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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生87巻12号

2023年12月発行

文献概要

連載 All about 日本のワクチン・12

ヒブ(Hib)ワクチン

著者: 菅秀1

所属機関: 1独立行政法人国立病院機構三重病院小児科

ページ範囲:P.1262 - P.1265

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1.当該疾患の発生動向
 インフルエンザ菌Haemophilus influenzaeはインフルエンザ様疾患の患者喀痰から分離されたグラム陰性桿菌である。インフルエンザ菌には、莢膜を有する型と莢膜を有さない型(non typable H. influenzae: NTHi)がある。莢膜は最も重要な病原因子の一つであり、その主要成分の多糖体はa〜fの6種類の血清型に分類される。インフルエンザ菌は、時に粘膜バリアーを超えて血液内に侵入し、血液、髄液などの通常は無菌である部位より菌が検出される髄膜炎、菌血症、敗血症、血液培養陽性肺炎、関節炎などの深部感染症を引き起こすことがあり、これらは侵襲性インフルエンザ菌感染症(invasive H. influenzae disease: IHD)と呼ばれている。とりわけ莢膜型b型(H. influenzae type b: Hib)はIHDの80%以上の起炎菌であり1)、ワクチン導入前には、世界的に見て乳幼児細菌性髄膜炎の起炎菌の中で最も頻度の高い細菌であった。わが国の疫学調査によると、2008〜2010年の5歳未満小児人口10万人当たりのIHD罹患率は11.4〜12.5であり、致命率は1.1%で5.3%に後遺症を認めたと報告されている2)。莢膜多糖体抗原は、T細胞非依存性抗原であるため、免疫系の未熟な小児では免疫応答が引き起こされにくいことが、重症化の一因であると考えられている。したがってワクチンにより免疫を獲得して感染を予防することが重要である。

参考文献

1)Peltola H: Worldwide Haemophilus influenzae type b disease at the beginning of the 21st century: global analysis of the disease burden 25 years after the use of the polysaccharide vaccine and a decade after the advent of conjugates. Clin Microbiol Rev 13: 302-317, 2000
2)Suga S, et al: A nationwide population-based surveillance of invasive Haemophilus influenzae diseases in children after the introduction of the Haemophilus influenzae type b vaccine in Japan. Vaccine 36: 5678-5684, 2018
3)Adams WG, et al: Decline of childhood Haemophilus influenzae type b(Hib)disease in the Hib vaccine era. JAMA 269: 221-226, 1993
4)サノフィ株式会社:細菌ワクチン類生物学的製剤基準乾燥ヘモフィルスb型ワクチン(破傷風トキソイド結合体)アクトヒブ,第17版(医薬品インタビューフォーム).2023年6月 https://www.e-mr.sanofi.co.jp/dam/jcr:7c456f60-0b8d-4c0a-b6e7-cc5103a72d46/acthib.pdf(2023年7月27日閲覧)
5)厚生労働省:Hib(ヒブ)ワクチンの副反応報告状況について(第93回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会資料).2023年4月28日 https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/001091455.pdf(2023年7月18日閲覧)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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