icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生88巻3号

2024年03月発行

雑誌目次

特集 梅毒急増! 性感染症対策最前線

Editorial—今月号の特集について フリーアクセス

著者: 西塚至

ページ範囲:P.253 - P.253

 ペニシリンの普及で「過去の病気」と思われてきた梅毒の増加が止まりません。2023年に全国から報告された梅毒の感染者数は速報値で1万4,906人に上り、現在の方法で統計を取り始めて以来最多となり、「性感染症」の広がりが危惧されています。
 本特集「梅毒急増!性感染症対策最前線」では、感染拡大の背景に何があるのかを探るべく、疫学、性教育、ポピュレーションアプローチ、ハイリスクアプローチ、医療、妊婦健診、相談援助、自粛下の性暴力問題など最新情報をまとめました。以下、必読ポイントを一部紹介します。見えてきたのは、感染リスクが身近にあるにもかかわらず、適切な予防や治療につながらない実態です。公衆衛生活動の参考書としておすすめの1冊です。

感染症発生動向調査—梅毒報告数の状況と増加要因

著者: 伊東花江 ,   山岸拓也

ページ範囲:P.254 - P.261

ポイント
◆近年若者を中心に梅毒感染報告数が急増している。
◆男女の異性間性的接触による報告数が増加している。
◆女性症例の増加に伴い、今後の先天梅毒の増加が懸念される。

全ての若者がSRHRに関する教育・相談の機会を得られる社会の実現を目指して

著者: 今村優子

ページ範囲:P.262 - P.270

ポイント
◆働く女性の9割がSRHRに関する内容について学校の授業でもっと詳しく習いたかったと回答した。
◆青年期の若者にとって、SRHRに関する正しい知識を持ち、主体的に判断、行動する能力を身に付けることは、自身の健康を守り主体的にライフプランを描く上で重要である。
◆全ての人がSRHRに関する教育・相談の機会を得られる社会の実現に向け、産官学民が連携し取り組むことが必要である。

ポピュレーション・アプローチ—Z世代に向けた東京都の梅毒重点対策

著者: 西塚至

ページ範囲:P.271 - P.282

ポイント
◆都内の梅毒は近年増加が続いている。女性では20歳代の増加が顕著で性風俗産業従事歴のない者も目立つ。
◆都は、梅毒急増を受けて2023年に検査・相談体制の拡充、集中的な普及啓発を展開した。
◆性感染症予防のため、医療、教育、福祉と連携し、若者の自己肯定感・効力感を高めることも重要である。

性風俗産業における性感染症予防の現状と対策—梅毒におけるハイリスク・アプローチ

著者: 渡會睦子

ページ範囲:P.283 - P.293

ポイント
◆近年の梅毒報告数の増加に伴う日本の性風俗産業の実態を分析し、根拠ある対策を検討することで、対象に配慮した公衆衛生活動を展開することができる。
◆現代の若者の性の現状を知ることでポピュレーション・アプローチ、ハイリスク・アプローチの思考整理ができる。
◆性風俗産業における業務形態、特徴、内容・課題、法的根拠を把握した上で、連携・対策を検討することが、今後の梅毒におけるハイリスク・アプローチにつながる。

医療の確保—梅毒を見逃さないための診療の基本

著者: 小堀善友 ,   吉田直人 ,   定岡侑子 ,   尾上泰彦

ページ範囲:P.294 - P.301

ポイント
◆梅毒診断には問診が重要であり、性風俗の利用や不特定多数の性交渉がある場合は梅毒感染のリスクが高い。
◆TPとRPRという2つの抗体価で感染や治療が評価できるが、検査結果だけでなく問診・視診・触診の総合的判断が必要である。
◆基本的にはペニシリンによって治療を行い、早期の場合では1回の注射だけで治療を終了することができる。

