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連載 Go to the people——バングラデシュと共に歩んだ私の国際保健50年
第七編
著者: 石川信克12
所属機関: 1公益財団法人結核予防会 2結核予防会結核研究所
ページ範囲:P.93 - P.96
文献購入ページに移動ロンドンスクールでの学びは、主に英国の公衆衛生に関するもので、直接途上国での活動には役立ちそうな内容ではなかった。ただし、前から熱帯医学や途上国の医療に関する学びは始めていて、その中でも特に1960〜70年代、ネパールで働いていた岩村昇先生の体験談には豊富な内容があった。先生はいわゆる熱帯医学の教科書でなく、モーリス・キングの“
というのも当時、岩村先生はジュネーブで開かれる世界教会協議会の医療委員会であるCMC(Christian Medical Commission)出席の道中にロンドンのわが家を数回訪ねてくださり、そのときに多くのことをお話しされた。CMCは、1960年代後半には、病院や診療所で患者を治療するだけでは地域の人々の病気予防や健康向上に不十分であると考え、コミュニティー・ヘルスの意識が高まっていた。CMCの会議では、そうした視点から世界中のへき地にあるミッション病院の保健医療の在り方について協議されていた。例えば、アフリカで外国人外科医が手術をして一人の患者を助けた。しかし、その後患者の家を訪ねてみると、その家族はどん底の貧困生活をしていた。手術をしてもらうために、持っていた家畜の牛を手放すしかなく生活基盤を失ってしまったからだ。手術が成功して病気を治しても、その患者や家族のためになっていなかったとその医師は反省し、地域医療を進めるようになった。CMCはこうした経験を集積し、同じジュネーブにあるWHOのスタッフと共有する中で、“
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