icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生88巻4号

2024年04月発行

文献概要

連載 Go to the people——バングラデシュと共に歩んだ私の国際保健50年

第十編

著者: 石川信克12

所属機関: 1公益財団法人結核予防会 2結核予防会結核研究所

ページ範囲:P.433 - P.438

文献購入ページに移動
人々と交わるには土と交わらねばならぬ
 限りなく人々の近くに行って仕事をするのは、NGOの役割だ。日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)は、最も貧しい人々に寄り添うことがモットーである。表向きどんなに良いサービスの仕組みが国にあっても、貧しい人や弱い人は、その恩恵にあずかれないことが多い。バングラデシュの村々では、地理的にも保健サービスへのアクセスはかなり厳しく、限られていた。当時南部の村々では、水田の中に盛り土をして作った小島が点在し、そこに数軒の家が小部落を作っていた。雨季は一面が水浸しで、水路も水田も境がなくなり、用事があれば小舟をこいでいく。子どもが学校へ行くのも自分で小舟を操っていく。小さい子どもが水に溺れることもまれではない。また雨季から乾季に移る時期は、水が引いてくるので、ぬかるみの中を時には数時間歩いて行くしかない。ぬかるんだ田んぼの中を歩くにはコツがいる。サンダルを片手に持って、素足の指で地面をつかんでいくのだ。よく見るとみんなの足の指はしっかり開いていてそれができる。日本のわれわれの足の指では滑ってしまう。四苦八苦してよろよろ歩いていると、子どもたちが来て、ドクターはミチもろくに歩けないんだと、笑いながら支えてくれる。小川に掛けた竹の一本橋を渡るときはなおさらだ。手すりはあるが、足でしっかり竹をつかんでいかないと滑り落ちてしまう。人々と交わるためには、足の指を広げて、まず土と交わらなければならないのだ。
 多くの島では子どもたちのツベルクリン反応(ツ反)が陰性なのに、ある島では子ども全員が陽性だったりして、感染というものが、一様でなく、幾つかのクラスターになっていることが分かる。

参考文献

. Hesperian Foundation, Oakland, 1982
2.全国友の会中央部,他(編):大豆料理から広がった女性たちの台所の交流:バングラデシュ訪問12回の記録.婦人之友社,1998
3.Dowler EA, et al: Nutritional status indicators: interpretation and policy making role, Food Policy 7: 99-112, 1982

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら