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雑誌目次

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公衆衛生88巻9号

2024年09月発行

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特集 民間の保健事業サービスの最前線—そのノウハウと役割

Editorial—今月号の特集について フリーアクセス

著者: 藤野善久

ページ範囲:P.867 - P.867

 自治体、職域、健康保険組合が実施するさまざまな保健指導において、民間サービスやAIアプリなど、新しい技術を活用したサービスが普及しつつある。今月号は、こうした民間ヘルスサービス事業者のさまざまなノウハウを紹介する。このようなヘルスサービスは、成果を上げるための独自の仕掛けや品質管理の工夫が施されており、効率性、費用、効果といった点で期待が高まっている。一方で、医薬品や医療機器とは異なり、効果、安全性、費用などに関するエビデンスが公開されていないことも多く、導入を検討する際の障壁となる。
 本特集では、各分野で実績のある7社の具体的な取り組みを紹介する。ソリューションを提供するに当たっての開発背景、効果検証、品質保証に関して詳細な情報を、各社より提供いただいた。これらは、紹介された分野のサービスに限らず、今後、ヘルスサービスの導入を検討する顧客や、ヘルスサービスを開発・提供する事業者にとっても有用な情報となるであろう。そのほか、民間ヘルスサービスが社会保障や国民の健康増進において果たす役割についての展望、ヘルスサービスを導入する企業の立場からヘルスサービスを導入する利点、課題、効果的に活用するためのポイントについても解説している。

さまざまな保健事業サービスへの期待と課題

著者: 藤野善久

ページ範囲:P.868 - P.873

ポイント
◆民間事業者による保健事業サービスが必要とされる背景、顧客ニーズについて紹介する。
◆民間事業者による保健事業サービスは、保健施策の社会実装に不可欠である。
◆ヘルスサービスの効果や安全性に関する情報の標準化や情報公開について、今後、議論が必要である。

SOMPOヘルスサポート株式会社の特定保健指導サービス—民間企業における特定保健指導の運用、品質維持のための工夫、効果

著者: 小楠貴子 ,   南里紗矢佳

ページ範囲:P.874 - P.881

ポイント
◆当社の中核事業である「特定保健指導」に関する、サービス概要を紹介する。
◆当社における強み、用いている知見や理論、効果検証や実績、保健指導の品質管理方法を紹介する。
◆年間の保健指導件数18万人以上から得た実績および、今後の展開について紹介する。

株式会社アドバンテッジリスクマネジメントのストレスチェック—メンタルヘルス対策と組織活性化の両面から支援する「アドバンテッジ タフネス」

著者: 株式会社アドバンテッジリスクマネジメントマーケティング部

ページ範囲:P.882 - P.889

ポイント
◆従業員や組織の状態を把握し、見つかった課題を解決・改善するPDCAサイクルを回すことが真の目的。
◆ストレス改善のためには仕事上の要因に加えて「個人要因」に着目することが重要。
◆各種サーベイを集約することで、分散しがちな課題を捉え、組織状態の解像度を上げることが可能。

メンタルコンパス株式会社のメンタルヘルスサービス—学術エビデンスに基づくチームビルディング「ソダーツ」

著者: 伊井俊貴

ページ範囲:P.890 - P.898

ポイント
◆「ソダーツ」とは世界初、ノーベル経済学賞受賞のエビデンスとAIでチームの「協力関係」が育つサービスである。
◆保健事業サービスにおける行動変容の効果を判断するには英語論文・データ収集・行動サポートの有無のチェックが必要である。
◆学術的エビデンスに基づく保健事業サービスの発展には、適切にサービスを選ぶ評価方法の普及が重要である。

RIZAP株式会社の「成果保証型」特定保健指導サービス—特定保健指導対象者減少にコミット

著者: 杉原悠治

ページ範囲:P.899 - P.907

ポイント
◆第4期特定健診・特定保健指導に向けた、先行的なRIZAPの取り組みについて述べる。
◆結果にコミットするRIZAP保健指導プログラムについて紹介する。
◆ライフログデータとAIを活用した次代の保健指導の在り方について展望する。

株式会社Wellmira(ウェルミラ)の食事栄養指導—「カロママプラス」による栄養管理におけるデジタル技術の活用

著者: 佐々木由樹

ページ範囲:P.908 - P.916

ポイント
◆「カロママ プラス」は、AIによるリアルタイムアドバイスを実現したアプリである。
◆「カロママ プラス」の減量効果や食事画像認識の妥当性研究のエビデンスを示す。
◆「カロママ プラス」の特定保健指導や医療機関での活用事例を紹介する。

