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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生9巻1号

1951年01月発行

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特集 第4回日本公衆衞生學會 第1日

學會長挨拶

著者: 小島三郞

ページ範囲:P.3 - P.4

 日本公衆衞生學會の開會にあたり,一言御挨拶申上げます。我が公衆衞生協會が發足して以來,4年に近い歳月を經過し,その間,協會の事業の最も大きな有意義なものの1つとして,そして唯今迄のところ,唯1つとして,學會を開催して今に至りました。他の分科と聊か異なる點は,公衆衞生學は,純正基礎醫學でもなく,臨床醫學でもなく其の應用醫學たる點に於て臨床醫學に近く,其の研究調査の方法技術に於て基礎學に近く,報告者は各大學及び研究所の勤務者の他に,中央官省の技術官,各都道府縣の衞生部,地方衞生研究所の技術者,又保健所關係の第一線衞生擔當官等に至り,誠に廣汎にして,又特色ある業績内容を以て,訴え説くものがあり,此點だけでも,我が學會が存在すべき理由と,そして益々隆盛になるべき運命とを持て居ります。今回は演題申込みが多數に上り,世話人たる私共は,愉快なる悲鳴を擧げざるを得なくなりました。10月10日の締切後,尚申込まれた方々には,謝絶せざるを得なくなつたような譯でありますが時間のゆるす限り,追加として御願いいたし,折角の御努力に報いたいとも考えています。

協會長挨拶

著者: 田宮猛雄

ページ範囲:P.4 - P.6

 只今小島會長の御挨拶に續き,私僣越でございますけれども一言御挨拶申上げます。日本公衆衞生協會が發足いたしまして,まだ年月は淺いのでありますが,その本來の使命といたしますところは事業の方面と學會の方面に大別できます。事業方面といたしましては公衆衞生のいろいろな調査,研究,その他雜誌の刊行,或はいろいろな團體,或は機關の相五の連絡というようなこと,いろいろ廣汎な公衆衞生事業の學問的,實際的方面につきましては多く使命をもつている筈でございましたが,私共の微力のためにその目的を行つてゆくことができませんでした。しかし僅かに厚生省の方々の非常なる御努力によりまして年々學會を開催することができ,ようやく學會をもつて餘命を繁いでおつたようなわけでございます。しかしながら本協會が本來の使命に目覺めまして,いろいろ理事者の間で御相談をいただきまして,ようやくその案が出來上つたようなわけであります。われわれの絶えざる學問的,及び實際的活動を世に示す道を講ずる案ができたのであります。われわれは會員各位の御熱意によりまして,われわれが當初から持つております理想に一歩でも近づけたいとこういう念願であります。幸にも最近におきまして各大學には公衆衞生の講座,或は教授の方々もおできになり,しかもその間に歩調を一にして,少なくとも最少限度の授業内容はかくかくであるというような御相談もその懇談會において原案ができたのでございます。

次回學會長挨拶

著者: 古屋芳雄

ページ範囲:P.6 - P.6

 御推薦を受けまして次の公衆衞生學會々長をお引うけいたしました。次回は日本醫學會の分科會としてひらかれるのであります。甚だ微力でありますけれども皆樣の御支援を得て,無事につとめ上げたいと思います。なお次の回にもこの出來上つた會の性格をつづけたいと思います。今日のように盛んに行政面の人々と學界の人々とが膝を交えて公衆衞生に關する時局の重大問題の檢討を行い,三つの會場にあふれるのを見ては,いかなる人でも時代がここに至つたという感を抱かれるであろうと思います。たとえば衞生學教室の人々でありましても,行政面の進歩に無關心では地についた研究はできない。また行政面の人も專門學術者の協力なしには眞の行政はできない。この兩方の要求から自ずからここに立至つたのであります。また恰かもこの機を捉えまして公衆衞生協會なるものが財團法人として設立されようという氣運に立至つたことはことに意味深いことであります。
 さてこの機運をいかにして次回にも反映させるかということは,これは非常に難かしい問題であると思うのです。

