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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生87巻2号

2023年02月発行

文献概要

連載 All about 日本のワクチン・2

麻疹ワクチン—成人を中心に

著者: 中村(内山)ふくみ1

所属機関: 1東京都立墨東病院感染症科

ページ範囲:P.150 - P.153

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1.当該疾患の発生動向
 麻疹は麻疹ウイルスによる全身感染症である。高熱、倦怠感で発症し、咳、咽頭痛、結膜炎などのカタル症状に引き続き発疹が出現する1)。肺炎、中耳炎、クループなどを合併することが多く、回復期に発症する麻疹脳炎は肺炎とともに麻疹の2大死因と呼ばれている。麻疹は空気感染、飛沫感染、接触感染のいずれの経路でも感染する極めて感染力の強い感染症であるがワクチンで予防可能である。
 国内の麻疹発生動向を図12)に示す。2006年から開始されたワクチン定期接種率向上のための対策や未免疫者に対する免疫付与、麻疹患者発生時の迅速な積極的疫学調査と感染拡大防止対策によって、2015年3月に麻疹排除状態にあることを世界保健機関西太平洋事務局から認定された3)。排除認定後は輸入例や、輸入例を発端とし周囲の感受性者を巻き込んだ集団発生例が散発していた。2019年の麻疹患者報告数は排除認定後最多の744人に上った。しかしCOVID-19の流行による水際対策で国際的な人の往来が激減するとともに国内の麻疹患者報告数も低下した4)。2020年は10例、2021年は6例、2022年は11月8日までで6例の報告にとどまっている2)

参考文献

1)Dunn JJ, et al: Measles is Back - Considerations for laboratory diagnosis. J Clin Virol 128: 104430, 2020
2)国立感染症研究所感染症疫学センター:麻しん累積報告数の推移2015〜2022年(第1〜44週).2022年11月9日 https://www.niid.go.jp/niid//images/idsc/disease/measles2022pdf/meas22-44.pdf(2022年11月12日閲覧)
3)森野紗衣子:麻疹・風疹ワクチン.臨床検査 66: 940-947, 2022
4)神谷元:麻疹・風疹・ムンプス.臨床とウイルス 50(3):119-122, 2022
5)中山哲夫:麻疹ワクチン.ウイルス 59: 257-266, 2009
6)Perry RT, et al: The clinical significance of measles: a review. J Infect Dis 189 Suppl 1: S4-S16, 2004
7)国立感染症研究所感染症疫学センター:麻しん風しん混合(MR)ワクチン接種の考え方.2018年4月17日 https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/measles/MRvaccine_20180417.pdf(2022年11月12日閲覧)
8)保科隆之,他:麻疹・風疹・おたふくかぜ.臨床と研究 99: 429-433, 2022
9)日本環境感染学会ワクチン委員会:医療関係者のためのワクチンガイドライン第3版. http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/vaccine-guideline_03(4).pdf(2022年11月12日閲覧)
10)国立感染症研究所:麻疹とは.2017年6月7日 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/518-measles.html(2022年11月12日閲覧)
11)山元佳:麻疹ワクチン.Medicina 59: 531-535, 2002
12)Yamamoto K, et al: Catch-up immunization for adolescents and young adults during pre-travel consultation in Japan. PLoS One 16: e0258357, 2021

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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