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公衆衛生88巻5号

2024年05月発行

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特集 感染症法等改正法の全面施行

Editorial—今月号の特集について フリーアクセス

著者: 多屋馨子

ページ範囲:P.459 - P.459

 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」(令和4年法律第96号。以下、感染症法等改正法)が2022(令和4)年12月に公布された。感染症法等改正法は、感染症法のほか、地域保健法、予防接種法、検疫法および医療法など公衆衛生関連の数多くの法律の改正を包含したもので、一部は先行して施行されたが、2024(令和6)年4月1日に全面施行となった。この改正により保健所および地方衛生研究所等の体制や機能の強化が盛り込まれた。
 本特集では、今回の法律改正のポイントと施行について分かりやすく説明していただいた。また、厚生労働省、都道府県、都道府県連携協議会、保健所、地方衛生研究所、医療機関、研究機関の立場でそれぞれが果たす役割を関係機関との連携に触れながら解説いただいた。

感染症法・地域保健法改正に伴う感染症予防基本指針の改正—COVID-19の流行で明らかとなった課題と将来展望を含めて

著者: 荒木裕人

ページ範囲:P.460 - P.467

ポイント
◆2022年感染症法改正では、医療措置協定等の協定締結や、基本指針及び予防計画の改正が盛り込まれた。
◆改正された基本指針及び予防計画では、数値目標を定め、平時から、具体的に新興感染症へ備えることが求められる。
◆都道府県連携協議会を通じて、都道府県等は地域の関係機関と、平時から連携することが重要である。

健康危機管理と地域保健体制の強化—感染症法等を改正する法律の全面施行を踏まえて

著者: 阿彦忠之

ページ範囲:P.468 - P.474

ポイント
◆感染症法等を改正する法律の全面施行を踏まえて、健康危機に備えた保健所等の地域保健体制の強化が急務である。
◆健康危機発生時のサージキャパシティの強化に向けて法定化された人材バンク「IHEAT」の登録者の増員と資質向上が必要である。
◆地域保健法に基づく基本指針の改正により保健所設置自治体(本庁、保健所)と市町村は、統括保健師を「配置すること」とされた。

都道府県連携協議会の果たす役割と広域連携の実施に関する課題と可能性—COVID-19対応の経験から考える

著者: 阿南英明

ページ範囲:P.475 - P.480

ポイント
◆都道府県および保健所設置市の在り方に課題は多いが、迅速に健康危機管理体制を構築すること、都道府県連携協議会や行政の所管担当者間の連絡会議を有機的に活用することが肝要である。
◆広域連携の在り方に関しては、広域の情報共有基盤を整備して、広域の役割分担や人的支援体制を構築しなくてはならない。
◆感染症法改正と感染症予防計画の策定に際しては、COVID-19の経験を生かした計画立案と、疾患特性や周辺状況の違いが存在することを前提に、弾力的な体制および施策の立案、実行を心掛ける。

保健所の果たす役割と今後の展望

著者: 内田勝彦

ページ範囲:P.481 - P.487

ポイント
◆保健所は新興感染症に備え、感染拡大防止機能、疫学分析機能、地域医療等調整機能を強化する必要がある。
◆地域感染期に全ての医療機関が新興感染症対応する共通認識のもとで医療提供体制を準備しておく必要がある。
◆地域の感染症発生状況を的確に把握し関係機関等と情報共有し、地域の対策に反映させる機能強化が保健所には求められている。

地方衛生研究所の果たす役割と今後の展望

著者: 吉村和久

ページ範囲:P.488 - P.494

ポイント
◆COVID-19パンデミックを経験し、日本における新興感染症への対応が予想以上に脆弱であることが露呈し、急速に感染症危機に対する法整備の機運が高まった。
◆2022年から2023年にかけて地方衛生研究所に関する法制化が進み、初めて法律に「地方衛生研究所」の文言が明記された。
◆自治体を中心に連携協議会を立ち上げ、次の健康危機に対応する新たな仕組みが構築されることになった。その中で、地方衛生研究所は科学的拠点としての役割をこれまで以上に求められることになるであろう。