梅毒合併妊婦の現状

著者: 川名敬

ページ範囲:P.302 - P.310

ポイント
◆日本国内における梅毒の女性感染者は2013年ごろから増え始め、2022年時点で増加し続けている。
◆女性の場合、多くは20〜30歳代で、妊婦の梅毒感染者や先天(性)梅毒の症例が増加している。
◆妊娠を考える女性が、何らかの感染機会が疑われる場合や梅毒を示唆する症状を認めた場合には、速やかに梅毒抗体検査を行うことが重要である。

ユースクリニック—思春期の悩み、気軽に相談

著者: 門間美佳

ページ範囲:P.311 - P.323

ポイント
◆若者の性の健康を守るために、①包括的性教育 ②若者対象の相談・カウンセリング ③性的健康サービス医療的ケアへのアクセス改善の3つの柱が重要である。
◆ユースクリニックでは若者の相談・カウンセリングを担う。
◆ユースクリニックは人権尊重の考えを基盤とし、若者のSRHR(性と生殖の健康と権利)を守り、若者のニーズを満たすという重要な役割を担っている。

コロナ自粛下に日本人の性行動はどう変わったか—コロナ禍における第一次緊急事態宣言下の日本人1万人調査結果から

著者: 北村邦夫

ページ範囲:P.324 - P.332

ポイント
◆新型コロナウイルス感染症流行下では自粛生活が原因してか、妊娠相談や暴力相談、自殺の増加など話題となっていた。
◆第一次緊急事態宣言下における、日本人の性意識・性行動の実態を知るべく、20〜69歳男女の1万人調査が行われた。
◆この調査結果から、「コロナ自粛下における日本人の性行動がどう変わったか」を中心にまとめた。

連載 All about 日本のワクチン・15

DPT-IPV・DTトキソイド

著者: 小野貴志

ページ範囲:P.334 - P.337

1.該当疾患の発生動向
 沈降精製百日咳ジフテリア破傷風不活化ポリオ混合ワクチン(DPT-IPV)または沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド(DTトキソイド)に含まれる各種疾患について、感染症発生動向調査における国内の動向の概要を述べる。

ヒトとモノからみる公衆衛生史・10

入浴と清潔をめぐる近代史・1—「風呂好きな日本人」と汚れた浴場

著者: 川端美季

ページ範囲:P.338 - P.341

はじめに
 「ヒトとモノからみる公衆衛生史」のリレー連載は、ここまでマスク、サーベイランス史、歯科衛生など多角的なアプローチで、公衆衛生の多様で奥深い歴史が紹介されてきた。
 今回から3回にわたり、現代までの入浴と銭湯(公衆浴場)の日本の歴史を中心に振り返る。現代の私たちにとって毎日入浴することは当たり前になっている。毎日入浴しないと言葉では説明できない気持ちの悪さや汚れている感じを覚える人も多いだろう。戦後まで都市部で入浴する場の多くは銭湯であった。こうした銭湯は現代では保健衛生や癒やしのための施設であり、また、多くの人の目には昔ながらの日本文化として映っているのではないだろうか。銭湯の歴史と入浴しないとすまない、清潔にしなければならないといった意識の歴史は結び付いている。入浴と銭湯の歴史を追いながら、私たちの感覚に深く根付いている清潔規範の変遷をひもといていきたい。
 初回は、前近代からの銭湯の歴史と、日本人が風呂を好むということがいつごろからいわれるようになったのか、その歴史の一部を読者の皆さんと共に追っていくこととしたい。

Go to the people——バングラデシュと共に歩んだ私の国際保健50年

第九編

著者: 石川信克

ページ範囲:P.342 - P.345

いよいよ仕事が始まった
 地域保健(コミュニティー・ヘルス)および結核の専門家としての仕事が始まった。各地域に散在する傘下23のNGOクリニックが行っていたコミュニティーヘルス支援と活動の中に結核対策を入れる仕事だ。
 当時(1980年代初期)のバングラデシュの人口は9千万人、人口密度は対平方km600を越えて世界最高位、出生率は千対33で人口増加率は2%を超え、25年で倍増が予測された。乳児死亡率は出生千対130と高かった(当時日本は7、最近の当国では30と改善)。平均寿命は50歳、一人当たりのGNPは200 USドル(日本の50分の1)、成人識字率は22%、人口の46%が15歳以下で、子どもの半数は何らかの栄養失調といわれていた。これらの保健指標は、世界的に見ても最悪の状態であった。