株式会社バックテックの腰痛・疼痛対策—エビデンスに基づくWebアプリ

著者: 福谷直人

ページ範囲:P.917 - P.923

ポイント
◆プレゼンティーズムの主要因は、肩こり・腰痛のようなフィジカル不調であり、高ストレス状態と強く関連している。
◆ポケットセラピスト®は、肩こり・腰痛対策を通した労働生産性向上やメンタルヘルス不調対策として利用されている。
◆エビデンスに基づくサービス開発、品質管理、費用対効果の可視化が特徴である。

株式会社ニューロスペースの睡眠対策—従業員のメンタルヘルス対策と生産性向上を実現し、健康経営を支援する睡眠改善プログラム

著者: 小林孝徳

ページ範囲:P.924 - P.935

ポイント
◆現在の医療の構造的な問題と、それにより起きている睡眠の社会課題がある。
◆睡眠領域の予防・ヘルスケア産業の重要性について述べる。
◆睡眠は健康を実現する最も重要な要素であり、当社が手掛ける3つの睡眠改善プログラムを紹介する。

民間活力による新たな健康価値創造への期待—経済産業省から

著者: 山崎牧子 ,   野原健矢 ,   荒川恵美

ページ範囲:P.936 - P.944

ポイント
◆経済産業省では、ヘルスケア政策の目指すべき方向として「国民の健康増進」「持続的な社会保障制度構築への貢献」「経済成長」を掲げている。
◆民間保健指導サービスの役割は、人々が自然に健康になれる社会を構築するために重要であり、経済産業省としても成長環境の支援を行っていく。
◆具体的には、健康経営によるマーケットの拡大、成果連動型民間委託契約方式による質の高いサービスが評価される仕組みづくり、PHRの推進による新たな付加価値の構築、業界自主ガイドライン策定支援による信頼性の担保等がある。

さまざまな保健事業サービスの導入と活用に際してのポイント

著者: 梶木繁之

ページ範囲:P.945 - P.953

ポイント
◆保健事業サービスは、福利厚生サービスから戦略的な社員のウェルビーイング向上へと変化している。
◆具体的なサービスの選定においては、企業や個人のニーズならびに組織が抱える課題などを参考にする。
◆サービスの実施時には、エビデンスに基づき、綿密な目標設定や試行、計画的な有効性の評価・検証と改善が求められる。

連載 All about 日本のワクチン・21

日本脳炎ワクチン

著者: 前木孝洋

ページ範囲:P.954 - P.958

1.当該疾患の発生動向
 日本脳炎は日本脳炎ウイルスの感染が原因で生じる、蚊媒介の中枢神経感染症である。1948年以降、1964年までは、年間、1,000人以上の日本脳炎患者の発生が報告されていた。しかし、1954年から日本脳炎ワクチンが導入されたこと、および、生活環境の変化に伴い媒介蚊に吸血される機会が減少したことなどの要因によって、日本脳炎患者報告数は減少し、近年はおおむね、年間10人以下で推移している(図1)。

ヒトとモノからみる公衆衛生史・16

健康増進と「人生の最終段階」・1—「健康寿命」と不健康状態の圧縮

著者: 柏﨑郁子

ページ範囲:P.959 - P.962

はじめに
 健康増進(health promotion)とは何か。その内容は時代により変遷しつつ、個人の生活習慣の改善、環境の整備などを通した人々の生き生きとした生のためのポジティブなものとして一般的には捉えられているだろう。近年では、「健康増進緩和ケア(health promoting palliative care)」のように公衆衛生に終末期ケアを融合させる考え方も提唱されているが1)、少なくとも現在の日本の健康増進施策から終末期を連想する人は少ないだろう。終末期は、遠くない将来に死が訪れるであろうことが前提となった言葉なので、健康増進とのつながりは通常みえにくい。しかし、日本の健康増進政策を大局的にみると、終末期へのまなざしが健康増進を後押ししてきた歴史がみえてくる。今号から3回にわたって、読者と共にそのつながりを再発見していきたい。
 2002年に制定された健康増進法には、その前史として、「健康日本21」という運動がある。その運動においては、「健康寿命」という概念が掲げられた。今号ではまず、その成り立ちからみていこう。

