイント
◆リスク認識をバランスよく浸透させるのは難しい。大きなリスクが小さく、また、小さなリスクが大きくみられるバイアスがある。
◆感染対策して日常生活でリスクの高い場面を「引き算」する対策から、できることを増やす「足し算」の対策ができるようにする必要がある。
◆それぞれの感染対策に効果があるのか、その対策で目の前の対策ができても何か大切なことを見失っていないか、といった振り返りも必要。

コロナ禍における医療情報—捉え方と発信の仕方

著者: 忽那賢志

ページ範囲:P.750 - P.755

ポイント
◆COVID-19の流行下において無数の医療情報が氾濫した。
◆プレプリントでの重要な論文が臨床現場のプラクティスを変えることがあり、これまで以上に読む側の力量が試される。
◆日本には感染症のリスクコミュニケーションの専門家が不足していることが課題である。

ポスト・コロナの行動変容—教えるコミュニケーションから、感じさせるコミュニケーションへ

著者: 奥原剛

ページ範囲:P.756 - P.765

ポイント
◆受け手の抵抗を誘発する「メッセージ疲労」を回避するために、メッセージのレパートリーを増やす必要がある。
◆メッセージのレパートリーを増やすために、「教えるだけのコミュニケーション」から脱却し、「感じさせるコミュニケーション」を加える必要がある。
◆体験談などのナラティブなメッセージや、健康行動の「感情的決定因子」や人の「根源的欲求」に訴えるメッセージなどを加えるとよい。

地域におけるCOVID-19対応と健康教育・ヘルスプロモーション

著者: 藤内修二

ページ範囲:P.766 - P.773

ポイント
◆オミクロン株への対応において、感染拡大防止の意義が薄れ、保健所職員のモチベーションの低下にもつながっている。
◆感染拡大防止と社会経済活動の両立にはCOVID-19についてのリスクコミュニケーションが重要。
◆コロナ禍で人と人との絆の大切さが再認識され、住民組織活動もさまざまな工夫をしながら展開されている。

企業の新型コロナ対応と産業保健活動・職域ヘルスプロモーションの変化

著者: 福田洋

ページ範囲:P.774 - P.782

ポイント
◆新型コロナと職域の関わりは早く、経済活動と感染予防の両立のエビデンスや経験が不足する中、良好実践を共有し議論することが有用であった。
◆産業保健のオンライン化が進み、在宅勤務の健康影響も踏まえて、ニューノーマルでの職域ヘルスプロモーションが望まれる。
◆職域は共通した生産活動やインフラ整備、ICTに慣れている働き盛り世代が多いため、デジタルヘルスプロモーションに親和性が高い。

学校におけるCOVID-19対応と健康教育の変化

著者: 高橋浩之

ページ範囲:P.783 - P.790

ポイント
◆社会全体がCOVID-19により大きな影響を受けたが、学校でも子どもたちの学習、生活の仕方、健康など多岐にわたる影響が生じた。
◆COVID-19のまん延に対して、学校における健康教育でもさまざまな対応が行われた。
◆COVID-19により求められている健康教育の変化は、教育全体に求められている変化と一致している。

ミャンマーの公衆衛生におけるレジリエントコミュニティの必要性—暴力とCOVID-19パンデミックによる打撃を緩和するために

著者: ,   ,  

ページ範囲:P.791 - P.799

ポイント
◆国際的な健康教育とヘルスプロ—モーションの一例として、ミャンマーの医療制度と公衆衛生の状況について分析・考察した。
◆COVID-19パンデミックの中、内戦が勃発した国内において、医療施設の損害と機能喪失が明らかになった。その影響は社会的弱者で顕著だったが、一方で、プライマリヘルスケアとコミュニティーのリソースを生かし、市民やコミュニティーのレジリエンスを保持する方法が示唆された。
◆コミュニティーが立ち直るためには、国際的支援に加え、市民やコミュニティーが主導で医療や健康増進サービスを受けられるための健康教育とエンパワメントが重要である。

特別企画

—座談会—保健所のコロナ戦記after 2021—残された課題とこれからの対応

著者: 関なおみ ,   西塚至 ,   青木眞

ページ範囲:P.800 - P.806

いまだ終息の兆しが見えないCOVID-19。2020年1月、日本における感染例が報告され始めてから、保健所の現場はどう動いたのか。その初動、組織・システムの構築、人材育成の是非を語る。「保健所の『コロナ戦記』」の後日譚 ——。

映画の時間

—ローマ、高級住宅街の同じアパートに住む3つの家族。彼らには扉の向こう側の誰にも見せない別の顔があった。—3つの鍵

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.807 - P.807

 深夜、妊婦が、病院に向かおうとしているのでしょうか、街角でタクシーを探していると、若者の運転する車が猛スピードでカーブを曲がってきます。妊婦はひかれそうになりながらも危うく難を逃れます。車はアパートの1階に衝突し、巻き添えになった女性が亡くなります。
 運転していたのは、アパートの3階に住む裁判官夫婦ヴィットリオ(ナンニ・モレッティ)とドーラ(マルゲリータ・ブイ)の息子のアンドレア(アレッサンドロ・スペルドゥティ)でした。衝突のショックでしょうか、それとも薬物かアルコールの影響でしょうか、意識がはっきりしない様子です。

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次号予告 フリーアクセス

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奥付 フリーアクセス

ページ範囲:P.812 - P.812

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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