第4回日本公衆衞生學會印象記

著者: 田井吉之介 ,   平山雄 ,   橋本道夫

ページ範囲:P.88 - P.93

 例年にくらべてやゝ冷たく感じる10月25,26の兩日,國立公衆衞生院と東京大學傳染病研究所が竝立する芝白金台に,第4回日本公衆衞生學會がひらかれた。錐1日はまず,第1會場の公衞衆生院大講堂で,滿員の聽衆をまえに,9時から,會長・日本醫大小島教授,協會長・田宮名譽教授の挨拶についで,來賓のP. H. & W. ボーズマン氏は,おもに日本における公衆衞生の進歩を豫防接種法の施行と結びつけて語され,挨拶にかえられた。

特別講演

衞生教育の科學的基礎

著者: 楠本正康

ページ範囲:P.78 - P.87

 公衆衞生の仕事が國民の理解と協力がなくては殆ど効果を擧げることができないことは申すまでもないのでありまして,1873年の昔公衆衞生の父といわれておりますエリス博士は,「これからのアメリカの公衆衞生が十分な成果を收めうるか否かは一に國民の衞生に關する理解如何にかかつている」といつているのであります。また有名なヘルマンビツク氏は公衆衞生の發達は一にも二にも三にも四にも衞生教育であるということをいつています。このような點は皆樣よく御承知のことでありますが,勿論これらの例をひくまでもなく,我が國におきまして衞生教育の必要なことは,衞生思想の普及の名におきましてすでに明治大正の頃から強調されてまいつております。しかも民主的方式で行いまする衞生行政の展開に當りまして一層この衞生教育の重要性が加わつてまいつたのであります。しかしながら,今ふり返つて衞生教育の仕事のあとをみまするとこの2,30年の間,その見方につきましても,或はその考え方につきましても何等の進歩も認めえないのであります。從いまして十分な實績を收めていないといつても過言でないのであります。ところがこの間にありまして他の衞生部門は各同僚,先輩の御盡力によりまして目覺ましい進歩發展を遂げているのであります。この間にあつて衞生教育だけがいわばマンネリズムに陷つて,ただ獨り取殘された形となつているのであります。

椋鳥住血吸虫病につて

著者: 田部浩

ページ範囲:P.87 - P.87

原稿未着のため次號に掲載

赤痢討論會

全國的に觀た赤痢

著者: 館林宣夫

ページ範囲:P.7 - P.8

 全國的にみました赤痢の發生状況をごく概略的に申上げます。最近25年間の統計に現われました赤痢の動向をみますと,昭和12年頃から我が國の赤痢患者の數が急激に増加いたしてまいりまして,昭和14年には近年における最高9,7250名,死者が2,2390名という近年最高の山をここでつくつております。しかしながら戰爭の進展と共に漸次減少してまいりまして,終戰前年の昭和19年には5,5795名という非常な減少を示したのでございます。更に終戰と共に急激に増加を加えまして,昭和20年には殆んど8萬臺に上りまして,96462名,死者20,107名という,ここで再び峯をつくつております。翌年の昭和21年にはやや減少いたしまして88,214名の患者と,13,409名の死者が發生いたしました。ところがこの流行が急激に減少に轉じまして,昭和23年には最近の最低數ともいつてまい患者14,665名,死者僅かに4,066名という,非常に少ない數を示したのでございます。然し昨年來再び増加の傾向を示し昨年は患者23961名,死者7824名となり,本年に入りまして更に増加いたしまして,只今のところ前年度の同期間の發生に較べまして約2倍という數を示しております。死亡者の數で申しますと,患者の數とほぼ平行しているという感じを受けるのでございます。これを致命率の面でみまして相當著しい變化があるのでございます。

