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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生88巻12号

2024年12月発行

連載 ヒトとモノからみる公衆衛生史intermission・1

北里柴三郎とミルク、そして、ツベルクリン

著者: 月澤美代子1

所属機関: 1元・順天堂大学大学院医学研究科(医史学・医の人間学)

ページ範囲:P.1248 - P.1251

文献概要

はじめに——養生園ミルク事件
 北里柴三郎は恩義を受けた人に対する義理を生涯にわたって大切にした。2024年7月から北里は千円札の顔となったが、北里が今に生きていれば、むしろ、恩人の福沢諭吉の肖像が一万円札から消えたことが残念だと語るかもしれない。1892(明治25)年、ドイツから帰還した北里は福沢諭吉の土地を借用して伝染病研究所を設立したが、同じく福沢の土地を借りて運営していた結核専門病院・土筆ヶ岡養生園ではウシを飼育しており、毎朝、牛乳を福沢邸に届けていた。1896(明治29)年秋のある日、福沢邸に届けられた牛乳瓶がひどく汚れており、これが福沢の逆鱗に触れ、北里は福沢邸で3時間に及ぶ叱責を受けたという。福沢から北里のもとに会計総責任者として派遣されていた田端重晟の伝える有名なエピソードである。
 養生園のあった芝白金の土地には現在、北里大学北里研究所病院が建てられており、その入り口にはコッホ・北里を祀る神社がある。ご神体はコッホの毛髪である。北里は師であるロベルト・コッホからの学恩を忘れずに終生崇敬の念を抱いていた。

参考文献

1)Koch R: Weitere Mitteilungen über ein Heilmittel gegen Tuberkulose. Deutsche Medicinische Wochenschrift 16: 1029-1032, 1890
2)月澤美代子:ツベルクリン騒動—明治日本の医と情報—.名古屋大学出版会,2022
3)Koch R: An Address on the Fight against Tuberculosis in the Light of the Experience that has been Gained in the Successful Combat of other Infectious Diseases. Br Med J 2: 189-193, 1901
4)北里柴三郎:結核ト日本牛トノ関係.細菌学雑誌 101: 41-47, 1904
5)北里柴三郎:和牛ト結核トノ關係ニ就テ.細菌学雑誌 107: 549-559, 1904
6)深満池源次郎(編):東京商工博覧絵 下.国立国会図書館デジタルコレクション,1885 https://dl.ndl.go.jp/pid/803727(2024年9月26日閲覧)
7)内閣官報局:牛乳営業取締規則『法令全書』明治33年.国立国会図書館デジタルコレクション,1887〜1912 https://dl.ndl.go.jp/pid/788017(2024年9月26日閲覧)
8)大蔵省印刷局(編):官報1901年04月13日.日本マイクロ写真,国立国会図書館デジタルコレクション,1901 https://dl.ndl.go.jp/pid/2948627(2024年9月26日閲覧)
9)第15回帝国議会衆議院畜牛結核病予防法案委員会議事録(第1号).明治34年3月23日 https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001512407X00119010323&current=-1(2024年9月26日閲覧)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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