公衆衛生88巻11号

2024年11月発行

連載 ヒトとモノからみる公衆衛生史・18

健康増進と「人生の最終段階」・3—なぜアドバンス・ケア・プランニングが推進されるのか

著者： 柏﨑郁子¹

所属機関： ¹東京女子医科大学看護学部

ページ範囲：P.1149 - P.1153

文献概要

はじめに
　アドバンス・ケア・プランニング（advance care planning: ACP）は、文字通り事前のケア計画のことである。それはしばしば、「終末期」になる前から行われるものであること、状況や気持ちの変化に合わせて何度でも希望を変更できること、価値観や人生の目標を共有するための医療やケアの専門家、家族などとの話し合いのプロセスであること、意思決定できなくなった場合の代理の意思決定者の指名や事前指示書の作成も含むこと、などがその概念に含まれるといわれる^1）。
　前回までは、「健康日本21」や社会保障制度に関する法律を参照し、「健康寿命」の延伸と終末期医療にはつながりがあることをわずかながら示してきた。今回は「終末期へのまなざしが健康増進を後押ししてきた歴史」がみえるように、ACPに注目したい。

参考文献

1）柏﨑郁子：〈延命〉の倫理—医療と看護における—．117頁，晃洋書房，2024

2）Ozeki-Hayashi R, et al: Guideline-Based Approach to End-of-Life Care Decisions in Japan: Practice, Regulation and the Place of Advance Directives. Cheung D, et al（ed）: Advance Directives Across Asia: A Comparative Socio-legal Analysis. Cambridge University Press, Cambridge, 2023

3）第1回 人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会：これまでの経緯と最近の動向．2017年8月3日　https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000173560.pdf（2024年8月26日閲覧）

4）高草木光一：公立福生病院事件の闇．小松美彦，他（編著）：『〈反延命〉主義の時代 —— 安楽死・透析中止・トリアージ．91-113頁，現代書館，2021

5）厚生労働省：人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン．2018年3月　https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197701.pdf（2024年8月26日閲覧）

6）人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会：人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン解説編．2018年3月　https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000197722.pdf（2024年8月26日閲覧）

7）厚生労働省：人生会議（ACP）普及・啓発リーフレット．　https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html（2024年8月26日閲覧）

8）厚生労働省：人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査報告書．50-63頁，2023年12月　https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/saisyuiryo_a_r04.pdf（2024年8月26日閲覧）

9）片山陽子：地域におけるACPの実践．AgingHealth 29（4）：10-13, 2021

10）西川満則：他職種連携の実際と課題 —— ACPファシリテーターの役割．AgingHealth 29（4）：14-17, 2021

11）Rose N: The Politics of Life Itself: Biomedicine, Power and Subjectivity in the Twenty-First Century. pp 252-253, Princeton University Press, Princeton, 2007（檜垣立哉（監訳），小倉拓也，他（訳）：生そのものの政治学 —— 二十一世紀の生物医学，権力，主体性．473頁，法政大学出版局，2019）