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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生88巻1号

2024年01月発行

文献概要

連載 All about 日本のワクチン・13

肺炎球菌ワクチン—小児を中心に

著者: 菱木はるか1

所属機関: 1帝京大学ちば総合医療センター小児科

ページ範囲:P.85 - P.88

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1.当該疾患の発生動向
 肺炎球菌感染症は、グラム陽性球菌である肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)によって起こる感染症である。気管支炎、中耳炎などの市中感染から、肺炎、敗血症、細菌性髄膜炎などの侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease: IPD)を引き起こす。IPDは重篤な後遺症や死亡のリスクが高い疾患である。小児肺炎球菌ワクチン導入以前のわが国において、小児細菌性髄膜炎の原因菌の第2位が肺炎球菌であった1)。全国多施設共同研究(1道9県)における調査2)によると、ワクチン導入前の2008〜2010年における5歳未満小児人口10万人当たりの肺炎球菌による髄膜炎罹患率は2.6〜3.1、非髄膜炎罹患率は21.2〜23.5であり、IPDは毎年1,200症例程度発生していたと推計された。IPDは2013年から感染症法5類感染症の届出対象疾患となっている。2014〜2021年の感染症発生動向調査3)によると、IPDの年間報告数は2014年以降2018年まで経年的に増加し、2020年以降に減少している。2020年の人口10万人当たりのIPDは、全年齢1.32、5歳未満6.0、65歳以上2.75と、小児患者が最も多い。5歳未満における年間報告数の推移も全体と同様に、2014〜2019年にかけて増加し、2020年以降に減少している。病型は、5歳未満では菌血症、菌血症を伴う肺炎、髄膜炎の順に多く、65歳以上では肺炎、菌血症、髄膜炎の順に多く見られている。後述するように、ワクチン導入後にワクチン含有血清型によるIPDは激減したが、ワクチン非含有血清型のIPDが増加している4)。本稿では、主に小児のIPDと小児肺炎球菌ワクチンについて解説する。

参考文献

1)砂川慶介,他:本邦における小児細菌性髄膜炎の動向(2007〜2008).感染症誌 84: 33-41, 2010
2)国立感染症研究所:インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンおよび7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)導入が侵襲性細菌感染症に及ぼす効果について.IASR 33: 71-72, 2012 https://www.niid.go.jp/niid/ja/ihd-m/ihd-iasrd/1731-kj3853.html(2023年10月24日閲覧)
3)国立感染症研究所:侵襲性肺炎球菌感染症の届出状況,2014年第1週〜2021年第35週.2021年11月26日 https://www.niid.go.jp/niid/ja/pneumococcal-m/pneumococcal-idwrs/10779-ipd-211126.html(2023年10月24日閲覧)
4)Suga S, et al: Nationwide population-based surveillance of invasive pneumococcal disease in Japanese children: Effects of the seven-valent pneumococcal conjugate vaccine. Vaccine 33: 6054-6060, 2015
5)国立感染症研究所:小児侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の発生動向および起炎菌血清型変化の解析.IASR 44: 11-12, 2023 https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2606-related-articles/related-articles-515/11768-515r07.html(2023年10月24日閲覧)
6)Davis SM, et al: Impact of pneumococcal conjugate vaccines on nasopharyngeal carriage and invasive disease among unvaccinated people: review of evidence on indirect effects. Vaccine 32: 133-145, 2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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