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御代田村事件をあやまる
著者: 大渡順二
所属機関:
ページ範囲:P.124 - P.124
文献購入ページに移動戰爭にまけて,私たちは今さらながら,人の命の大事なことを覺えた。占領軍のために一匹のハエ,一匹のノミを恐れる神經を教えられ,そこから公衆衞生の考え方が實速的に私たちの肌にしみこんで來た。だが,こんどの御代田村事件などみると,それはまだまだ一部指導者または先覺の階層のあいだのことであつて,公衆衞生は未だ遠しの感じがする。現に御代田村附近の實態をきくと,同村附近は公衆衞生どころか,まだまだ文化以前の姿があるようだ。私の處の同僚の歸來談によると,御代田村といえば宿泊を斷られたり,婚約も解消となつたりしているそうである。一匹のハエを恐れる公衆衞生の氣持などクスリにしたくも見られないようである。
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