Go to the people——バングラデシュと共に歩んだ私の国際保健50年

第十五編

著者: 石川信克

ページ範囲:P.963 - P.967

結核病院入院で見た結核医療のレベル
 月の半分は、地方のクリニックを中心に、コミュニティー・ヘルス(primary health care: PHC)の支援をしていたが、残りの半分はダッカにいて、シャモリの中央結核センター、その隣の小児病院、モハカリの結核病院などを定期的に訪ね、そこの医師たちと一緒にセミナー、症例検討、講義、調査研究などで忙しく回っていた。当初は車もなかったので、人力車(リキシャ)による移動であった。シャモリでは、Motivation Roomに行って外来患者さんに会って話をしたり、そこで働くスタッフを励ましたりしていた。
 ダッカ市のモハカリという地域には、保健医療関係の施設が集まっているが、その一つが500床の病床を持つ胸部疾患研究所(Institute of Chest Disease and Hospital: ICDH)である。一般にはモハカリの結核病院と呼ばれていた。この国で最大の胸部専門病院だが、ほとんど系統的な入院患者のまとめがなされていなかったので、ここのアーサン・アリ医師(Dr. Ahsan Ali)と二つの分析をやってみた。彼は結核研究所の研修に来た経験があり、ダッカ大学の教授職も兼ねており、私利私欲が少なく温厚な人柄、研究熱心であった。1979〜1980年の2年間の入院患者総数は4,242人で、結核が8割を占めていた。女性病床が限られていたので女性が少なかった。最初の分析は死亡要因に関するものであった。この期間中で435人が死亡しており、そのうち164人を無作為に選んで、臨床経過を詳しく調べ、直接死因の推定を行った。半数は全身状態が重症であったためで、8割が2カ月以内に亡くなっていた。つまり、病院に入院したときにはすでに重症化していたのであった。4分の1は結核が重症でなく、喀血や気胸によるもので、これらは適切に対応していれば死亡を避けられた可能性が高いと思われた。

予防と臨床のはざまで

第10回アジアヘルスリテラシー学会インプレッション

著者: 福田洋

ページ範囲:P.968 - P.968

 5月12日から5月15日まで、第10回アジアヘルスリテラシー学会(Asian Health Literacy Association: AHLA)がベトナムのホーチミン市で開催されました(https://ahla2024.pnt.edu.vn/)。台湾のPeter Chang教授が設立したこの学会は非常にアクティブで、国際学会にしては珍しく毎年開催されており、私自身は台北で開催された2014年の第2回大会から参加しています。ホーチミン市は東南アジアNo. 1のバイク王国だけあって、道路はバイクが洪水のように行き来しており、バックパッカーの聖地ともいわれるブイビエン通りは、国民の平均年齢30歳を感じさせる熱気であふれかえっていました。
 学会のテーマは“Health Literacy in the Revolution of The Digital Age”。ChatGPT®などに代表されるAIを含むデジタル時代にヘルスリテラシーはどうなるのか、どのような能力が必要でどう獲得したらよいのか。最新トピックであるデジタルヘルスリテラシーを真正面から取り上げたテーマといえます。学会は、前日(DAY0)のプレカンファレンスワークショップに始まり、初日(DAY1)のオープニングセレモニーとガラディナー、2日目・3日目(DAY2-3)の基調講演や一般演題へと続きました。

映画の時間

—1947年、ボストンマラソン。走れ!あの日、とまった時間を動かすために。衝撃と感動の実話。—ボストン1947

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.969 - P.969

 1945年8月15日、第2次世界大戦は日本の降伏で終わりました。8月15日は、日本では「終戦の日」となっています。この日、朝鮮半島は日本の統治から解放されます。韓国では8月15日は「解放記念日」となっています。日本の統治から離れたといっても、すぐに韓国政府が誕生したわけではなく、朝鮮半島は、連合国の軍政管理下に置かれます。今月ご紹介する映画は、軍政下にあった1946年のソウルから始まります。終戦後の日本も混乱の中にありましたが、解放後の韓国も状況は似たようなもので、米国軍政下で混乱した状況にありました。
 ソ・ユンボク(イム・シワン)は賞金をかせぐためにマラソン大会に出ていましたが、「ソン・ギジョン世界制覇10周年記念マラソン」で優勝したことから、元マラソンランナーのナム・スンニョン(ペ・ソンウ)に本格的なマラソン選手になるように勧誘されます。ナムは1936年のベルリンオリンピックで、銅メダルを獲得しており、そのときの金メダリストがソン・ギジョン(ハ・ジョンウ)です。当時は日本統治下で2人は日本代表として参加し、日本名の孫基禎と南昇竜として表彰台に立ちました。

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ページ範囲:P.865 - P.865

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.973 - P.973

奥付 フリーアクセス

ページ範囲:P.974 - P.974

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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