感染症危機管理に係る医療体制の強化と今後の展望

著者: 松本吉郎

ページ範囲:P.495 - P.502

ポイント
◆これからの感染症対策は医療体制にも重点を置き、コロナ対応を踏まえて医療措置協定を中心に整備される。
◆新興感染症まん延時は、地域を面として多くの医療機関が参加し、機能に応じて分担することが重要である。
◆平時から「顔の見える関係」を醸成して有事の連携強化につなぎ、中長期的視点に立って体制を築いていく。

感染症サーベイランスの果たす役割と今後の展望

著者: 神垣太郎 ,   高橋琢理 ,   鈴木基

ページ範囲:P.503 - P.508

ポイント
◆感染症の動向を把握するために感染症サーベイランスがあり、わが国では感染症発生動向調査として運用されている。
◆感染症の改正を受けて電磁的方法による発生届の届出が少なくとも努力義務化され、発生届のデジタル化が進むことが期待される。
◆医療デジタルトランスフォーメーションが進む中でデジタル化されるサーベイランスデータを活用していく取り組みが重要である。

連載 All about 日本のワクチン・17

インフルエンザワクチン—小児を中心に

著者: 谷口清州

ページ範囲:P.510 - P.513

1.当該疾患の発生動向
 日本においてはインフルエンザの発生動向は感染症法に基づいた全国約5,000の定点医療機関(3,000の小児診療科と2,000の成人診療科)からの週単位の年齢群別診断数、500の基幹医療機関からの入院例数、病原体定点医療機関からの臨床検体の提供、超過死亡の評価により、患者発生状況(地域での流行状況)、入院者数(重症度)、流行ウイルスの亜型と抗原性、そして死亡への影響が調査されている1)。そして予防接種法上、年に一度の感染症流行予測調査2)により国民の免疫レベルを評価している。
 2020年からのCOVID-19パンデミックの影響により、2020/21、2021/22シーズンは流行が非常に小さく、国民のインフルエンザに対するHI抗体価保有率は過去の半分以下となり2)、この反動で2022/23の流行は当初はパンデミック対策の影響を受けて小さかったものの、地域での感染症対策の縮小と共に流行は2023年春から夏まで小さいながらも継続し、秋より急速に流行が広がり、2009年のインフルエンザA/H1N1pdm09のパンデミックと同様の流行曲線を描いている(図1)3)。人間界におけるインフルエンザウイルスはA型のH3N2亜型(A/H3N2)とH1N1亜型(A/H1N1pdm09)、B型のVictoria系統とB型のYamagata系統の4種が存在して流行を繰り返しているが、2022/23シーズンの流行株は当初A/H3N2が主流であったが、2023年冬季にかけてA/H1N1pdm09およびB/Victoria系統が増加しつつある。

ヒトとモノからみる公衆衛生史・12

入浴と清潔をめぐる近代史・3—日本の浴場問題と公設浴場

著者: 川端美季

ページ範囲:P.514 - P.517

はじめに
 入浴と清潔さの歴史について、前回は欧米で展開された公衆浴場運動に注目し紹介した。公衆浴場運動の中で造られた浴場に、日本の行政に関わる専門家や衛生家たちが同時期に見学に訪れている。
 そうした欧米の公衆浴場運動を受けて、入浴をしない/できないとされる人たちへのまなざしも導入されるようになっていった。日本では多くの都市に公衆浴場は存在していた。しかし、前々回で紹介した浴場の水質検査に関して、1923(大正12)年に原田四郎らは「細民地域」は人口の割合に比べ浴場数が不足していると指摘しており、「市設浴場」を造り、住民を安く入浴させることを推奨した。大正期は、日常的に入浴するのが難しい人々に対して、入浴環境を保障するべく、行政による浴場すなわち公設浴場が実際に造られていく時期であった。

Go to the people——バングラデシュと共に歩んだ私の国際保健50年

第十一編

著者: 石川信克

ページ範囲:P.518 - P.522

三本立ての仕事に取り掛かる
 仕事の方向がなかなか定まらなかった当初、私は所属団体の了解を得て、①各地のクリニックでの仕事としては、コミュニティー・ヘルスの支援をしつつ、②その中でNGOとしての結核の仕事の在り方を広く探る、そして③村巡りから帰ってダッカに居るときは、国の結核センターや小児病院へ通って、そこで国レベルの結核の診療支援や研究をしてゆく、という三本立てで行くことにした。

[連続小説]コロナのない保健所の日記・14

映画館の隣にある保健所

著者: 関なおみ

ページ範囲:P.525 - P.536

四月二日月曜日 エイプリルフールの翌日 晴れ
 真歩が意外に感じたのは、異動先が係長級のときにいた大塚保健所だったことだ。公衆衛生医師が以前勤務していた区に再度配属されるということは時々あったが、これまでは、だいたい所長になってから係長のときにいた保健所に戻る、というパターンが多かったのである。昨今公衆衛生医師の数が減るとともに、係長級でいられる期間も短くなる傾向にあり、同じ区でそのまま係長から課長へ昇任することも増えてきていた。
 二十三カ所もあるのだから、どうせならなるべく多くの区を制覇してみたいと思っていた真歩としては、少々残念だったが、三年近く勤務し、しょっちゅう自転車で家庭訪問に行っていた、勝手知ったる大塚区なら、どこでも迷わずに行けるから安心だ。しかも、いまだに連絡を取り合っている大塚区の職員も多く、ランチや飲み会に声を掛けたらすぐ集まってくれそうだったので、神田川区のときほどのショックはなかった。

予防と臨床のはざまで

アフターコロナ、4年ぶりのさんぽ会対面開催

著者: 福田洋

ページ範囲:P.523 - P.523

 アフターコロナでさまざまな学会や研究会が対面開催を再開しています。私が主催するさんぽ会(産業保健研究会、http://sanpokai.umin.jp)でも約4年ぶりに対面開催が実現しました。会場に選んだのは東京駅前にできたばかりの東京ミッドタウン八重洲です。一番上にはブルガリホテル東京が入り、飲食店やオフィス、イベントスペース等がある建物の5階のSTUDIO(スタジオ)で行うことにしました。ガラス張りで近くにカフェやラウンジ等があり、観葉植物が配置されて開放的な雰囲気の場所です。STUDIO内には着席で40人入り、ハイブリッドの場合は専属のオペレーターがカメラや音声のPA(public address)等もやってくれます。カメラの画像も素晴らしく、テレビのような画質やレイアウトでの配信が可能で、Youtube®の配信にも使えそうです。
 ハイブリッドで開催した2023年11月の第294回月例会のテーマは「パーソナリティ障害・発達障害」で、お二人の専門家の先生からお話を伺いました。岩谷泰志先生(ペディ汐留こころとからだのクリニック院長)は「岩谷セオリーによる診立てとは何か〜パーソナリティ障害などの理解法」をテーマに講演してくださいました。会場参加はさんぽ会会員限定でしたが、全国から非会員も含めて多くの方がオンラインで参加してくださり、Zoom®画面での1分チャットで感想を書き込んでいただいたところ「感銘を受けた」「参考になり感謝している」とYoutubeのスーパーチャットばりに多くのコメントが画面に流れ、岩谷先生も大変喜んでおられました。リアルタイムで現地とオンラインの反応が分かるところがハイブリッド開催の利点だと思います。もうお一人は「発達障害の自分の育て方」と題して岩本友規先生(Hライフラボ・明星大学発達支援研究センター研究員)から講演していただきました。ご自身の体験や苦労も含めた内容は、まるで自分が「発達障害を追体験している」ような不思議な感覚があり、会場全体で聞き入り一体感がありました。

映画の時間

—我食らう、ゆえに我あり!空前絶後の給食スペクタクルコメディ—おいしい給食 Road to イカメシ

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.524 - P.524

 1889年に山形県鶴岡町の私立小学校で給食が実施されたのが、わが国の学校給食の起源といわれています。今月ご紹介する『おいしい給食 Road to イカメシ』は、くしくも100年後の1989年の函館の中学校を舞台にしています。
 主人公の甘利田幸男(市原隼人)は忍川中学校の数学教師、20世紀末の絵に描いたような真面目な熱血教師のようですが、何よりも給食を愛しています。今日の給食メニューは「ジャージャー麺」、お昼の時間を楽しみにしています。麺のメニューであるにもかかわらず、誤って届いた白飯も出されて、それらをいかにしておいしく食べるか、甘利田先生の工夫のしどころです。生徒たちも机の配置を変えてグループごとに楽しそうに食べています。

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次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.539 - P.539

奥付 フリーアクセス

ページ範囲:P.540 - P.540

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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