公衆衛生87巻11号

2023年11月発行

特集 原発事故と健康影響—福島県民健康調査と風評対策

原子力災害と風評被害

著者： 関谷直也¹

所属機関： ¹東京大学大学院情報学環 総合防災情報研究センター

ページ範囲：P.1086 - P.1093

文献概要

ポイント
◆風評被害とは、ある社会問題（事件・事故・環境汚染・災害・不況）が報道されることによって、本来「安全」とされるもの（食品・商品・土地・企業）を人々が危険視し、消費、観光、取引をやめることなどによって引き起こされる経済的被害を指す。
◆東日本大震災以降の風評被害は、損害賠償の対象としての経済被害、放射線に対する無理解・福島に対する誤解、「差別」「スティグマ」などの問題がある。
◆風評被害対策には、科学的なことを伝えようという「リスクコミュニケーション」、積極的関与層を増やそうという「応援消費」、流通構造を改善しようという「流通対策」などの方策がある。

参考文献

1）関谷直也：風評被害—そのメカニズムを考える．光文社，2011

2）関谷直也：日本人の安全観．平成15年度原子力安全基盤調査研究　研究成果報告書，193頁，東洋大学，2004

3）関谷直也：災害情報—東日本大震災からの教訓，東京大学出版会：2021

4）関谷直也：いわゆる「人への風評被害」と自治体職員．ガバナンス 191: 39-41, 2017

5）復興庁：原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース—風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略．平成29年12月12日　https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/20171211162232.html（2023年7月10日閲覧）

6）関谷直也：東京電力福島第一原子力発電所事故における風評被害と農産物流通．NOSAI 69（3）: 4-14, 2017

7）Sekiya N: Reputational Damage in Radiation Disasters 10 years after the Accident at TEPCO's Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. Ann ICRP 50（1 suppl）: 55-61, 2021