[連続小説]コロナのない保健所の日記・12

愛しすぎる女

著者: 関なおみ

ページ範囲:P.349 - P.358

二月一日木曜日 曇り
 真歩が出勤すると、
「橘課長、今日は要対協(1)ですよ。」
 羽田係長が硬い表情で話しかけてきた。

予防と臨床のはざまで

IUHPE理事会inモントリオール出席

著者: 福田洋

ページ範囲:P.346 - P.346

 2023年9月27日(水)〜29日(金)にヘルスプロモーション・健康教育国際連合(International Union for Health Promotion and Education: IUHPE)の理事会に参加しました。IUHPEはWHOと緊密な連携を図りながら、全ての人々の健康と幸福の向上を目的に活動している学会組織です。ヘルスプロモーション・健康教育分野随一の国際学会で、本部はカナダのモントリオール市に置かれ、理事会には世界中から選挙で選ばれた理事と世界6地域の地域副会長が参加します。会議はカナダのモントリオール大学公衆衛生大学院にあるIUHPEの事務局で行われました。2007年にカナダのバンクーバーで開催されたIUHPEの世界会議(学術会議)には参加しましたが、モントリオールを訪れるのは初めてでした。モントリオール市を擁するケベック州はカナダ随一のフランス語圏で、マギル大学やモントリオール大学など複数の大学がある学術都市で北米のパリと称されるほどの美しい街です。
 IUHPEの世界会議は3年ごとに開催され、過去には日本でも開催されました。1995年に千葉県幕張市で開催された第15回大会は、私が大学院生のときに初めて参加した国際学会です。学会事務局の一員として救護室を担当したり、初めての英語での発表に悪戦苦闘したり、懇親会のカラオケパーティーを企画したりと大変でしたが、世界の主要な研究者の先生方との交流は得難い経験でした。その後、2022年の第24回大会まで定期的に参加してきました。IUHPEでのキャリアは1995年に個人会員として始まり、2009年からジャパンリエゾンオフィスのディレクターを2期6年務め、2015年から北部西太平洋地域(northern part of the western pacific: NPWP地域)の事務局長を務めました。2022年から神馬征峰氏(東京大学)に代わってNPWP地域の副会長に選出され、これまで開催された理事会にはオンラインで参加してきました。今回の理事会はコロナ禍が過ぎて初めての対面(ハイブリッド)開催で、私にとって実に3年ぶりの海外出張となりました。オンライン会議は時差の関係で日本時間の深夜の開催であり、英語のヒアリングやタイムラグ、画面での相手の表情が読み取りにくい面もありましたが、対面での理事会出席は初めてなので大変楽しみにしていました。

映画の時間

—それぞれが人生の主役—アバウト・ライフ 幸せの選択肢

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.347 - P.347

 最近の映画はキャストやスタッフの情報はエンドロールに流れることが多くなっていますが、今月ご紹介する『アバウト・ライフ 幸せの選択肢』は、昭和の映画のように冒頭に情報が流れます。なんとなく古風な感じを漂わせる始まりです。タイトルクレジットに続く本編では、モノクロームの画面で、いたわり合う老夫婦が現れ、「結婚」についてのモノローグが続きます……ある朝、目を覚まして気付く、人生の大半の時間をムダに過ごしてきたと……。
 一転カメラが引くと、そこは映画館の中。冒頭のモノクロームの映像は劇中劇だったというわけで、鮮やかな出だしです。映画を観ていたグレース(ダイアン・キートン)とサム(ウィリアム・H・メイシー)は、ひょんなことから意気投合します。

--------------------

目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.251 - P.251

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.361 - P.361

奥付 フリーアクセス

ページ範囲:P.362 - P.362

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら