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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生88巻5号

2024年05月発行

文献概要

連載 ヒトとモノからみる公衆衛生史・12

入浴と清潔をめぐる近代史・3—日本の浴場問題と公設浴場

著者: 川端美季1

所属機関: 1立命館大学衣笠総合研究機構生存学研究所

ページ範囲:P.514 - P.517

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はじめに
 入浴と清潔さの歴史について、前回は欧米で展開された公衆浴場運動に注目し紹介した。公衆浴場運動の中で造られた浴場に、日本の行政に関わる専門家や衛生家たちが同時期に見学に訪れている。
 そうした欧米の公衆浴場運動を受けて、入浴をしない/できないとされる人たちへのまなざしも導入されるようになっていった。日本では多くの都市に公衆浴場は存在していた。しかし、前々回で紹介した浴場の水質検査に関して、1923(大正12)年に原田四郎らは「細民地域」は人口の割合に比べ浴場数が不足していると指摘しており、「市設浴場」を造り、住民を安く入浴させることを推奨した。大正期は、日常的に入浴するのが難しい人々に対して、入浴環境を保障するべく、行政による浴場すなわち公設浴場が実際に造られていく時期であった。

参考文献

1)大阪市役所社会部:大阪市社会事業概要 大正11年.大阪市役所社会部,1923
2)京都市社会課(編):京都市社会課叢書第13編:京都の湯屋.京都市社会課,1924
・原田四郎,他:公衆浴水の衛生学的調査.国民衛生 1(11):30-44,1923.
・川端美季:近代日本の公衆浴場運動.法政大学出版局,2016
・井上清,他(編):京都の部落史2(近現代).京都部落史研究所,1991
・井上清,他(編):京都の部落史10(年表・索引).京都部落史研究所,1989
・松下孝昭(著):京都市の都市構造の変動と地域社会:一九一八年の市域拡張と学区制度を中心に.伊藤之雄(編):近代京都の改造:都市経営の起源1850〜1918年.250-290頁,ミネルヴァ書房,2006
・松下孝昭:都市社会事業の成立と地域社会:1920年代前半の京都市の場合.歴史学研究 837: 1-19, 2008
・生江孝之:欧米視察細民と救済.博文館,1912
・杉本弘幸:日本近代都市社会事業行政の成立:京都市社会課を中心として.待兼山論叢史学編 37: 25-50, 2003
・杉本弘幸:府県社会事業行政における都市社会事業の構造と展開:京都府・京都市社会事業行政と財団法人京都共済会の関係をめぐって.世界人権問題研究センター研究紀要 10: 43-65, 2005
・留岡幸助:グラスゴー市の社会事業に就いて.警察協会雑誌 51: 52-58, 1904
・積立金運用課:公設浴場に関する調査.社会福祉調査研究会(編):戦前日本社会事業調査集成8.勁草書房,1993

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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