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連載 Go to the people——バングラデシュと共に歩んだ私の国際保健50年
第十編
著者: 石川信克12
所属機関: 1公益財団法人結核予防会 2結核予防会結核研究所
ページ範囲:P.433 - P.438
文献購入ページに移動限りなく人々の近くに行って仕事をするのは、NGOの役割だ。日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)は、最も貧しい人々に寄り添うことがモットーである。表向きどんなに良いサービスの仕組みが国にあっても、貧しい人や弱い人は、その恩恵にあずかれないことが多い。バングラデシュの村々では、地理的にも保健サービスへのアクセスはかなり厳しく、限られていた。当時南部の村々では、水田の中に盛り土をして作った小島が点在し、そこに数軒の家が小部落を作っていた。雨季は一面が水浸しで、水路も水田も境がなくなり、用事があれば小舟をこいでいく。子どもが学校へ行くのも自分で小舟を操っていく。小さい子どもが水に溺れることもまれではない。また雨季から乾季に移る時期は、水が引いてくるので、ぬかるみの中を時には数時間歩いて行くしかない。ぬかるんだ田んぼの中を歩くにはコツがいる。サンダルを片手に持って、素足の指で地面をつかんでいくのだ。よく見るとみんなの足の指はしっかり開いていてそれができる。日本のわれわれの足の指では滑ってしまう。四苦八苦してよろよろ歩いていると、子どもたちが来て、ドクターはミチもろくに歩けないんだと、笑いながら支えてくれる。小川に掛けた竹の一本橋を渡るときはなおさらだ。手すりはあるが、足でしっかり竹をつかんでいかないと滑り落ちてしまう。人々と交わるためには、足の指を広げて、まず土と交わらなければならないのだ。
多くの島では子どもたちのツベルクリン反応(ツ反)が陰性なのに、ある島では子ども全員が陽性だったりして、感染というものが、一様でなく、幾つかのクラスターになっていることが分かる。
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