東京都の赤痢

著者: 與謝野光

ページ範囲:P.9 - P.12

 それでは小島先生の御指名によりまして,私,東京都におきまする赤痢の發生状況につきまして御話を少し申上げてみたいと存じます。小島先生が私をお呼びになりました理由は,おそらく先程館林課長のお話の中にもございましたように,昨年今年にわたりまして特に關東地方の都縣に相當の流行が起つた關係で,おそらく關東諸縣の代表という意味で地方の實情を述べよという御意志と解しまして,東京都における今年,昨年の赤痢に關する發生状況,或はこれに關しまする資料にっきましてお話を申上げて討論の資料にいたしたいと存じます。なお今日は臨床方面につきましては,のちに内山,長岐兩先生からお話があると思いますので,主として防疫の立場のお話を進めてまいりたいと存じます。
 今年は東京都におきまして非常に赤痢の發生が多くございまして,先週の終りまでに8,882名の患者を出しております。最近數年間にみない多發の状況であります。この發生を日を追つてみてまいりますと,本年の頭初から昨年に比べて大體いくらかづつ多かつたのでございますが,特に6月に入りましてから非常に多く出てまいりまして,8月の中頃が一番多くその後漸次減少しつつあります。

赤痢の化學療法

著者: 内山圭梧

ページ範囲:P.13 - P.16

 細菌性赤痢に對してサルフア劑の卓效あることは既に10年程前から知られ居りその治療成績の發表も少くないのであるが,これが本格的に赤痢の治療劑として全面的に取り上げられたのは漸くこの4〜5年以來のことである。而してその使用の當初に於ては實に優秀なる成績を示し,本劑を徹底的に使用すれば赤痢の治療が容易であるのみならず,本病の撲滅さえも期待し得る程の希望を懷かしめた程であつた。然るにその後一兩年の後にはサルフア劑無效例の報告が次第に現れ,尚之に關連して患者から新に分離された赤痢菌,特に近時の流行菌種である駒込B型菌がサルフア劑に對して非常に抵抗性を増して來て居ることが注目されて來た。駒込病院に於ける患者についてこれ等の點について觀察するに表1に示すように昭和23年度にはスルフアチアゾール(以下STと略記)の有效例が81.3%を示したが翌24年度には約半數近くの45.5%に效果を認め得ざるに至り,今年度に於ては奏效率が更に低下して無效例が52.9%の多きに達して居る。

赤痢の化學療法

著者: 長岐佐武郞

ページ範囲:P.17 - P.21

1)諸論
 私共は昭和16年に赤痢の化學療法に手を染めたのでありますが,以來今日までに,これに關聯して,いろいろな問題を迎え且つ送つてまいりました。まず第一に,その當時はスルフア劑のみで足りておりまして,しかもその效力は,私共が始めました頃には非常なものでありました。ところが第一に1941年にMarshallは「一體赤痢は腸管内の感染であるが故に,これに對する藥劑はスルフアピリヂンのような水に難溶性のものよりも,水に易溶性でしかも腸管内に高い濃度をたもち,あまり體内に吸收されないものがいい」というテーマを出し,そしてスルフアグアニヂンを世におくつてその效果,實に劇的であると發表したのであります。しかしながらこれに關しましては福見氏等はこのMarshallの理論を支持するBornsteinの動物實驗を否定いたしました。なお私共は臨床的にこのスルフアグアニヂンがスルフアピリジンやスルフアチアゾールに比して效力の劣ることを立證して,Marshall教理の誤謬と獨斷を指摘いたしました。第三の問題としてこのサルフア劑の赤痢に對する治效作用の本態はどこにあるかという點であります。私どもは,サルフア劑を經口的に投與した場合でも,それが大腸に於ける病巣部への直接作用というよりも,藥物が一旦血中に吸收され,それがある程度以上の有效濃度をもつということがその本體であるというふうに解釋いたします。

質問討論

ページ範囲:P.22 - P.27

小島會長
 これから討論に入ります。
 さきほど館林課長がいわれたが,關東地方では發生が多くて,近畿地方には比較的少ないということについて,本日大阪の土田部長,京都の土屋部長がきておられますので,何故少ないか,御感想なり何なりと御發言願えませんか。

研究發表

第1會場

ページ範囲:P.28 - P.46

第1日午前(10.00〜12.00)
101)昭和25年初頭東京に發生したインフルエンザ樣疾患の基礎的な疫學考察

第2會場

ページ範囲:P.47 - P.61

第1日午前(10.OO−12.00)
 201)某農村に於ける保健所設營の經驗に就て

第3會場

ページ範囲:P.62 - P.77

第1日午前(10.00-12.00)
  301) 滋賀縣—山村の衞生調査

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ページ範囲:P. - P.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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